AIに負けないためのマストスキル「21世紀型スキル」とは?

Edv Magazine 編集部

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AIに負けないためのマストスキル「21世紀型スキル」とは?

「21世紀型スキル」という言葉を聞いたことはありますか?数年前から注目されている、学校教育や人材育成に関わる重要なキーワードです。高校、大学のカリキュラム作成の背景にもこうした考え方が影響していますし、今後大学入試や就職試験においても重視されると言われています。

今回は、この21世紀型スキルが提唱されるようになった背景や注目される理由と、具体的な内容についてご紹介します。次世代の担い手として、ぜひ知っておきましょう。

21世紀型スキルとは

21世紀型スキルとは、高度に情報化・グローバル化が進んだ現代=21世紀において必要とされる能力のこと。これまでのような単純な学力やタスクの処理能力ではなく、適切なツールを活用して情報収集したり、自ら課題を発見して解決したり、周囲の人とコミュニケーションをとりながら問題解決に取り組んだりする、総合的な能力です。

提唱までの歴史

従来の教育とは、単語の意味や数式、史実などを教師が生徒に対して一方的に教え、知識を詰め込む知識偏重型と呼ばれるものが主でした。

しかし21世紀に入り、情報化やグローバル化が急激に進んだことで、仕事の内容ややり方が大きく変化し、社会人として求められる能力が変わってきました。ヨーロッパをはじめとする世界各国の研究機関や団体が、21世紀を生き抜くためのスキルを定義し、教育や人材育成の方針に変革をもたらしています。

ATC21sとは

21世紀型スキルを定義・提唱している団体は数多くありますが、とりわけ中心的なのがATC21sです。ATC21sは2009年1月にロンドンで発足したプロジェクトで、正式名称は「Assessment and Teaching of Twenty-First Century Skills Project」(21世紀型スキルの学びと評価プロジェクト)といいます。

マイクロソフト、インテル、シスコシステムズなど大手情報関連会社をスポンサーに持ち、イギリスの他アメリカ、オーストラリア、シンガポールなど6カ国が参加しています。

21世紀型スキルが注目される理由

では、なぜ21世紀スキルが注目されているのでしょうか。その理由は、ICTに代表される情報技術の進化と、それに伴うビジネスシーンでの価値の転換があります。

「ソフトスキル」の重要性

これまで一般的なビジネスの場で必要とされ、評価基準とされてきたのは、学歴や資格、理論や知識量など、定量的で可視化しやすい能力でした。これらを「ハードスキル」と呼びます。

これに対して、対人関係を円滑に築くことで、ビジネスパートナーと交渉したり、問題を分析して解決したり、広い視点でマネジメントしたりといったスキルは「ソフトスキル」と呼ばれます。

目まぐるしい勢いで新たなビジネスが誕生する現代では、業務の種類も多様化し、それぞれに付加価値が求められます。環境の変化に柔軟に対応し、状況に応じて最適なパフォーマンスを発揮できるソフトスキルが重要となっているのです。

AIに淘汰されない技術と専門性

21世紀型スキルが注目される背景に、AI(人工知能)の存在があります。急激に進化する情報技術のなかでもAIの進化は特に目覚ましいものがあります。

文部科学省提出資料によれば、複数のアメリカの大学教授が「今後10~20年程度で、アメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化される可能性が高い」との見方を発表しています。つまり、近い将来、半数近い仕事がAIに置き換わることが予測されるため、AIに淘汰されない、すなわち人間でなければできないスキルを身につけておく必要があるのです。

21世紀型スキルの内容

21世紀型スキルは、4つのカテゴリーと10種類のスキルに分けられます。

思考法

目の前の課題を発見したり、主体的に判断したり、学ぶという行動そのものを客観視したりする能力です。想像力を働かせて、自分の考えを論理的にまとめ、行動するための基礎力を養います。

