21世紀に突入してから、テクノロジー(情報技術や科学技術)はめざましい進歩を遂げています。AppleがiPhoneを販売したのが2007年ですから、スマートフォンの歴史ひとつとっても驚きのスピードで進歩していることが分かります。またテクノロジーの普及にともない、フリーランスや副業、テレワークなど働き方も多様化してきました。
今回は、21世紀(2000年代)以降に誕生した新しい仕事を紹介します。皆さんに馴染みのあるあの職業も実は最近誕生したばかりかも?またこの先どんな新しい仕事が生まれるか想像しながら目を通してみましょう。
新しい仕事が生まれる背景
まずはなぜ時代に合わせて新しい仕事が生まれるのか、その背景を考えてみます。
AIやロボットが発展し、仕事の幅が増えた
AIやロボットに関する技術が発展したことで、直接的に関連する専門職はもちろん、その周辺にある仕事も増えていきました。
ロボットを組み立て制御するエンジニアやプログラマー、機能やビジュアルを洗練するデザイナーなどのニーズが高まっています。AIやロボットの発展・普及によって「人の仕事が奪われる」といわれることもありますが、実は新しく生まれる仕事もあるのです。
働き方改革によって、副業ニーズが増えた
「働き方改革」が2019年4月に施行され、労働時間・勤務日数・雇用形態について見直す企業が増えました。また2020年春以降は新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークや在宅勤務など働き方も多様になっています。
これらの変化によって、「生涯1つの会社に務める」という価値観はもはや過去のものになり、「転職・副業・フリーランス」が当たり前の時代です。特に今の会社に務めながら、空いた時間で副収入を得る「副業」のニーズは大きく拡大。収入を得ることが目的の人もいれば、将来のキャリアを見越したスキルアップ、地域や社会への貢献など目的は様々です。
ワークライフバランスを重視する人が増えた
若い世代を中心に、結婚・妊娠・出産・育児・介護との両立や、仕事だけでなくプライベートの充実を重視する人が増えています。つまり「ワーク(=仕事)」と「ライフ(=日常の生活)」をいかにバランス(時間配分)させるかが注目されているのです。
「ブラック企業」や「過労」といった働き方は避けられるようになり、企業も人を集めるためには「社員が仕事だけでなくプライベートも充実させる」ことに配慮する必要が出てきています。そのため必然的に、これまでにはなかった仕事や働き方が生まれるようになっているのです。
21世紀に生まれた新しい仕事11選
ここからは、21世紀に生まれた新しい仕事をいくつか紹介していきます。中高生に人気の職業も多数入っているので、進路選択の参考にもしてみてください。
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①YouTuber
YouTuberは、制作した動画コンテンツをYouTubeチャンネルで公開し、広告収入や視聴者からの投げ銭(スーパーチャット)で利益を得る仕事です。数十万規模のファンを抱えたり、特定ジャンルでコアファンを獲得しているYouTuberであれば、企業とのタイアップやコラボレーションで収入を得るケースもあります。
日常を投稿する「Vlog(ブイログ)」、なにかのやり方を解説する「ハウツー系」、様々な企画に挑戦する「バラエティ系」など様々なジャンルがあります。
スマホやパソコンさえあれば、10代からでも始められる手軽さがある職業です。「はじめしゃちょー」や「HIKAKIN」など、億単位の年収を稼いでいる人気YouTuberも少なくないことから憧れを抱く人も多く、高校生の将来の夢ランキングでは常に上位にランクインしています。
ちなみにYouTubeは2005年にリリースされました。日本で初めて投稿されたのは、2005年6月27日公開の「First time jump on wakeboard ウエークボード」という、わずか4秒の動画です。
②VTuber
