アクティブ・ラーニングとは?メリットや手法、授業・入試での事例を解説

Edv Magazine 編集部

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アクティブ・ラーニングとは?メリットや手法、授業・入試での事例を解説

次世代の学習方法として、近年注目が集まる「アクティブ・ラーニング」。文部科学省が推進する取り組みのひとつで、一部の学校ではすでに授業に取り入れられています。なんとなく「ディスカッションやディベートをする授業」ととらえているかもしれませんが、それだけではありません。そもそも、なぜアクティブ・ラーニングが必要なのでしょうか。授業だけでなく大学入試にも関わってきますので、詳しく知っておきましょう。

アクティブ・ラーニングとは

従来、学校の授業といえば、教師の説明を聞いたり板書をノートに写したりする一方向の形式でした。いわば受け身型の学習です。

アクティブ・ラーニングは、生徒や受講生が自ら考え授業に参加するスタイルの学習方法であり、文部科学省の用語集によれば、「学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」と定義されています。

単語や数式を覚えるのではなく、社会生活で大切な情報収集能力や判断力、課題発見と解決のための思考力など、総合的な知識や経験を養うのが目的です。

アクティブ・ラーニングが必要とされる社会的背景

アクティブ・ラーニングが求められる背景には、急激に進む社会の情報化と多様化があります。

インターネットやSNSをはじめとしたコミュニケーションツール、そしてAIに代表される高度な情報科学の発達によって、社会が変化するスピードは以前よりも速くなっています。身の回りに溢れる情報を取捨選択して主体的に判断することが、変化を続ける社会のなかで必要不可欠です。

また、グローバル化とともに多様化が進み、性別・国籍のみならず、主義主張やジェンダーなど、多様な価値観を認め合うことが求められています。正解のない課題に向き合い、他者と協調しながら解決策を探っていく力を身に付けることが、これからの社会で活躍するために欠かせないと考えられています。

こうしたことから、主体性や総合的な思考力を身につけるためのアクティブ・ラーニングが学習カリキュラムに取り入れられています。

アクティブ・ラーニングのメリット

実際にアクティブ・ラーニングを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。学校での学習過程を例にとって見てみます。

学習定着率の向上

一般的に、講義や読書といった受動的な学習よりも、自ら体験したり、他の人に教えたりする能動的な学習手法の方が、学習定着率が高い=学んだことが身に付きやすいとされています。

確かに、席に座って先生の話を聞いているだけだと、理解している、していないに関わらず授業は進んでいってしまいますし、全てを記憶することは困難です。それに対し、実験を行ったり、与えられたテーマに関して他者と議論したりと体験して学ぶ手法は、テーマに対する理解をより深めます。

最も学習定着率が高いのは、研究発表や論文執筆です。自分の知識を他者に伝えるということは、深く内容を理解していないと不可能だからです。

協働性が身に付く

アクティブ・ラーニングでは、生徒同士で意見交換したり、協力して発表を行ったりする協働学習が取り入れられます。他者と協力し、チームとして作業を行うことは、社会に出るうえでとても大切なことです。時には意見をぶつけ合いながらも、互いを尊重し合い、「どうすれば解決するか」を考えることで、協調性が身に付くのです。

課題を発見・解決する力が身に付く

課題を自ら発見し、解決するための方法を考える力がつくという点も、アクティブ・ラーニングのメリットです。社会に出てからの仕事の現場は、このプロセスの繰り返しといえるでしょう。「なぜうまくいかないのか」「どうすればもっと良くなるのか」といったことを常に考えることで、ゴールまでの道筋を自ら導き出す力を引き出します。

アクティブ・ラーニングの主な手法

アクティブ・ラーニングにはいくつか手法があります。代表的なものは次の5つです。

問題解決学習(PBL)

PBLとは、Problem Based Learning=問題解決学習のことで、教科書に沿って教師が一歩的に進めるSBL(Subject Based Learning)=科目進行型学習に対してこのように呼ばれます。

  1. 問題の発見
  2. 仮説の設定
  3. 解決策の考案
  4. 解決策の実践
  5. 振り返り

という一連の流れをチームで協力して行いながら、知識や経験を身につけていきます。

PBLで重視されるのは、問題を解決したかどうかという結果ではなく、全体の過程です。自ら考え、実感することにより主体的に学ぶことができ、チームで議論したり協力したりすることで協調性が磨かれます

さらに、仮説を立てて検証を繰り返すことで、正解のない問題への取り組み方を学んだり、実社会に近い課題を取り扱うことで、社会問題への意識づけといった効果も期待されています。

探究学習

現在、高校でも取り入れられている探究学習は、社会問題や国際理解など、教科の枠を越えて総合的な問題に取り組むための学習です。皆さんの学校でもこうした学習の時間が設けられているのではないでしょうか。

探究学習は、「自発的・能動的」というアクティブ・ラーニングの考え方に加えて、より「深く学ぶ」という点に主眼が置かれています。「なぜ」「どうやって」といった本質的な問いに向き合い、

  1. 課題の設定
  2. 情報収集
  3. 情報の選択
  4. 情報の分析・集約
  5. 発表

というプロセスを繰り返すことで学んでいきます。

ジグソー法

ジグソー法は、生徒同士が教え合うことで互いに理解を深めていく手法です。この手法が提唱された背景には、アメリカの人種問題がありました。白人と黒人で教育レベルの差が大きかったある学校で、お互いが協力し合う学習方法を確立することで人種間の差をなくそうと考えたことがきっかけです。

