どこからが誹謗中傷?SNSで人を傷つけないための5か条

Edv Magazine 編集部

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どこからが誹謗中傷?SNSで人を傷つけないための5か条

2020年5月、女子プロレスラーの木村花さんが23歳という若さでこの世を去りました。恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していた木村さんは、番組内での言動を理由にSNS上で誹謗中傷を受けており、精神的に追い詰められていたと見られています。

事件後、番組の演出上でいわゆる「やらせ」があったのではないかという憶測や、情報開示に関する法律について議論が始まるなど、社会的な動きも出ています。

この問題は高校生の皆さんにとっても他人事ではありません。日頃から使っているTwitterやInstagramも、使い方によっては人を傷つける凶器になりかねません。「みんながやっているから」「匿名だから大丈夫」では済まされない時代になっているのです。何気ない言葉で人を傷つけないよう、SNSを使ううえで最低限のルールを、改めて確認しましょう。

木村花さんだけじゃない、SNS誹謗中傷の事例

インターネット上での誹謗中傷は今に始まったことではありません。心無い言葉で傷ついている人は有名・無名を問わず多く存在します。まずは実際にあった事例からご紹介します。

タレント・春名風花さんの場合

幼少期から女優・タレントとして活動し、9歳からTwitterを始めた「はるかぜちゃん」こと春名風花さん。ファンから親しまれる一方で、一部から本人や家族を傷つけるメッセージも届くようになりました。中には殺害予告ともとれる悪質なものもあり、番組降板を求める電話が相次いだり、舞台の会場で手荷物検査を実施したりと、仕事にも影響しました。

春名さんは傷つき、警察に相談。最終的にプロバイダに対して情報開示を求める裁判を行い、投稿者を特定して刑事告訴。2020年7月、315万4000円の示談という形で裁判が決着しました。

このケースでは、計4回の裁判のために2年弱の時間と100万円以上の費用がかかりました。春名さんは証拠となる画面キャプチャの収集でも辛い思いをしたといいます。それでも泣き寝入りをせず、「誹謗中傷は罪になる」ということを身をもって伝え、現在もいじめに悩む小中高生などにメッセージを発信しています。

僧侶・高橋美清さんの場合の場合

高橋美清(びせい)さんは、かつて「高橋しげみ」という名前でフリーアナウンサーとしてテレビ番組の司会などで活躍していました。しかし、仕事を通して知り合った相手から執拗なストーカー被害に遭ってしまいます。

その後、逮捕された加害者が自宅で亡くなっているのが発見されました。一部で高橋さんの元交際相手と報じられていたため、高橋さんは被害者であるにも関わらず、ネット上で誹謗中傷を受けてしまいます。テレビ番組を降板、連載も打ち切りになるなど、仕事も激減しました。

精神を病み、自殺未遂を繰り返した高橋さんでしたが、仏門に入り修行をすることに。3年をかけて投稿者を特定し、名誉棄損で刑事告訴するに至りました。現在は同じように誹謗中傷に苦しむ人を救うべく、天台宗の僧侶として自宅に「駆け込み寺」を作る準備を進めています。

俳優・フェミニストの石川優実さんの場合

女優として映画にも出演していたフェミニストの石川優実さんは、女性が職場でパンプス着用を求められることに疑問を感じ、「#KuToo」(「靴」と「苦痛」を掛け合わせた造語)のハッシュタグでオンライン署名活動を始めた女性です。

この運動は多くの女性の共感を得て政府や官公庁を動かすことになりましたが、一方では彼女がかつてグラビアやヌードモデルをしていたことを理由に、個人攻撃をするツイートが相次ぎました。

石川さんに対する攻撃は、性的な行動・服装をしている女性を非難する「スラット・シェイミング」として、海外のメディアでも大きく取り上げられました。理不尽なバッシングを浴びながらも、石川さんは現在も力強く自分の考えを訴え続けています。

コロナ関連の誹謗中傷も急増

2020年3月以降、新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延すると、患者や医療従事者、その家族に対する誹謗中傷が相次ぎました。また、県外ナンバーの自動車への暴行、営業している店舗に嫌がらせをする「自粛警察」の過激な行いなども目立ちました。

