教育やビジネスがグローバル化している昨今、世界を股にかけて働く人も増えてきました。日本人が海外で仕事をしたり、日本にいながらオンラインで海外から仕事を請け負ったり、逆に海外で暮らしながら日本での仕事をする人もいます。
今回は、海外で働ける仕事にどんなものがあるのか、職種別の紹介や、働きやすい国、今のうちに身に付けておきたいスキルなど、幅広く解説します。
海外で働ける職種25選
まずは、海外で働ける職種を紹介します。自分の興味がある仕事を見つけてみましょう。
ツアーガイド
ツアーガイドは、ツアー客に対してその国や地域ごとの文化や歴史を解説するとともに、その場所ならではの魅力や見どころを伝えていく仕事です。旅行客に寄り添い、快適で楽しい旅が送れるようサポートしていきます。
海外を訪れた日本人観光客に対し日本語で説明をする機会もあれば、英語や観光客の出身地に合わせた外国語を使って説明する機会もあり、働き方はさまざまです。
留学コーディネーター
留学コーディネーターは、留学を希望する学生一人ひとりに合った留学先を選定し、出願や入学の手続き、ビザや航空券の手配、学校や滞在先との調整など、留学に関するトータルサポートを行う仕事です。
何をしたくて留学するのか、どんなスキルを身に付けたいのかという目的意識までヒアリングして寄り添うため、人の将来に関われるやりがいの大きな仕事です。また自分自身の留学経験や勉強方法を活かして働くことも可能です。
客室乗務員
客室乗務員(CA、キャビンアテンダント)は、旅客機の搭乗客の案内や機内食配膳などを行い、快適で安全な空の旅を支える仕事です。
高い語学力ときめ細やかな気遣いを備えたサービスマンとしての役割を求められるほか、酸素マスクや救命胴衣装着などのレクチャーを行ったり、トラブル発生時の保安要員としての役割も求められます。世界各国を飛び回る華やかな仕事である一方、体力重視の仕事でもあります。
ホテルマン
ホテルマンは、ホテルを訪れる多数の宿泊客を迎え入れ、快適な時間を過ごしてもらえるようサポートする仕事です。
予約、フロント、コンシェルジュ、ハウスキーピングなど宿泊に関する仕事もあれば、ブライダルコーディネーター、パーティー企画など宴会に関する仕事、レストランやパティスリーに関する仕事など、仕事の幅は多岐に渡ります。
ホテルは利用用途も多くかつ多国籍なお客が訪問するため、高いコミュニケーション能力や気遣いなどのマナーが求められます。
クルーズ船乗組員
クルーズ船乗組員は、豪華客船やクルーズ船に乗り込み、船旅をサポートする仕事です。
「動く海上ホテル」として知られている通り、ホテル同様多岐に渡る仕事があるうえ、常に安全を意識した動きを取ることが求められます。一方、ホテルと異なり長期間同じお客様を相手にするという性質上、求められるホスピタリティのレベルも高くなる傾向にあります。
通訳
通訳は、異なる言語を話す人同士の間に立ち、言葉を訳しながらスムーズなコミュニケーションをサポートする仕事です。
国ごとに異なる文章構成を読み取りながら話し手の意図を曲げないよう瞬時に訳す高い語学力が求められることに加え、国ごとの生活習慣や文化を理解し、シーンに合わせた専門用語を適切に使う力も必要です。
日本語教師
日本語教師は、海外で日本語を学びたい人に対し言葉や文章を教えていく仕事です。日本における英会話教室の講師のような仕事だと考えるとイメージしやすいでしょう。
日本語の正しい理解や文法を押さえておくだけではなく、日本の社会や文化に精通し、生徒に伝える必要があります。また生徒と良好な関係を結び、「日本語って面白い」と思ってもらえるような働きかけも大切です。
ベビーシッター
ベビーシッターは、保護者に代わって保育を行う仕事です。
育児中に言葉や音楽を教えたり、身体や心の発達段階に応じて専門的な観点から遊びのプログラムを組み立てたりするスキルが求められます。また、子どもが事故や事件に遭わず安全に過ごせるよう意識を巡らせ、万が一の体調不良時や怪我に適切に対応するスキルも身に付きます。
