絵を描くことが好きだから仕事にしたい。しかしどんな仕事があるか分からないし、どういう進路を歩めばいいのだろうと悩む人は多いのではないでしょうか。この記事では絵を描く仕事の種類や、絵を描く仕事につくための進路のパターン・どんな働き方があるのかについて解説します。
絵を描く仕事9選
絵を描くことが好きな人におすすめの仕事を9つ紹介します。
①依頼に則して絵を描く「イラストレーター」
商品パッケージ・広告・雑誌などで使用するイラストを描く仕事です。一般的に企業から「こういうイラストを描いて欲しい」という依頼をもらい、相手のニーズに合ったものを制作します。そのため自分の好きなものを書く機会は少ないです。
しかしイラストレーターとして知名度が高くなれば、自分ならではのテイストで売っていくこともできます。最近では自分の作品をSNSやイラスト投稿サイトに投稿し、一般の人にイラストを購入してもらったり、投稿が企業の目に留まり、仕事の依頼に繋がるケースも多いです。
平均年収は企業勤めの場合300〜500万円が相場です。フリーランスで1000万円を超える人もいますが、それは多くの人から人気を集めている一握りの人であることが多いです。
②キャラクターを作る「キャラクターデザイナー」
ゲームやアニメに出てくるキャラクターを作成する仕事です。ゲームの世界観やアニメのストーリーをもとにキャラクターを生み出すため、創造性が求められています。
働き方として初めはゲーム会社やアニメ制作会社に勤務して、ディレクターやクライアントの指示に基づいてキャラクターを作ることが多いです。その後フリーランスとして独立し、知名度が上がれば自分が作ったオリジナルキャラクターをもとにストーリーが作られたり、人気作品の制作チームに呼ばれて仕事したりすることもあります。
平均年収は300〜600万円が相場です。人気デザイナーともなれば、1000万円超えになることも珍しくありません。
③ゲームの世界観を作る「2D・3DCGデザイナー」
ゲームメーカーに就職し、ゲームのキャラクターや背景・武器などを描く仕事です。またキャラクターデザイナーとは違い、2Dのデザインを3DCG技術を使って立体感や奥行きのあるCGにする3DCGデザイナーという仕事もあります。
CGデザイナーは新卒の採用募集が多く、企業に所属して働くことが多いです。ただし技術力が必要となるため、その分野を専門的に学んだ経験が必要でしょう。
平均年収としては350〜450万円がボリュームゾーンとなっています。
④アニメーションの作画を描く「アニメーター」
アニメのキャラクターや背景、動きなどを描く仕事です。最近では紙に描くアナログの作画に加え、パソコンやタブレットに描くデジタル作画の経験も求められています。
アニメ制作会社に正社員として就職するというよりは、業務委託とするケースの方が多いです。
仕事としては2つあります。1つ目は原画担当です。監督からもらった絵コンテや設定資料などをもとにキャラクターや背景の原画を描いていきます。30分のアニメに対して300枚前後の原画を用意します。2つ目は動画担当です。こちらは原画担当が用意した絵をもとに動きをつける仕事です。原画と原画のコマを埋めることで動画を完成させます。
平均年収は110〜400万円であり新人時代は収入が少ないのですが、キャリアアップしてアニメの監督になれば平均年収は648万円と大幅に上がる傾向があります。
⑤物語を考えて漫画を描く「漫画家」
雑誌、書籍、WEBなどに掲載される漫画のストーリーを考えて絵を描き、作品を作る仕事です。原稿書きの依頼を受けて、締め切りまでに漫画を描くことが多いです。
漫画家になるためには最初から企業に就職するという形ではなく、雑誌の新人賞に応募したり、出版社に持ち込む必要があります。そこで評価を受けると漫画家としてデビューすることができます。またアシスタントとして連載中の漫画家の元で働き、経験を積む人も多いです。最近では、個人でWEBサイトに漫画を掲載し収入を得る人も出てきています。
漫画家の世界は実力主義のため、平均年収は数万〜数億円と大きな開きがあります。