こうしたコロナ禍での誹謗中傷の中には、「感染を拡大させてはいけない」という正義感によるものもあるといわれています。しかし、当事者にとっては差別や偏見であることに変わりはなく、誹謗中傷を禁止する条例を制定した自治体もあります。

高校生にも広がるSNSでの誹謗中傷

高校生にも広がるSNSでの誹謗中傷

今やSNSは高校生にとって欠かせないツールです。友達同士のコミュニケーションやトレンドチェックなど、使わない日はないといってよいほど身近な存在でしょう。だからこそ、誹謗中傷について真剣に考える必要があります。

高校生のSNS利用頻度

日本財団の「18歳意識調査」によると、全国の17~19歳の男女の94%が日常的にSNSを利用しています。使ったことのあるSNSは、上位からLINE、Twitter、Youtube、Instagram、TikTok。主な使用用途は情報収集(80.4%)で、次いで友人とのやり取り(75.5%)、学校や仕事などの連絡(69.0%)となっています。「SNSはあなたの生活に必要不可欠ですか(でしたか)」という設問には、75.2%が「はい」と回答しています。

SNSでの誹謗中傷被害の経験は?

多くの高校生にとってSNSが必須ツールとなる一方で、全体の12.0%が「SNSを通して誹謗中傷を受けたことがある」と回答。10人に1人以上の割合で被害に遭ったことになります。

SNSで誹謗中傷の投稿をした経験は?

それでは、逆に「自分が誹謗中傷をしてしまった」という認識はどうでしょうか。「SNS上で、根拠の希薄な批判や悪口を書いたことはありますか」という設問に対し、「はい」と答えたのは5.2%。

自分で発信しなくても、誹謗中傷の発言をシェアしたり、リツイートした経験があるという人は5.1%となりました。

これらの結果からわかるのは、「被害の意識のほうが、加害の意識よりも感じやすい」ということです。「自分ではそのつもりがなかったけれど、誰かを傷つけているかもしれない」と思い当たる経験はないでしょうか。

たった1文字違いで炎上することもある

メールやSNSでは、対面や電話でのコミュニケーションに比べ、微妙な感情やニュアンスが伝わりにくいという側面は以前から指摘されています。少し極端な例になりますが、たった1文字違いで相手に誤解を与え、関係性にひびが入ってしまうということがあります。

Aさんは、仲のいい友人同士のトークルームで、ある友人Bさんについてコメントしました。「Bちゃんの話っていつも面白くない?」――もちろん、いつも面白いよね、という肯定の意味で発言したのですが、この時最後の「?」を付け忘れ、「Bちゃんの話っていつも面白くない」と送信してしまったのです。

これに気づかず、しばらくの間スマホから離れ、再びトークルームを見ると、「Aちゃんひどい」「そんな言い方しなくても」「何様?」と、Aさんを非難する書き込みが続いていました。これをきっかけに、Aさんは仲の良かった友人と距離ができてしまい、以前と同じように接することができなくなってしまったといいます。

「悪気はなかった」では済まされない

SNSは手軽に使うことができる反面、内容を深く考えずにその時の感情で発信してしまいがちです。前述のアンケートでも、「根拠の希薄な批判や悪口を書いた理由」としては次のような回答が見受けられました。

  • ストレスの捌け口
  • みんなに合わせて
  • 暇だったから
  • 感情任せ
  • 深く考えていなかったから

このように、明確な悪意がなくても誹謗中傷を発信するケースがあるのがSNS上での誹謗中傷の特徴です。しかし、悪意の有無に関わらず被害者の心は傷つきますし、日常生活や仕事に影響を及ぼします。そしてそうした言動は「悪気はなかった」では済まされないのです。

匿名も「裏アカ」も特定可能

暴言や誹謗中傷は、SNSという匿名性の高い場所だからこそ増えているともいえます。実際皆さんも、実名アカウントで特定の誰かを攻撃することはしませんよね。匿名であれば心のどこかで「ばれない」と思っているのではないでしょうか。

