最近よく耳にするようになった「SDGs(エスディージーズ)」という言葉。テレビや雑誌などで、カラフルなパネル状のアイコンを見たことがある人も多いのではないでしょうか。今や全世界の合言葉となっているSDGsとは、世界各国が抱える課題に地球規模で取り組み、より暮らしやすく、幸せな未来を作るための目標です。
地球規模というと何だか遠い話のように思えますが、SDGsは私たち一人ひとりに関係のあるテーマです。毎日の暮らしの中で選ぶ行動が、目標達成のための一歩となるのです。高校生にも今すぐできるSDGsの取り組みとは、一体どのようなものでしょうか。
SDGsとは?
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に開かれた国連サミットで採択された、世界をよりよくするための国際的な目標です。国連に加盟する193カ国が、2030年までに15年間で達成を目指す長期的な指標として定められています。
17のゴール
SDGsは17のゴール=目標で構成されています。その内容は、気候変動やエネルギーといった環境問題から、貧困や飢餓の撲滅、働きやすく住みやすい社会づくりなど多岐にわたります。
- 貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
- 飢餓をゼロに
飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
- すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
- 質の高い教育をみんなに
すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- 安全な水とトイレを世界中に
すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
- 働きがいも経済成長も
すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
- 人や国の不平等をなくそう
国内および国家間の格差を是正する
- 住み続けられるまちづくりを
都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
- つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
- 陸の豊かさも守ろう
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
- 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
- パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
SDGsが提言されるまで
世界を取り巻くさまざまな問題を解決するための普遍的な目標は、1990年代から国連で議論されてきました。主要な国際会議で採択された「国際開発目標」と、2000年9月に採択された「国際ミレニアム宣言」を統合し、2001年、貧困に対するグローバルな取り組みとして8項目を目標に掲げた「ミレニアム開発目標(MDGs)」がスタートしました。これがSDGsの前身となっています。
その後、2012年に開催された「国連持続可能な開発会議」で世界が直面する課題について議論が進められ、2015年9月の国連サミットでSDGsが採択されました。
SDGsが注目される理由
SDGsが注目されるのには、大きく3つの理由があります。
世界の危機意識の高まり
温暖化と海面上昇、森林の砂漠化など、地球環境は深刻な危機に面しています。また、国際紛争や貧困、差別といった人間社会が抱える問題も山積みの状態です。
多くの課題を前にして、世界全体が「このままではいけない」という危機意識を抱いていることが、SDGsを推進するベースとなっています。
明確でわかりやすい目標設定
SDGsは17のゴールに対して具体的な数値目標が掲げられています。国別の進捗率も発表されており、目標と達成率が非常に明確です。一目でわかるカラーロゴもわかりやすく、認知率を高めています。
ビジネスシーンでの重要性
ビジネスの世界では、SDGsへの取り組みが1つの評価基準になっています。SDGsに積極的な姿勢は消費者や投資家から評価されるため、企業単位で行動することが一般的になっているのです。お菓子のメーカーが紙パッケージを採用したり、女性を積極的に管理職に登用したりする動きもその一環といえます。
高校生にできるSDGsの取り組み
SDGsは世界規模の目標ですが、高校生でも十分に貢献することができます。身近なことから始めてみましょう。
学校や家でできること
まずは学校や家にいるときにできることです。特別なことではなく、日常の暮らしの中で、よりよい世界に近づく一歩を踏み出すことができます。
1. 電気や水道をこまめに止める