VTuber(バーチャルYouTuber)は、2Dや3Dのキャラクターを使った動画コンテンツを制作・配信する仕事です。YouTuberの1ジャンルとされていますが、多くのYouTuberが顔出ししているのとは異なり、あくまで仮想のキャラクターやアバターが登場しています。自分の容姿にとらわれず、声だけで出演できる(声すら機械で合成することも可能)ことが心理的なハードルを下げています。また最近はYouTube以外の動画配信プラットフォームで活躍するVTuberも増えています。
↓こちらは日本最初のVTuer「キズナアイ」
収益源はYouTuberと同様に、広告収入や投げ銭、企業タイアップが中心です。VTuberも年収0円から数億円までと幅広く、キャラクター生成や音声合成の技術が日々進化し、使いやすくなっていることから、今後ますます新規参入が増えていくことが予想されています。
③eスポーツプレイヤー
eスポーツプレイヤーは、対戦型ゲームのスキルを習熟し、大会での賞金やメディア出演で収入を得る仕事です。最近では、企業とスポンサー契約を結ぶ人気プレイヤーも出てきています。
扱うゲームのジャンルは幅広く、バトルアクションゲームからサッカーや野球などのスポーツゲーム、リズムゲームなどさまざまです。大会によっては賞金が数千万円にのぼることもあり、世界大会となると億単位の賞金が出ることもあります。
eスポーツの人気上昇にともない、大会やテレビ番組などで実況や解説を行う、eスポーツ専門のアナウンサーなども出てきています。
④ゲーム実況者
ゲーム実況者は、自分がプレイしているゲーム画面と実況の様子をあわせた動画を、動画配信サイトにアップして広告収入やタイアップで収益を得る仕事です。
流行りのゲームや昔懐かしいゲーム、自分が得意とするジャンルのゲームなど、ゲーム実況者によってカラーはさまざまです。1人でプレイしている様子を動画にする人が大多数ですが、なかには友達と複数人で実況プレイしている様子をアップしている人もいます。
ちなみに1億人以上のYouTubeチャンネル登録者数をもつ、スウェーデンのゲーム実況者・ピューディパイは、YouTubeだけで年間数十億稼いでいるとされています。
⑤暗号資産トレーダー
暗号資産トレーダーは、暗号資産(旧 仮想通貨)取引をしながら運用利益で収入を得る仕事です。かつては株トレーダーやFXトレーダーが主流であったところに暗号資産が加わったことで、新たなチャンスが広がりました。
例えば最も有名な「ビットコイン」は、2011年頃「1BTC(ビットコインの通貨単位)=1,000〜3,000円」ほどでしたが、2021年現在は「1BTC=700万円以上」と高騰しています。
「NFT」や「メタバース」などの注目が集まる中、今後ますます暗号資産の需要は高くなり、投資家も増えていくことでしょう。一見、高いリターンに目を奪われて手を出したくなる人も多いでしょうが、得している人の何倍も損失を出している人がいるのが投資の常です。
個人で始めることに抵抗がある人は、まずは証券会社や暗号資産関連の企業に就職して知識と経験を積むのが得策かもしれません。
⑥VRアーティスト
VRアーティストは、バーチャル(VR)空間内で立体的(3D)なイラストやアニメーション、絵画などを描く仕事です。VR用のヘッドセットを着用し、コントローラーを使いながら作品を制作します。
VRのプラットフォームで作品を展示することもあれば、イベントやライブで表現することもあります。最近では、VRアートが売買されるようにもなってきています。
⑦ARデザイナー
ARデザイナーは、拡張現実(AR)上で表現するイラストや映像を制作する仕事です。一見するとVRアーティストに似ていますが、ARは実在する空間に物やキャラクターを投影させる点が異なります。
ARデザインの代表例として、現実世界にまるでキャラクターがいるような感覚を生み出した「ポケモンGO」や、人にカメラを向けるだけでファッションアイテムの仮想試着ができるシステムなどが有名です。広告・プロモーションからエンターテインメントまで、幅広く活用されています。
⑧遠隔ドクター
遠隔ドクターは、映像と音声をリアルタイムで中継しながら遠隔地にいる患者の診察をおこなう医師です。まだ事例は少ないもののロボットを遠隔操作して手術をすることもあり、今後さらなる技術革新がおこなわれていく分野のひとつです。