海外営業
海外営業は、一般企業の社員として働きながら、自社の商品やサービスを海外企業に売り込む仕事です。
高い営業力や語学力が必要であることに加え、相手が求めていることを理解し聞き上手になるスキルも求められます。日本で営業成績がいい人が必ずしも海外で好成績を残せるとは限らず、国ごとの特性や習慣を理解しながら進めていく必要があります。
ITエンジニア
ITエンジニアは、ITを駆使しサービスやシステムを構築する仕事です。
ソフトウェアの開発や制作を行うシステムエンジニア、システムやアプリケーションを構築するプログラマー、サーバーコンピューターの設計や保守運用を行うサーバーエンジニア、コンピューターネットワークの運用を行うネットワークエンジニアなど、多様な専門職があります。エンジニア職は「ジョブ型」の採用、つまりスキルや技術力を優先して採用する傾向が強く、多国籍企業における活躍の幅が広がっています。
翻訳
翻訳は、文学作品、ニュースや雑誌、ビジネス文書や企画書など、さまざまな文書を別の言語に書き換える仕事です。
日本語から外国語へ、外国語から日本語へ、外国語から外国語へ、とパターンは様々です。通常、自分の母国語と得意な外国語に絞って仕事を請け負います。翻訳によって文章の意味合いが変わらないよう注意しながら、文章が作成された背景や意図にまで思考を巡らせ、正確で分かりやすい表現を心掛けます。
ライター
ライターは、Webメディアや雑誌などに掲載する記事を作成する仕事です。
小説やエッセイを書く作家、雑誌や新聞に記事を書くライター、オンラインで読めるネット記事やコラムを書くライターまで、活動領域は広いです。出版社に就職して専属ライターとして活躍する方法もあれば、フリーランスとして独立して自分の原稿を売り込んでいく方法もあります。
また、観光情報誌や国際誌に向けて日本の情報を執筆したり、海外の習慣と日本の習慣を比較するような記事を作成する機会もあります。
デザイナー
デザイナーは、クライアントの意向に沿ってデザインを考案・制作する仕事です。
靴・ドレス・車など有形商材をデザインする商品デザイナー、WebサイトやアプリをデザインするWebデザイナーやアプリデザイナー、オフィス空間・ホテルロビー・自宅の雰囲気をデザインする空間デザイナーなど多様です。
カメラマン
カメラマンは、クライアントの意向に沿ってメディアや広告などに掲載する写真を撮る仕事です。
報道写真・広告写真・人物写真などそれぞれの得意分野に合わせて活動範囲を絞り込んでいることが多く、写真を活用する場所もパンフレット・Webサイト・雑誌や新聞など多岐に渡ります。
スマートフォン1台で綺麗な写真が撮れる今の時代だからこそ、そのカメラマンにしか発揮できない感性や専門的なスキルが求められる傾向にあります。
料理人
料理人は、レストランやホテルで料理を作る仕事です。
フランス料理、イタリア料理、スペイン料理、韓国料理など選択肢は多く、ケーキや焼き菓子などを舞台として働く人もいます。調理に関する専門知識やスキルが必要なのはもちろん、新しいメニューを開発する発想力が求められることも。日本人として、和食・寿司・和菓子の専門料理人になる道もあります。
飲食店スタッフ
飲食店スタッフは、店内で接客を行い食事や飲み物を提供する仕事です。
レストランで席への案内や配膳・注文取りを行うホールスタッフもいれば、ワインのセレクトや品質管理を担当するワインソムリエ、カウンターを挟んでカクテルやお酒を提供するバーテンダーなどさまざまです。
お客様の視線や立ち振る舞いに気を配る注意力や、外の気温や店の状態にまで気を配っておもてなしをする高いホスピタリティが求められます。海外で料亭や旅館を営んでいるオーナーのもとで仲居として働く方法もあります。