  • (1)創造力とイノベーション
  • (2)批判的思考、問題解決、意思決定
  • (3)学ぶことの学習、メタ認知(認知プロセスについての知識)

仕事のやり方

仕事は一人では完遂できません。チームや取引先とのコミュニケーション、または異業種とのコラボレーションなどによって新たな価値を生み出す力を目指します。そのために周囲と円滑に交流し、ときにはリーダーシップを発揮してゴールを目指す対人能力が必要となります。

  • (4)コミュニケーション
  • (5)コラボレーション

仕事のツール

今やICTはあらゆる業種・業界に浸透しています。事務職やIT関連職でなくても、パソコンやタブレット端末などのツールを適切に使いこなし、情報を取捨選択するリテラシーは社会人として必須スキルです。学習や仕事の場でデバイスや情報を正しく扱える能力を身につけます。

  • (6)情報リテラシー
  • (7)ICTリテラシー

社会生活

自分はどうやって生きていきたいのか、社会とのつながり方、一人の社会人としての義務や責任などを考えます。また、世界を舞台に活躍するための思考法、グローバルな人材育成にも関係します。

  • (8)市民性(ローカルとグローバル)
  • (9)キャリア設計
  • (10)個人的、社会的責任(文化についての理解と適応)

大学入試との関わり

21世紀型スキルはこれからの社会人を育てるための指標にもなります。そのため、当然大学入試とも深く関わってきます。

「21世紀型能力」と新学習指導要領

全国の幼稚園・小中学校・高等学校の教育方針について定める文部科学省の学習指導要領にも、21世紀型スキルの考え方が取り入れられています。平成30年度からの新学習指導要領では、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の3本が柱とされました。

このうち「何ができるようになるか」というテーマに対しては、学びに向かう力・人間性等の涵養、思考力・判断力・表現力の育成といった総合的な能力の育成に重点が置かれています。

入試においても21世紀型能力が求められる

大学入試にも、21世紀型スキルの考え方が関係しています。2020年の大学入試改革によって、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」といった要素で受験生を評価するようになりました。

マークシート式で知識暗記型の筆記テストであったセンター試験に代わり、思考力や判断力を問う「大学入学共通テスト」が導入されました。在学中の部活動やボランティア、行事などの活動履歴をまとめる「eポートフォリオ」、小論文やプレゼンテーション、口頭試問などによる「総合型選抜」など、総合的なスキルによって選抜する大学も年々増えています。

21世紀型スキルを身につけるための教育

21世紀型スキルを身につけ、これからの社会を生き抜く人材を育てるべく、高校での教育も変わってきています。

アクティブ・ラーニング

グループ学習やディスカッションを行い主体的に考える姿勢を身に付けるアクティブ・ラーニングは、21世紀型スキルを意識した教育の代表例です。皆さんの学校でも取り入れられているのではないでしょうか。

ICTの活用

PCやタブレット端末、専用アプリケーションなどを用いた学習も進んでいます。思考力を養うために、適切なツールを適切に扱って情報収集するスキルを身に付けるためのものです。特にコロナ禍でのオンライン学習では、デジタルデバイスの需要が増え、より身近な存在になりつつあります。

正誤問題から記述式問題へ

学校での定期テストも、〇×の正誤問題や選択問題よりも、解答にいたるまでの思考や自分の考えを自分の言葉で書く記述式問題が増えています。自発的に考え、アウトプットする力を養う取り組みの一つです。

まとめ

21世紀型スキルは、ICTやAIが発達した現代において必要不可欠なスキルです。将来どのような仕事に就くとしても必ず求められるでしょう。

そのようなニーズを背景に、新教育指導要領が発表され、大学入試改革が行われるなど、2020年前後は教育現場でさまざまな変化が起きています。その意味で皆さんは、ある意味時代の過渡期にいるといえます。時代が求めるスキルを理解し、身に付けることが、21世紀という時代に活躍できる人材となる近道となるのではないでしょうか。

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