⑥印刷物をデザインする「グラフィックデザイナー」
雑誌広告やチラシなどの印刷物・パッケージなどのデザインをする仕事です。出版社や広告代理店から依頼を受けてそれに合わせた制作物を作ります。自分の提案を通らせるためにはデザインのコンセプトや意図などを伝えるプレゼン力も必要です。
広告代理店で働く人もいればフリーランスの人もいます。しかしフリーランスで成功するには人脈も大切なため、初めは企業に就職する人が多いです。
グラフィックデザイナーの平均年収は320〜400万円となっています。
⑦絵画を描く「画家」
伝統的な技法を使ったり、独自の表現を追求するなどさまざまな手法を使って芸術性の高い絵を描く仕事です。
画家には大きく分けて2種類あり、「洋画家」と「日本画家」に分けられます。洋画は油絵具・水彩・パステルを用いてキャンパスに絵を描きます。日本画は岩絵具や墨を用いて絹や和紙に描く日本の伝統的な手法です。
画家はイラストレーターとは違い、基本的に依頼を受けて絵を描くことはしません。自分の描きたい作品を描き、個展やオークション、美術商などを通して販売することで収入を得ます。
画家の平均年収は画家の知名度や力量次第で大きく違うため、収入がゼロの人もいれば、美術ファンの心を捉え数百〜数千万円の収入を得る人もいます。
⑧絵を教える「美術教師」
小学・中学・高校において美術の授業を担当し、生徒に絵画・彫刻・陶芸などの制作技術や美術史を教える仕事です。生徒一人ひとりの個性を尊重し創作の喜びを教えるため、美術のスキルはもちろん、コミュニケーション能力も重視されます。
美術教師になるには美術課程のある大学・短大・専門学校で教員免許を所得し、教員採用試験に合格する必要があります。
平均年収は300〜500万円が相場といわれています。
⑨絵本を描く「絵本作家」
絵本を作る仕事であり、絵とストーリーを両方考える人もいれば別々で制作する人もいます。絵本作家として有名になることができれば、印税のほかにキャラクターグッズなどでも収入を増やすことができます。しかし絵本作家として成功する人は一握りで、多くの人はイラストレーターや作家と兼業しています。
また、絵本作家としてデビューするには出版社に作品を持ち込み編集者に評価してもらったり、コンクールで入賞する必要があります。
平均年収は50〜160万円と他の仕事に比べ低めですが、絵本を大ヒットさせることができれば印税として数千万〜数億円が収入になる場合もあります。
絵を描く仕事に就くための進路のパターンと費用
次に絵を描く仕事に就くための進路について紹介します。受験前に身につけておくべきスキルや具体的な学校・学費についても解説しますので高校生の人はぜひ参考にしてみてください。
絵を学べる大学へ行く
絵を描く仕事に就くための王道は、高校卒業後に芸術系の大学・短大・専門学校に進学します。そこで基本となる技術を身につけて企業に就職し、会社員としてキャリアアップしていく、もしくは実績や人脈を作った上で独立しフリーランスになる・起業するというルートです。
高校卒業後にそのままフリーランスになるという道もありますが、成功するにはプロが認める画力や営業力、コミュニケーション能力が求められます。
ここでは進学先それぞれで高校時代に身につけておくべきことや具体的な学校名や学費について紹介します。
美術系の大学へ行く
1つ目の進路パターンは高校卒業後、4年制の美大に進むことです。自分の作ったものに対して講師からの講評をもらい創作活動に励むことができます。また座学で幅広い範囲を学習できるため、在学中の4年間の中でやりたいことを見つけられます。
大学名 | 入学金 | 1年間の学費 | 4年間の学費 |
東京造形大学(私立) | 30万円 | 191万5000円 | 676万円 |
多摩美術大学(私立) | 27万円 | 196万8000円 | 706万2000円 |
武蔵野美術大学(私立) | 30万円 | 187万900円〜190万6900円 | 658万3600円〜672万7600円 |
東京藝術大学(国立) | 33万8400円 | 124万6020円 | 317万4900円 |