マーケター
マーケターは、クライアントの意向に沿って市場動向を分析したり、サービスや商品の販売戦略を策定したりする仕事です。
デジタル社会や国際化に対応して刻一刻と変化しつづけるマーケットの動きにアンテナを張り、適切な判断を下す力が求められます。
保育士
保育所に勤務し、共働きの家庭や保育に欠ける家庭のサポートを行う仕事です。
子どもに関する専門的な知識を保有し、食事・睡眠・遊びの手助けを行うとともに、必要があれば保護者へのアドバイスや公的機関との連携を行います。
グローバリゼーションを意識した保育園も多く、日本の遊びや日本食を取り入れながら多様化を意識した保育を行うケースも増えています。
看護師
看護師は、医師が行う診療や治療をサポートしながら患者のケアに当たる仕事です。
総合病院、クリニック、役所、領事館などで働けるほか、青年海外協力隊や国境なき医師団など医療ボランティアとして働くこともできます。
日本における看護師免許がそのまま使える場合もあれば、各国ごとに設けている資格試験に通過しなければならない場合もあります。
不動産業
不動産業は、顧客のニーズに合った物件を提案したり、不動産価値を見極めながら企画開発を行ったりする仕事です。
特に日本人が多い地域においては日本人カウンターでの営業担当が求められる傾向が強く、移住者や留学生、中長期出張者に向けて住まいの確保をする手伝いを行います。
事務職
事務職は、企業や団体における事務作業を担い、円滑な事業運営を裏側からサポートする仕事です。
正確で素早い処理が求められるほか、経理・法務・総務など専門知識が求められる場合はそれぞれに合ったスキルも必要です。
海外に支店を持つ日本企業に就職して事務を請け負ったり、語学力を活かしながら海外法人との橋渡しを行ったりできます。
国際公務員
国際公務員は、国連をはじめとする国際機関で働く仕事です。
国連直下である安全保障理事会や国際司法裁判所、専門機関である世界保健機関(WHO)や国際労働機関(ILO)、下部機関である国連開発計画(UNDP)や国連児童基金(UNICEF)などで働く職員のことを指し、国際社会を統制するエキスパートとして知られています。
高い語学力のみならず、経済学、政治学、社会学、場合によっては医療、途上国支援などさまざまな知識が求められます。
外交官
外交官は、国家を代表してさまざまな国と交渉をする仕事です。
条例締結時の交渉、互いの国の情報収集、協議会の運営や準備に当たることが多く、ほとんどの場合外務省職員として大使館や領事館で仕事を行います。
日本の顔であるという自覚を持ち、スムーズで良好な国家コミュニケーションを取ることに貢献します。
日系グローバル企業社員
日系グローバル企業社員は、日本の会社でありながらも、海外に支店や工場・倉庫を持ちながら事業展開している企業に就職して仕事を行います。
支店内の事務や管理を行う人もいれば、新しく工場や倉庫を作るために現地で交渉や準備を重ねたりする人もおり、多様な働き方ができます。
あくまでも所属は日本の企業ではありますが、海外で交渉するための語学力やコミュニケーションスキルが欠かせません。
外資系企業社員
外資系企業社員は、外国資本の企業に就職して仕事を行います。
社内の公用語が英語であることが多く、日本人が少ない環境で働くことが想定されます。合理主義や成果主義を採用している企業が多く、労働法や人事評価制度も国ごとに大きく異なりますので、特性や文化を理解したうえで就職することが大切です。
働きやすい国TOP5
日本人が働きやすい国を、ランキング形式で5つ解説します。国ごとにどんな特徴があるのか、確認していきましょう。
【1位】シンガポール
シンガポールは、世界有数の金融センターとして有名です。治安もよく政治も安定していることから仕事をするためだけではなく移住先としても人気が高く、物価も安いため高い生活レベルを維持しやすいという特徴があります。
