法学部と聞くと、「弁護士、難しそう、暗記…」などのイメージされる方が多いのではないでしょうか?今回は、法学部で学べることや人気の就職先、大学の選び方について紹介します。ぜひ、進路選択の参考にしてください。
法学とは
法学とは「法や法律について学ぶ学問」のことです。人々が生活していくなかで、どのようなルールがあるべきかを探求していきます。世の中の法律を理解する必要はありますが、法律を丸暗記することを目的としているわけではありません。法学部では、大きく分けて「法学」と「政治学」の2つを学びます。
法学
法学とは、憲法・民法・刑法などのいわゆる「六法」をはじめとした基礎について理解を深める学問です。
法への理解を深めるには、具体的な事件の判例等を用いたケーススタディが行われることが多く、たとえば過去起きた事件について、どのように解釈し法律を適用していくかを検討していきます。
政治学
政治学とは、政治理論や政治史、公共政策、国際政治について研究する学問です。
政治の基本的な仕組みから、国内外の政策の背景や思想となっている概念、そして政治の動きに対して世の中がどう変化したかを考察し、よりよい社会にするために何が必要かといったことを考えます。
法学部で学ぶこと
法学部で学ぶことは大きく分けると、「解釈論」と「立法論」の2つがあります。
解釈論
解釈論とは、既存の法律がどのように運用されているかを学ぶことです。
法律の多くは、抽象的な言葉で書かれているので、過去の判例を調べながら「実生活ではどのようなケースでどう適用される法律か」を解釈していくことで理解を深めていきます。
立法論
立法論とは、既存の法律が現在・将来の社会にとってふさわしいものなのかどうかを考えることです。
現行の法律がどうなっているかの解釈だけでなく、人々のより良い暮らしのために法律はどうあるべきかを新しい法律をつくることも視野に入れながら探求していきます。
法学部の授業・ゼミの内容
法学部の授業では、はじめはそもそも法律とは何か、何のためにあるのか、といった根本的なことを「法学入門」で学びます。
その上で、六法と呼ばれる憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・商法をはじめとした具体的な法律と、政治学や社会経済学など法と密接に関連する分野について学んでいきます。
たとえばゼミでは、判例に基づいてグループでレジュメを作って発表し、学生同士で質疑応答や議論などを行います。内容は、所属ゼミの教授の専門分野にもよりますが、インターネットや著作権問題、裁判員裁判や少年法の現状と課題点、死刑制度や時効制度の是非など、例を挙げてもキリがないほどの題材が考えられます。
法学部で身に付く力
法学部では、「リーガルマインド」を身に付けられます。リーガルマインドとは、物事を法的に考え、柔軟・的確に判断する能力のことです。
簡単にいうと、以下の2つの力を身に付けられます。
論理的に考える力
法学は唯一の正解がある学問ではありません。そのため法学部の授業では、多くの人に納得してもらえるよう「なぜこの物事に、このルールを適用するのか」という根拠を論理的に、筋道を立てて説明できるよう訓練がなされます。
相手を説得する力
法学部の授業では学生同士で議論する機会も多く、論理的に考える力や相手を説得する力を身に付けられます。自分の一方的な論理的説明だけでなく、相手の主張を理解しながら柔軟に物事を判断し最適な結論を出す力を付けられるのは法学部の大きな強みといえるでしょう。
法学部に向いている人
法学部に向いていると考えられる特徴を3つ挙げます。
社会への考えや理想がある
法学では絶対的な正解はありません。そのため客観的データを集めたり、人の話に耳を傾けたりすることが重要ですが、それにプラスして「このような考え方が認められる社会であってほしい」という自分の考えや理想を掲げられる人は向いているでしょう。
社会の出来事に広く関心がある
世の中に法律と切り離せる物事はありません。社会の変化は年々加速し、グローバルで物事を考えなければならない機会も増えてきました。まずは現代社会でどんなことが起きていて、どんな議論がなされているのか、国内外問わず興味を持つことが大切です。
コツコツと真面目に努力できる
法学は、抽象的な学問であり難解な部分が多くあります。過去の資料や判例、ときには国外の法律も踏まえながら分析して考察をまとめる必要があるので、コツコツと学べる勤勉さがある人の方が向いているでしょう。
法学部卒に人気の仕事
法学部で学んだ人に人気の職業を3つ紹介します。
裁判官・検事・弁護士などの法律家
裁判官・検事・弁護士といった法律家を志す人たちが一定数います。法学部を卒業後、法科大学院へ進学するなどして司法試験合格を目指します。
たとえば裁判官は、刑事・民事訴訟で当事者の主張を聞きながら真相を明白にし、法律に即した最終的な判決を下すことが仕事です。
検事になると、検察庁か法務省で働くことになります。
検察庁で働く場合、事件の被疑者への取り調べや被害者・目撃者への聞き込み、証拠品集めなどの捜査を通して、事件を起訴するかしないかを決定します。この公訴できる権利(公訴権)は、原則検事のみに与えられています。「公益の代表者」といって、いわゆる国民の代表者として犯罪と向き合う重要な仕事です。起訴となった場合は裁判に立ち合い、被告人の有罪を証明します。
一方、法務省で働く検事は、刑法や刑事訴訟法の検討・見直しを行ったり、刑務所や少年院などの矯正施設にいる受刑者への処遇が適正かどうかの監督・指導を行ったりすることが主な仕事です。
金融機関・メーカーなどの会社員