上記は東京にある代表的な私立美大3つと、国立の美大「東京藝術大学」の入学金と学費になります。
一般的な大学・学部とは異なり、学費は高いです。ただし表に載っている私立美大は人気の高い大学であると同時に、学費の高い美大であることでも有名であり、実際の美術系大学の学費(4年間)は240〜700万円と幅広いです。
美大受験にはデッサンや着彩による実技試験があり、この実技には専門知識やセオリーが求められます。そのため高校在学中から美大予備校に通い、受験に向けて絵を描く技術を磨くことがおすすめです。
美術系の短大へ行く
2つ目の進路パターンは2年で卒業できる短期大学への進学です。メリットとしては4年制の大学よりも半額の費用で美術スキルを得ることができます。私立4年制大学は4年間で平均約700万の学費がかかりますが、短大・専門学校の学費は2年間で約200〜300万円です。
大学名 | 入学金 | 1年間の学費 | 2年間の学費 |
嵯峨美術短期大学 | 20万円 | 175万円 | 350万円 |
女子美術大学 | 22万円 | 179万4930円 | 338万1930円 |
大阪芸術大学短期大学部 | 32万円 | 140万円 | 302万円 |
絵を学べる専門学校へ行く
3つ目の進路パターンは専門学校に進むことです。大学では幅広い範囲を学習できるのに対し、専門学校では最初から就職に特化した実践的な指導を受けられます。やりたいことや就きたい職業(「イラストレーターになりたい」など)がはっきりと定まっている人は専門学校がおすすめです。
大学名 | 入学金 | 1年間の学費 | 2年間の学費 |
東洋美術学校(イラストレーション科) | 17万円 | 130万9000円 | 250万8000円 |
創形美術学校(ファインアート・ビジュアルデザイン科) | 18万円 | 139万5200円 | 388万600円(3年間の学費) |
大阪美術専門学校 | 19万円 | 116万円 | 213万円 |
上記の表では美術系の専門学校の入学金・1年間の学費・4年間の学費をピックアップしました。
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絵を描く仕事にはどんな働き方があるのか
最後に働き方について紹介します。学生としての期間が終わりいざ絵を描く仕事に就くとき、どんな働き方がおすすめなのかについて解説します。
①企業に勤める
1つ目の働き方は企業に就職することです。雇用の「安定」が確保された環境で一定の収入を得ながら技術力を磨くことができます。
また企業に勤めることで絵を描く仕事の人脈を作ることができ、いずれフリーランスになったときに仕事を得やすいというメリットもあります。
ただし企業に所属しているからには求められていることに応えなければなりません。自分が描きたくない、苦手なイラストでも、クライアントの依頼があれば十分な品質で応える役目があります。
②フリーランスとして働く
企業には属せず、個人で依頼を受けて仕事をしたり、業務委託で特定の企業の案件を中心に受ける働き方もあります。在学中に依頼を受けて仕事をしている場合、学校卒業後にフリーランスの道を選ぶ人もいます。
スキルがあれば自分のやりたい仕事を選べるという点がフリーランスのメリットです。一方で絵を描く以外に自分の力で仕事をとってくる必要があるため、営業力や企画力が求められます。
③副業として働く
3つ目の働き方は本業で絵を描く仕事とは関係のないことをやりながら、副業で自分の作品を売るという働き方です。
最近ではSNSや作品を投稿できるサイトがあるため、ネット上で仕事を手に入れる人も多いです。
副業では雇用の安定を保ちながら絵を描く仕事のキャリアを探れるというメリットがあります。
まとめ
絵を描く仕事にはさまざまな種類があります。また絵の仕事に就くための進路のパターンや、いざ絵を仕事にするときの働き方も複数の選択肢があるため、メリットデメリットを考えながら自分に合ったものをみつけていきましょう。この記事が「絵を描く仕事に就きたいと考えている高校生の人」にとって少しでも参考になれば幸いです。