法人税が安いため、日本に限らず各国から参入する企業が多いのも特徴的です。
【2位】香港
香港は、中国と欧米が混ざった文化や性質が特徴で、親日家が多い国としても知られています。
東京都の半分程度の面積ではありますが、金融、不動産、観光、貿易が盛んで、恒常的に多くの国とコミュニケーションを取る風土があります。
【3位】カナダ
カナダは、もともと多様な人種が共存する多民族国家として知られています。女性の社会進出が盛んであることに加え、移住に向けて国が用意した支援や補助が多いのも特徴です。
オフィス街から少し足を伸ばせば大自然がすぐそこにあるというアクセス性もあり、ワークライフバランスを意識したい人に人気です。
【4位】中国
豊富な資源をもとに製造業で活躍してきた中国は、近年ITや金融の舞台でも世界を牽引するようになりました。日本と距離が近いため帰国もしやすく、気候差や時差もほとんどないため生活に馴染むのが早いというのも特徴的です。
【5位】タイ
タイの都市部はインフラや交通網が整備されており、治安のよさと物価の安さのバランスが整っていることから、日系企業の進出が盛んです。日系企業の海外支店で働きたいという人にとってはうってつけの国だといえるでしょう。
温厚で接しやすい人柄の人が多く、日本からの留学生や移住者も多くなっています。
今のうちにできる準備
海外での仕事を視野に入れている場合、早い段階からの準備が欠かせません。今のうちにできる準備や、身に付けておきたいことについて解説します。
語学力を磨く
第一に、語学力を磨きます。文書を読むこと、書くことはもちろん、聞くこと、話すことも意識しながら、現場で使える言語を習得します。
ときには机の上での学習にこだわらず、教室やオンラインサービスを利用して実際のコミュニケーションを通して力をつけることも大切です。
留学制度が整った国内大学に進学する
留学をして語学力の強化を図ることもおすすめです。そのためには、留学制度が整った大学に進学するのがよいでしょう。
大学によって留学プログラムを多く用意していたり、行き先となる国や学校の選択肢が広かったりします。また、留学に際して奨学金を利用できる場合もありますので、大学のパンフレットやHP、オープンキャンパスを活用して情報収集していきます。
海外の大学に進学する
海外の大学に進学し、現地で暮らし始めるのも一つの手段です。学校ごとに求めている語学試験のスコアや出願要件が異なりますので、先生や保護者に相談しながら進めましょう。
手に職をつけるため専門学校に進学する
調理師、客室乗務員、ホテルマンなど、専門知識やサービス力を必要とする仕事に就くことを検討しているのであれば、専門学校に進学するのもよいでしょう。日本の専門学校で知識を得ながら、同時に語学の研鑽をしていけば就職の幅も広がります。
資金を貯めておく
留学や海外移住には、資金が必要です。国やタイミングによって金額は異なりますが、早い段階うちから資金を貯めておくのがよいでしょう。
奨学金や補助金を活用できるケースもありますが、それだけで全額を賄えることは非常に稀です。チャンスがあるのにお金の問題で実行できなかったということのないよう、早めの取り組みがカギとなります。
実際に働いている人の声を聞く
実際に海外で働いている人の声を聞き、イメージを膨らませておくのも効果的です。自分の知らなかった仕事を知り、仕事におけるやりがいや苦労を学び、その仕事に必要なスキルを直接学び取れます。学校や地域で行っている講演会があれば、積極的に参加してみましょう。
まとめ
グローバリゼーションやITの発展に伴い、国や地域を制限することのない働き方が広がってきています。仕事のスキルや技術を重視し、さまざまな場所で働く人も増えてくるでしょう。海外で働ける仕事に想いを馳せ、今のうちからできることを少しずつ進めていけば、チャンスが広がっていきそうですね。