世界標準入試システム「The Admissions Office」とは?特徴・メリット・導入大学を詳しく解説!

Edv Magazine 編集部

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世界標準入試システム「The Admissions Office」とは?特徴・メリット・導入大学を詳しく解説!

世界標準入試システムとして採用されている「The Admissions Office」をご存知でしょうか。

出願や入試に関わる手続きをオンラインで完結させ、ひとつのフォームから複数の大学に出願できる新しい入試システムです。海外の大学で導入の輪が広がるにつれて、日本でも少しずつ参画する大学が増えてきました。

今回は、「The Admissions Office」の特徴や、利用するメリット、導入している大学について幅広く解説していきます。

The Admissions Officeとは

The Admissions Office(TAO)とは、学生がひとつのフォームから複数の大学にオンライン出願できる入試システムのことを指します。

世界各国の大学で採用されているプラットフォームなので海外の大学にも出願できるほか、大学ごとに異なる入試形式や出願方法に影響されることなく、オンラインアプリケーション上で一元管理できます。

願書提出の手続きだけでなく、選考書類の提出から合格発表まで、入試に関わるさまざまな手続きをオンライン上で行えるという点が評価され、日本国内でもThe Admissions Officeを導入する大学が増えつつあります。

日本の大学入試制度の問題点

まずは、現在の日本の大学入試制度の問題点について解説します。

大学・学部ごとに入試方式が異なる

現行の入試制度では、大学や学部ごとに入試方法が異なるため、出願時に必要な書類も都度変えなければいけません。

大学入学共通テスト、一般選抜、総合型選抜(AO入試)、学校推薦型選抜(推薦入試)など入試システムが多様なのは利点でもありますが、一方で同じ大学、学部に出願する場合でも毎回出願書類が必要になるなど、書類の準備に多くの時間を費やすという欠点があります。

個別に出願する必要がある

大学ごとに個別の出願をする必要があるのも、現行制度の問題点といえるでしょう。氏名、住所、在籍校、証明写真など、志望校ごとに変わらない情報であっても都度記入し、志望校の分だけ在籍証明書を取り寄せる必要があるなど、手間が多いのも事実です。

受験校が多いほど負担になるほか、学校ごとの願書を大量に取り寄せなければならないデメリットも発生しています。

日本語でしか出願できない学校が多い

日本語でしか出願書類を扱っていない大学が多く、留学生や日本に住んでいる外国籍学生にとって大きなデメリットとなっています。日本の大学での学びを検討しても、出願書類のややこしさに諦めてしまう人も少なくありません。

留学生を受け入れている大学や学部ですら、英語での提出に対応しているのは一部の書類だけであったり、郵便でしか出願を受け付けていなかったりするケースもあります。

Web出願でも書類郵送が必要なことがある

近年はWebでの出願を受け付けている大学が増加していますが、一部郵送で書類を提出しなければいけない場合があります。特に総合型選抜(AO入試)の事前課題や、学校が発行する推薦書、調査書などは原本提出を求める大学が多いため、出願の際にはしっかりチェックしておきましょう。

Web出願は、願書を手書きで作成する手間が減る、記入漏れがあると次のページに進めない設定にすることで書類不備の対策ができる、Web出願により受験料の割引が適用されるなどメリットが多いものの、「大学ごとに出願しなければいけない」「学部ごとに出願方法が分かれている」など、現行大学入試制度の根本的な解決には至っていません。

海外からの受験者を取りこぼしている

海外ではThe Admissions Officeシステムを利用したオンライン出願が一般的であるのに対し、日本は手書き書類の郵送出願が一般的であるため、海外の優秀な学生にとって「日本の大学へ進学すること」自体にハードルが高まってしまいます。国ではなく勉強したい学問を中心に進学先を選ぶ場合でも、日本の大学が選択肢として挙がりづらく、興味を持ったとしても出願を諦めてしまいがちです。