ジグソー法では、まず生徒を複数のグループに分けます(第1ステップ:ホームグループ)。グループのメンバーはそれぞれ異なるテーマについて学び、担当テーマに関するエキスパートとなります(第2ステップ:エキスパート活動)。そして再び元のグループに戻り、自分が学習してきた内容をメンバーに発表します(第3ステップ:ジグソー活動)。

この手法では、グループ内で自分の担当テーマについて最も詳しいのが自分ということになり、自分が学んだ知識をグループメンバーによりわかりやすく説明する必要があります。同時に、他のメンバーが持っている知識と組み合わせて答えを導き出すため、インプットとアウトプットを繰り返しながら学びを深めていくことができます。

フィールドワーク

フィールドワークは、学校の外に出向いて研究対象を直接観察し、学ぶ手法です。百聞は一見にしかずという言葉があるように、教科書や写真で学ぶよりも多くの情報を得ることができます。対象が人物であっても、地形や施設などの物であっても、肌で感じた経験は多くの発見につながります。

そのようにして得た研究成果について考察し、レポートにまとめたり発表したりすることで、「自ら考え、行動する能力」を身に付けることができます。

反転授業

反転授業は、「学校=授業 家庭=復習」というこれまでの形式を反転させるという考え方にもとづいています。先に映像教材を用いて家庭学習を行い、それについて学校の授業で意見交換を行うものです。

この手法は、見方を変えれば、「家庭で予習を行い学校で復習する」とも言えます。そのため、家庭での学習の精度にばらつきが出てしまうことや、映像で学習するための十分な通信環境を揃えることなどがデメリットとされています。

しかし、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が普及した現在こそ、有効なアクティブ・ラーニングの手法といえるかもしれません。

アクティブ・ラーニング型授業の事例

それでは、実際に導入され成果を出しているアクティブ・ラーニングの事例をご紹介します。

徳島県立脇町高等学校

文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール指定校である徳島県立脇町高等学校は、遺伝子組み換え作物をテーマとして調べ学習とディスカッションを行いました。

事前にアンケートを行い、自分たちが遺伝子組み換え作物に対して意識が低いこと、自分ごととしてとらえるべき問題であることを認識したうえで、遺伝子組み換え作物の是非について立場を明らかにしました。ここでの判断には、調べ学習や「生物基礎」で学んだ知識が根拠となりました。

「大反対」「反対」「賛成」「大賛成」と左右に広がるバタフライチャートを使いながら、推進派と反対派が議論し、質疑応答を行うなど活発な意見交換が行われました。最終的な結論を出すことが目的ではなく、相手の意見に耳を傾け、多様な意見を踏まえて自分の考えを深めるという、アクティブ・ラーニング本来の目標を達成することができました。

福岡県立北筑高等学校

普通科と英語科を併設する北筑高等学校では、「楽譜から歌詞の意味や作者の情景・心情を考察し、歌で表現する力を育成する」という課題に取り組みました。

プログラムは、正しく発声するために体をほぐすところからスタート。楽器を使った表現や議論を通して譜面に書かれた強弱記号と歌詞の関係を丁寧に考察し、楽曲が描く情景や作者の想いを、発音や抑揚に関連付けて歌うという、主体的・対話的な新しい形の音楽学習となりました。

大学入試にもアクティブ・ラーニングが導入され始めている

アクティブ・ラーニングは大学入試にも導入され始めています。言うまでもなく、学科試験の結果だけでなく主体性や協調性を評価するためのもので、その手法はさまざまです。

女子栄養大学「総合型選抜 アクティブ・ラーニング入試」

女子栄養大学では、栄養学部と短期大学部においてアクティブ・ラーニング(AL)入試を実施しています。

いずれも一次選考では、自己PRおよび入学後の目標についてのプレゼンテーションで選抜されます。さらに栄養学部においては400字程度の課題解決型レポートが課せられます。決められた時間内で自分の考えを整理し、相手にわかりやすく説明する力などが求められます。

参考:アクティブ・ラーニング入試につい|女子栄養大学

産業能率大学「総合型選抜 AL(アクティブラーニング)方式」

産業能率大学経営学部マーケティング学科では、グループ討論とレポート作成を含む4つの選考が行われます。発表内容の優劣ではなく、プログラム全体を通して、さまざまな側面からマーケティングへの関心度を評価するためのものです。

オープンキャンパスでは、アクティブ・ラーニング方式の入試について説明する「ALガイダンス」が行われます。また、大学でのアクティブ・ラーニングを実際に体験できる「アクティブラーニング体験DAY」も設けられています。

さらに、本番と同じ形式の「ALプレ入試」も実施。ここで適合度を確認できた受験者は、出願後のグループ討論・レポート作成・面接選考が免除されます。

参考:AL(アクティブラーニング)方式|産業能率大学

※各大学の入試情報は2020年10月時点のものです。

まとめ

アクティブ・ラーニングが目指す「周囲と協力しながら主体的に学び、考え、行動する力」は、これからの社会人に求められる共通点ともいえるでしょう。そのため、今後大学入試や就職試験においても採用が拡大されることが見込まれます。学校の授業や大学での体験プログラムなどを通して積極的にアクティブ・ラーニングに参加し、社会に出てからも役立つ総合的な能力を身に付けましょう。

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