「電気をつけっぱなしにしない」「水を出しっぱなしにしない」というのは、家庭でも言われていることでしょう。光熱費を節約するためだけでなく、限りある資源を無駄にしないために、一人ひとりができる努力です。
2. いじめや差別をしない、させない
いじめや差別は自分がしないだけでなく、見て見ぬふりをせずに止める勇気を持つことが大切です。また、無意識のうちに人を傷つけていることもあります。ふとしたときに自分の言動がいじめや差別につながっていないか、考える癖をつけましょう。
3. ハンデのある人を見かけたらサポートする
駅や道でハンデのある人に出会ったら、積極的にサポートしましょう。専門知識がなくても、「何かできることはありますか?」と声をかけるところからで構いません。小さな優しさも必ず相手に届きます。
4. 社会問題についてクラスメイトと意見交換する
テレビやネットのニュースで気になる社会問題があったら、クラスで話題にしてみましょう。「自分はこう思う」と意見を発信しつつ、他の人の意見を聞いてみると視野が広がります。急に真面目な話をするのは恥ずかしいかもしれませんが、意外とまわりの友達も同じように考えているかもしれませんよ。
買い物するときにできること
コンビニやスーパーで買い物をするときにも、SDGsを意識した行動ができます。できるだけゴミを出さない買い物は、地球環境に優しい選択です。
5. 紙パッケージの商品を購入する
近年、お菓子やジュースに紙パッケージのものが増えてきました。ビニールやプラスチックを使わない紙パッケージの商品を選ぶことで、年々深刻になっている海洋プラスチック問題や石油資源問題の解決につながります。
6. 認証マーク入りの商品を購入する
地球環境に優しい生産方式で生産された商品には、認証マークがついています。認証マーク入りの商品を購入することで、SDGsで掲げた目標の達成に近づくことができます。
- 海のエコラベル「MSC認証」
- 養殖水産物のエコラベル「ASC認証」
- 環境に優しい森林認証制度「FSC認証」
- 認証パーム油「RSPO認証」
- 公正・公平な貿易で生産者を守る「フェアトレードマーク」
- 熱帯雨林を保護する「レインフォレスト・アライアンス認証」
7. マイバッグを持参する
2020年7月から、スーパーやコンビニのレジ袋が有料化されました。これにより多くの人が買い物の際にはマイバッグを持参するようになっています。小さく折りたためるマイバッグを1つ持っておけば、外出先のコンビニでお菓子やジュースを買うときもレジ袋を使わずに済みます。かさばるものではないので1枚持っておきましょう。
8. マイボトルを利用する
通学中や外出先で、ついつい買ってしまいがちなペットボトル入りの飲料。手軽に買えてすぐに飲めるのがメリットですが、どうしてもゴミが出てしまいます。マイボトルにお水やお茶を入れて持ち歩くことを習慣づけると、ペットボトルゴミを減らすことができます。
9. プラスチックの使用を避ける
土に還らないプラスチックは、正しく処理されないと河川から海に流出して野生動物に深刻な影響を与えます。日本は1人あたりのプラスチックゴミ排出量が世界ワースト2位と言われており、脱プラスチックは大きな課題となっています。
ストローを使わない、消耗品は詰め替えタイプを買う、カフェにマイタンブラーを持っていくなど、高校生にもできることはたくさんあるので、調べて実践しましょう。
スマホを使うときにできること
皆さんが毎日使うスマホの使用でも、SDGs達成のためにできることがあります。今日からできることなので、ぜひやってみてください。
10. SDGsに関係する情報をSNSで拡散する
SDGsを達成するためには、一人ひとりが自分ごととして意識することがとても大切です。ネットでSDGsに関係する情報を見つけたら、SNSでシェアしてみましょう。「こんな記事を見つけた」「こう考えた」「こう行動しよう」とコメントを発信するのも有効です。同じように考えている人とフォローし合って、情報交換することもできます。
11. 検索エンジン「ECOSIA」を使う
スマホでWEB検索する際、「ECOSIA(エコシア)」のアプリを使ってみましょう。GoogleやYahoo!で検索をすると上位に広告が表示されますが、ECOCIAは広告収入の80%を世界中で植樹活動を行う世界自然保護基金に寄付しているため、検索することで植樹活動に貢献できます。約45回の検索で1本の木を植えることができます。
ECOCIAはドイツ生まれのアプリで、2020年12月現在、日本語には対応していませんが、検索は日本語で問題なくできます。
まとめ
SDGsは世界中が注目する国際目標であり、これからの時代を生きる皆さんにとって非常に重要なキーワードです。一人ひとりが自分ごととして意識し、普段の生活を少しずつ変えることで、目標達成に一歩ずつ近づくことができます。達成リミットの2030年までは、あと10年。今日からできることをさっそく始めてみましょう。