海外からの受験者を取りこぼしてしまうことは大学にとっての損失でもあり、共に学ぶ日本人学生や日本社会にとっての痛手でもあります。

The Admissions Officeを利用するメリット

では実際に、The Admissions Officeを利用するメリットを、受験生側、大学側両方の視点から解説していきます。

受験生にとってのメリット

受験生にとっての主なメリットは、以下の6つです。

Web出願のため書類管理の手間を減らせる

The Admissions Officeはオンライン上で完結する入試システムのため、書類管理の手間を減らせるのが大きなメリットです。

複数の大学に出願しても、同じ大学の異なる学部に出願しても、1つのプラットフォームから全てを管理でき、どの大学に願書を提出しているのか、どの学部の願書締切が何日なのか、総合的に管理できます。

手書きで願書を作成したり、証明写真を切り分けて貼付したりする必要もなく、受験直前の忙しい時期であっても勉強に費やす時間を削らずに済みます。ついうっかり願書を出し忘れてしまうなど、基本的なミスにも気づきやすくなるでしょう。

出願から合否までの全てを一元管理できる

出願手続き、選考書類の提出、合格発表までの全てを一元管理できるのも、The Admissions Officeのメリットです。

書類を郵送しないスムーズな出願ができる、総合型選抜の事前課題をインターネット上で提出できる、学校が発行する推薦書や調査書もPDFで送れるなど、利便性が高いのが特徴です。

合格発表もオンラインで閲覧できるので、受験のために都心のホテルにいるのに合格通知が地方の実家に郵送されたり、合否確認のために大学まで出向いたりする必要もありません。インターネット環境さえあれば、自分の受験に関する最新情報を常にチェックできるようになります。

日本語・英語の両方で出願できる

日本語と英語の両方で出願できるため、海外の学生にも豊富なチャンスが与えられます。日本語が堪能でないために複雑な出願書類を用意できなかったり、書類不備で無効扱いされてしまったりするリスクを低減できますので、受験の幅が広がります。

国境を越えた出願ができる

The Admissions Officeは既に世界各国の大学入試制度において採用されているシステムなので、日本に限らず国境を越えた出願が可能です。日本の学生が海外の大学に出願する、海外の学生が日本の大学に出願するのはもちろん、日本の大学と海外の大学を併願受験したいときにも役立ちます。

グローバル化した入試システムは、世界を視野に入れた志望校選びを叶えます

国際郵便停止など万が一のトラブルに強い

オンラインによる手続きは、郵便の遅延や停止など万が一のトラブルに強いのも特徴です。

台風や大雪などの天候状況、テロ特別対策、年末年始など繁忙期に応じて遅延したり、配送ミスや配送漏れが起きたりすることもありません。災害、紛争、感染症などの影響も受けず、いつでも安定した出願環境が整っています

特に国際郵便は国内でのやりとりと比較して遅延がミスが起きやすいだけでなく郵送料も高くなりますので、オンラインで出願できるメリットは大きいといえるでしょう。

総合型選抜(AO入試)と相性がいい

The Admissions Officeは出願や選考前の段階で各種資料を提出できるため、総合型選抜(AO入試)と非常に相性がいいのも特徴です。

ペーパー試験による知識偏重の入試形式だけでなく、小論文で論理的思考力をみたり、課外活動での主体性や協調性を参考にしたりする場合、願書に加えて各種資料の提出を求めることで総合的な判断がしやすくなります。スポーツや音楽活動の実績、外国語能力試験の結果を提出することで、アピールの場も広がります。

大学にとってのメリット

大学にとっての主なメリットは、以下の4つです。

志願者が増える

書類準備の手間を削るために志望校を絞り込んでいた学生や、遠方・海外からの学生による出願の増加が期待できます。

近年では、少子化の影響で少なくなっている学生数と大学数のバランスが崩れ、「選ばなければどこかの大学には入れる」時代に突入しつつあります。一部の大学に人気が集中する傾向が高まり、学生の数や質を維持するのが難しくなっているなかで、The Admissions Office導入によって志願者数向上を見込めるでしょう。

海外からも優秀な学生を集めやすい

日本語でも英語でも出願できること、複数の大学にオンライン上で出願できることがメリットとなり、海外からも優秀な学生を集めやすくなります

優秀な学生を確保できれば多様化した学びの幅を広げやすく、卒業後の活躍も期待できるでしょう。大学受験市場において人気を高めるだけでなく、高等教育機関としてのブランディング向上にも寄与します。