民間企業へ進む場合は、金融機関やメーカー・IT業界・商社など、さまざまな業界へ就職することになります。特に金融機関へ就職する人が多く、上位私立大学の法学部生の就職先では、国家公務員や地方上級公務員を除くと大半を占めます。
金融機関には、主に銀行・証券会社・保険会社があります。それぞれ営業や運用、分析系の職種として働くことが多いです。
たとえば、法人営業は企業の融資や資金調達をサポートします。そのほかファイナンシャルプランナーは個人の資産計画や運用のサポート、証券アナリストは企業の将来性や社会の動向を分析することが仕事です。
法学部で学んだリーガルマインドはどの業界においても役立つので、業界・職種を問わずさまざまな方面で活躍できるでしょう。
国家公務員や官公庁などの公務員
公務員への就職を志す人が多いことは、法学部の特徴の一つです。特に、教養試験と「専門試験」のある国家公務員と地方上級公務員などを目指す人が多いです。この専門試験では法律や政治に関するものが多いので、法学部で学ぶことは有意義な時間となるでしょう。
国家公務員は、主に「国家総合職」と「国家一般職」の2つに分類されます。
総合職は、政策の企画・立案、法律の制定・改正・運用指導、予算編成、国会対応など幅広い業務を行うことが特徴です。
一般職は、総合職が定めた政策を施行するために必要な事務処理を行うことが主な仕事です。一般的に3〜5年単位で部署異動があり、総合職と比べてより腰を据えて政策に向き合うことになるので、専門性を磨きやすい環境にあることが特徴です。
一方、地方上級公務員は「行政職の事務系」「建築、土木、電気などの技術系」「看護師、保育士、教員などの資格免許系」「警察官、消防士などの公安系」の4つに分類されます。
たとえば事務系だと、政策立案、予算、税金、都市開発、環境、福祉など行政のあらゆる業務に携わることになります。
※参考:国家公務員になるには?試験・進路・仕事内容・待遇など
大学の選び方(法律家を目指す場合)
法律家になるには、司法試験に合格する必要があります。まず司法試験の受験資格を得るためには、以下の2パターンあります。自分に合いそうな方法を選択してください。
- 司法予備試験を受けて合格する
- 法科大学院(ロースクール)を卒業する
法律家を目指す人は、以下のポイントで大学を選ぶといいでしょう。
司法試験合格率・合格者数が高い
司法試験に合格しなければ法律家にはなれないので、司法試験合格率や合格者数を調べましょう。ただ一般的に司法試験合格率が高い大学ほど偏差値も高い傾向にあります。
また司法試験対策のために、大学とは別に予備校に通っている学生もいます。自分の偏差値とのバランスを見ながら、予備校も視野に入れつつ大学を選びましょう。
環境、サポートが充実している大学
大学によっては、法律家を目指すコースが用意され所属する学生のみが受験できる講義があったり、大学内に法廷があり「模擬裁判」を行うことができたりします。そのほか、法律家になったOB・OGとの交流が多い大学であれば直接話を聞くことができる機会も期待できるでしょう。
行きたい法科大学院と協定があるか
法科大学院と法学部のつながりは大きいです。大学によっては法科大学院と連携しており、求められる成績を残せば一部試験が免除されたり、早期入学ができたりするところがあります。そのため、法律家を目指すと決めていれば、進学したい法科大学院を決めて協定を結んでいる大学を選ぶことをおすすめします。
大学の選び方(一般企業を目指す / やりたいことが決まっていない場合)
一般企業への就職を目指している人や、まだやりたいことが決まっていない人は場合は以下のポイントで大学を選ぶといいでしょう。
興味のある分野の講義やゼミがあるか
法学部といっても学科によって研究領域は大きく異なります。自分が少しでも興味があると感じる講義があるか、取り組んでみたい研究ができそうなゼミがあるかどうかを調べておきましょう。
まだ将来のイメージが湧かない人は、法務、労務、経理のほか「パラリーガル」という弁護士事務所での弁護士の補助といった職種から興味を探るといいかもしれません。
幅広い選択肢が取れるカリキュラムか
法律家になりたくて入学した人でさえ、学んでいるうちに将来の希望や学びたいことが変わることがあります。1年生では法学の基礎、2・3年生になって専門コースを選ぶといったカリキュラムの大学を選ぶといいでしょう。
大学の選び方(公務員を目指す場合)
公務員を目指す人は、以下のポイントで大学を選ぶといいでしょう。
自分が目指す公務員を多く輩出しているか
大学で公表されている公務員輩出数を確認しましょう。ただし、公務員には国家公務員や上級地方公務員のほか、学校教員や警察、消防官なども含まれます。自分のなりたい公務員の輩出数を調べるとなおよいです。
公務員講座などがあるか
専門試験等の対策をする「公務員講座」を設けている大学は、公務員試験合格に力を入れていると考えていいでしょう。大学によっては公務員インターン制度があり市役所などに行って実際の仕事を経験することができます。ほかにも、OB・OGの交流が盛んで直接話を聞ける機会を期待できるかもポイントです。
公務員になって役立つ授業・ゼミがあるか
大学によっては公務員になりたい人向けの授業が少なかったり、必修単位に含まれなかったりすることが少なくありません。たとえば「行政学」などの公務員になって役立つ授業を調べてカリキュラムに含まれているかチェックするとよいでしょう。
まとめ
法学は、世の中の少数派や社会的弱者にも寄り添い、社会に必要な政策を提案できる学問です。数ではない、あるべき世の中の状態を追求できるのは法学の魅力の一つです。社会をよりよくしていきたい人と思う人は、ぜひ法学部も検討してみてください。