しかし、匿名やいわゆる「裏アカウント」も、被害者がしかるべき措置をとることで発信者情報を特定することができます。春名風花さんや高橋美清さんのケースでも、プロバイダに情報開示請求を行い、正当な手段で発信者を特定したうえで刑事告訴を行っています。

もちろん、「発信者を特定できるから誹謗中傷はすべきでない」ということではありませんが、必要があれば匿名の隠れ蓑は外されるということを覚えておきましょう。

悪質な誹謗中傷は法的措置の対象

現在、SNS上での誹謗中傷については法整備の必要性が議論されています。警察でもネット上の脅迫や誹謗中傷は積極的に事件化する姿勢をとっており、今後取り締まりは強化される見込みです。

具体的に検討されているのは、誹謗中傷の発信者への厳罰化や、発信者の情報開示手続きの迅速化、違法投稿の定義の明確化などです。いずれも風評被害や誹謗中傷をなくす、または被害者を守るためで、表現の自由や通信の秘密といった概念とバランスをとりながら、法的措置で対応していくべきという考えが大半を占めています。

悪質な誹謗中傷は法的措置の対象になるということも、SNSを利用するうえで抑えておきましょう。

どんな罪になるのか

SNSでの誹謗中傷は、法律上「脅迫罪」「名誉毀損罪」「侮辱罪」に当たる可能性があります。

脅迫罪は例えば「死ね」「消えろ」「家族を狙う」など、直接的または間接的に危害を加えることを示唆するものです。NGワードを回避するために「氏ね」「市ね」など漢字を変換しても、相手が感じる恐怖が変わらなければ同じ罪に問われます。

名誉毀損罪とは、「こいつは犯罪者だ」など、事実の有無に関わらず相手の名誉を害する表現を不特定多数に発信することです。

また具体的な事実がなくても「バカ」「アホ」「キモイ」など相手を侮辱する意見を述べることは、侮辱罪に当たります。

無意識の投稿が誰かを傷つけているかも

無意識の投稿が誰かを傷つけているかも

たびたび触れているように、SNSを使う上で注意したいのは「無意識に他人を傷つけてしまう可能性」です。悪意のない発言でも誹謗中傷となる場合があるので、十分に気を付けてください。

外国人差別・性差別を助長する表現

日本に住んでいると感じにくいですが、人種差別は現在でも世界中で深刻な問題です。「中国人がウイルスを運んだ」という主旨の発言や「外国人お断り」などどする飲食店の張り紙は明らかな外国人差別です。

「女性のくせに」という女性蔑視発言や「女性は子供を産むべき」という前時代的なジェンダー論、さらには近年注目されるLGBTQという性的マイノリティの人々への差別も問題視されています。

これらは年配層に多く見られるといわれていますが、10代でもなにげない会話の中で触れることのある要素です。

正義感からしてしまう誹謗中傷

悪意とは真逆の正義感から誹謗中傷をしてしまうケースもあります。例えば、不祥事を起こした芸能人に対して不必要に攻撃したり、犯罪関係者の実名を公表して「社会的制裁」を加えようとしたりといった行為です。

2019年に茨城県の常磐自動車道で起きた「あおり運転」の関連では、愛知県豊田市の市議が、事件に無関係な女性の写真を「早く逮捕されるように拡散お願いします」としてフェイスブックに掲載し、相手女性から損害賠償を請求されました。

芸能人も一人の人間

よく、「芸能人は叩かれても仕方がない」「有名税として我慢するべき」という意見がありますが、著名人だからといって誹謗中傷をしてよいというわけではありません。

木村花さんの例をとるまでもなく、芸能人も一人の人間であり、悪意ある言葉に傷つくということをよく理解してください。

フェイク動画も誹謗中傷の一種

情報技術の進化とともに、テクノロジーを駆使した誹謗中傷も増えています。その一例がフェイク動画です。2020年に入ってからは「ディープフェイク」と呼ばれる高精度の技術が登場し、著名人の顔とポルノ画像を巧妙に組み合わせたり、暴言を吐いているかのように捏造したりすることができるようになっています。