医師の少ない離島・過疎地であっても高度な医療を受けられることや、医師の人手不足を解消するための手段としても注目が集まっています。少子高齢化社会を支える重要な職業として、今後遠隔ドクターを目指す人も増えていくことが考えられます。
⑨ドローンパイロット
ドローンパイロットは、ドローンを操縦して特殊な作業を行ったり、映像や写真を撮影する仕事です。リモコンで操縦することもあれば、あらかじめプログラミングしておき自動操縦することもあります。農薬散布、山間地での荷物運搬、災害現場での救助活動など、人手で行うにはリスクやコストがかかる分野での活用が期待されています。
また東京オリンピック開会式での演出に使われたように、エンターテインメントでの活用にも注目が集まっています。
なおドローンの種類や用途によっては、許可や検定資格が必要になることもあります。
⑩ゲストハウスオーナー
ゲストハウスオーナーは、素泊まりやB&Bに特化したゲストハウスを経営する仕事です。Airbnbのように自宅の空きスペースを宿泊者に提供するケースもあります。ホテルや旅館よりも比較的取り組みやすいことや、海外からの旅行者やバックパッカーによるニーズが高いことから、全国各地でゲストハウスが増えています。
⑪フードデリバリー配達員
フードデリバリー配達員は、ファーストフードやレストラン、居酒屋などの飲食店、テイクアウト専門店の料理を個人やオフィスに届ける仕事です。新型コロナウイルス感染症の流行による巣ごもりニーズや、副業ニーズの拡大とともに話題になりました。実際に街なかで『UberEats』や『menu』などの配達員を見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
自転車と専用のバッグさえあればスキマ時間を有効活用しながらスポットで働ける仕事として人気であり、請け負うタイミングや件数を自分の都合に合わせて自由に調整可能です。
「新しい仕事」に就くためには
最後に、今注目されている「新しい仕事」に就くために、今のうちから準備できることを紹介します。時代ごとのニーズやトレンドに合った職業に就きたい人は、参考にしてみましょう。
最新技術を学べる大学や専門学校に進学する
テクノロジーや最先端分野などに興味がある人は、最新技術を学べる大学や専門学校をピックアップして、進学先を決めるのがおすすめです。VRやARについて学べる学校や、教授が最先端分野の研究をしている大学であれば、「新しい仕事」に就く進路も見つけやすくなるでしょう。
高校生のうちから興味のある仕事にチャレンジしてみる
新しい仕事のなかには、高校生でも始められる仕事がたくさんあります。YouTuberやゲーム実況などはその代表格であり、小学生から高齢者まで門戸が広いことでも有名です。
高校生ではまだ挑戦できない仕事に就きたい場合も、あらかじめ働き方に関する情報収集をしてみるとよいでしょう。例えば、遠隔ドクターになりたい場合、医学部がある大学はもちろん、遠隔医療や新しい分野に積極的な大学をネットで調べてみましょう。
基本的なコミュニケーション能力やスケジュール管理能力を磨く
どんな仕事であっても、基本的なコミュニケーション能力やスケジュール管理能力が必要なことに変わりはありません。10年後、20年後さらに新しい仕事が生まれていたとしても、丁寧なコミュニケーションができ、円滑に仕事を進められるる人はいつの時代も重宝されるでしょう。
コミュニケーションはふだんの生活から磨いていくことができます。例えば、挨拶。学校はもちろん、お店での買い物のときに「こんにちは」「ありがとうございます」といった言葉を交わすようにするだけでも、少しずつコミュニケーション能力が培われていきます。
まとめ
新しい仕事には、これまでなかった働き方や最新技術が反映されています。開発が進むにつれ、今後思いもよらなかったような仕事が生まれることもあるでしょう。調べるだけでも、選択肢の多さにわくわくすることもありそうです。昔からある仕事も新しい仕事も幅広く調べ、自分がどんな職業に就きたいか、今一度考え直してみるのはいかがでしょうか。