出願フォームを自由に作りやすい

テキストフォーム、選択フォーム、ファイルアップロードなど、出願フォームを自由に作れるのも魅力です。

学部ごとに提出書類が違ったり、選抜方法によって特殊な添付資料が必要であったりする場合でも、簡単にカスタマイズできます。年度ごとに入試システムを見直して出願に必要な項目をアレンジする場合でも、一からシステムを組みなおす必要がありません。

システムに投資する金額を抑えられる

The Admissions Officeシステムを利用することで、Web出願用のプラットフォーム開発にかかる金額を抑えられます。

学校単位で独自にプラットフォームを開発するためには、莫大なシステム開発料がかかります。学部ごとや選抜方法ごとに求める出願内容が違ったり、年度ごとに都度更新したりする場合、その金額はどんどん膨れ上がっていくでしょう。

すでに利用されているThe Admissions Officeのシステムを使えば開発コストを削減でき、本来大学がお金をかけたい研究開発や講義、図書などの設備に投資しやすくなります

The Admissions Officeを導入している大学

日本国内でThe Admissions Officeを導入している大学をチェックしていきましょう。

早稲田大学

2020年9月より、早稲田大学がThe Admissions Officeを利用した志願者募集を開始します。次年度以降、対象の学部を増やすことも検討されていますので、今後の動きをチェックしておきましょう。

国際教養学部AO入試

早稲田大学国際教養学部のAO入試では、国内選考、国外選考共にThe Admissions Officeの導入を予定しています。出身高校の教育課程が日本の課程か海外の課程かによって分かれますので、出願時に間違えないよう注意が必要です。

社会科学部TAISI Admission

早稲田大学社会科学部TAISI AdmissionでもThe Admissions Officeの導入を開始します。TAISI Admissionでは、「ソーシャルイノベーションプログラム」として国際化と実践的カリキュラムの追求を図り、英語による学位取得を目指せます。

【大学院】国際コミュニケーション研究科

早稲田大学大学院の国際コミュニケーション研究科は、多言コミュニケーション能力を備えたグローバル人材の輩出を目指しています。入試要項が英語でのみ用意されるなど、出願の段階で一定の英語力を要します。

芝浦工業大学

芝浦工業大学は、サービス開始当初からThe Admissions Officeを導入している大学です。理工学を専門に学び、持続型社会の実現のために諸問題を解決できる人材を育てます。

工学部先進国際課程

2020年10月から芝浦工業大学工学部に解説される新しい教育課程です。これまで卒業研究のみで実施していた「研究プロジェクトを通じた能動的学習」を初年度から取り入れ、さまざまな研究室で最先端の学びを深めます。

【大学院】理工学研究科(修士課程)

大学院の理工学研究科においても、The Admissions Officeが導入されています。電気電子情報工学、材料工学、応用化学、機械工学、建設工学、システム理工学、国際理工学の7つの専門分野が設置されています。

【大学院】理工学研究科(博士課程)

修士課程同様、博士課程でもThe Admissions Officeが導入されています。地域環境システムや機能制御システムについて研究できます。

京都先端科学大学

京都先端科学大学は、2020年に実施される入試からThe Admissions Officeを導入します。絶えず変動するグローバル社会に適応し、多様な言語を用いて問題解決に粘り強く向き変える人材の輩出を目指しています。

外国人学生入試

海外の優秀な学生を確保することを目的とし、外国人学生入試にThe Admissions Officeを使用します。国境を超えた学びの実現に寄与します。

【大学院】総合研究大学院大学 

総合研究大学院大学は、大学共同利用機関が有する優れた人材と研究環境を活用し、博士課程の教育を行う国立の大学院です。卒業後は研究職や専門職として働く人が多く、各分野の最先端研究者による指導が受けられます。総合研究大学院大学では現在、奨学金の申請においてThe Admissions Officeを活用しています。

まとめ

社会のグローバル化に伴い、大学での学びや入試制度も変わってきています。海外での大学への進学を検討している人や、外国語で専門分野を学んでみたい人、留学生との交流を深めたい人は、The Admissions Officeを始めとする国際的な取り組みに積極的な大学を選んでみるとよさそうですね。

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