このように嘘の動画を作成し、広く公開することも、誹謗中傷または名誉毀損となります。精巧に作ることができる一方で、それを見抜く技術も発達していることを忘れないでください。

SNSで人を傷つけないための5か条

ではここからは、SNSで人を傷つけないために覚えておきたい5か条をご紹介します。自分や他人の発信について「大丈夫かな?」と思った時には、この5か条に立ち返って考えてみてください。

1. 自分の実名をさらす気持ちで書き込む

SNSでの匿名性は、あくまでも通常時のものです。事件が起きた時、起きそうな時、誰かが傷ついた時には、必ず発信者を特定されます。常に実名をさらしている気持ちで、責任をもって書き込みましょう。

2. 情報源を確認する

他人が発信した情報をシェア・リツイートして根拠のない批判や悪口を拡散することも、誹謗中傷につながることがあります。拡散する場合は、情報源がどこなのか、根拠や正当性はあるのかということを十分に確認してください。

3. 対面で言えないことは書かない

「どこまでが誹謗中傷か」という議論についてはさまざまな意見がありますが、最低限のラインとして知り合いであっても芸能人であっても、「相手に面と向かって言えないことは書かない」と考えるとよいでしょう。

4. 一度書き込んだら消せないと心得る

「デジタルタトゥー」と呼ばれるように、ネット上に一度書き込んだ内容は消すことができません。「炎上したら消せばいいや」と思っても、拡散されたりスクリーンショットをとったりすればネット上に残されます。これは、あなたが書き込んだという事実が消せないと同時に、誰かを傷つけた言葉が半永久的に残るということを意味します。

5. 発信前にもう一度考える

SNSは気分に合わせて気軽に発信できるツールですが、投稿ボタンを押す前に一度考えるクセをつけましょう。ひょっとしたらその投稿が、誰かを傷つけるかもしれない、誰かの人生を狂わせてしまうかもしれないという危険を常にはらんでいるのです。

誹謗中傷をされたら・見かけたら

最後に、もしもあなたが誹謗中傷をされたら、またはされていて悩んでいる友達がいたらどうするべきか、段階別に対策をご紹介します。

まずはブロック・ミュート

ほとんどのSNSでは、相手の発言を見えなくしたり、直接メッセージを送れなくするブロックやミュートの機能があります。不快な書き込み、自分に対する攻撃を見つけた場合は、まずブロック・ミュートをして自分の視界から消し去るようにしましょう。

無視は泣き寝入りとは違います。下手に反撃すると攻撃が過激化することもあるので、「暇な人がいるものだな」と気にせずに済むのならそれに越したことはありません。

ひどい場合は証拠を残して通報・削除依頼

それでもアカウントを変えて連絡してくる場合や、身の危険を感じる悪質な誹謗中傷に対しては、スクリーンショットやプリントアウトをして証拠を残し、警察に通報しましょう。SNSの運営会社に連絡して削除依頼をすることもできますし、時間とお金はかかりますが投稿者を特定して民事提訴または刑事告訴することも可能です。

警察や弁護士に相談すると必ず「証拠は残してありますか?」と聞かれるので、まずは証拠を残すことを考えてください。

周囲の人に相談を

最も大切なのは、自分一人で悩まないこと。見えない相手からの攻撃は恐ろしいですし、知っている相手からであれば学校生活も送りづらくなることでしょう。友達や両親、先生など信頼できる他人に相談し、抱え込まないようにしてください。

また第三者機関による相談窓口も用意されています。身近な人に相談しづらい場合はこちらを利用しましょう。

正しく使えば楽しいツールに

SNSはもはや現代の高校生にとって必須ツールとなっています。だからこそ、最低限のルールとマナーを守って使うことが大切です。SNSは使い方次第で人々の可能性を高めることもでき、何より本来は日常で楽しく交流するための空間です。社会に出てからもメディアリテラシーは常に求められるので、今のうちに「SNSで人を傷つけないための5か条」を身につけておきましょう。

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