進学先や就職先など、将来について考えることも多い高校生。新型コロナウイルスの影響からネット社会はますます進み、働き方にもニューノーマルが求められています。
時代と共に変化する働き方、そして働くことに対する考え方。重要な進路を決定するにあたり、高校生も働き方について早いうちからよく知っておく必要があります。この記事では、新時代を生きる高校生におすすめの、働き方に関する本を紹介します。
コロナ禍において働き方はどう変わった?
未だ世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症。日本でも2020年2月頃より、徐々に感染拡大が深刻化し、1年経った現在も私たちの生活は以前のような「当たり前」が取り戻せていません。
「コロナ禍」において、新たな生活様式、いわゆる「ニューノーマル」が日常に求められていますが、働き方についてはどう変わったのでしょうか。
在宅で仕事をする人(テレワーク)の増加
働き方における最も大きな変化ともいえるのが、在宅ワーク(テレワーク)の増加です。IT企業では一部実施されていたテレワークですが、コロナ禍以前は「在宅=フリーランス」という印象も強く、一般企業で導入している事例はあまりありませんでした。
しかし、通勤・帰宅ラッシュを避ける、オフィス内での人々の接触や密を避けるなど、さまざまな理由から、テレワークを実施する企業が急増。「出社は週2回で残りは在宅」「ほぼテレワーク中心で、ミーティングなどはオンラインツールを利用」など、会社の規模や業種、担当部署などにより、多様な働き方が生まれています。
オンラインミーティングの浸透
前述の通り、テレワークの浸透によってオンラインミーティングも増加しています。「Zoom」などのWeb会議ツールを利用することで、1か所に集まらなくても、またメンバーが遠方にいてもミーティングが可能となりました。
オンラインミーティングのメリットは大きく3点です。
- 会議における無駄が省けること
- 交通費や移動時間を削減できること
- 地方在住でも都心の企業と仕事できる可能性があること
対面ミーティングの場合、目的のない会話が繰り広げられたり、議題からの脱線などがしばしば起こります。しかし、オンラインミーティングは時間や目的が明確に設定されていることがほとんどなので、本題について集中して話し合いを行い、話が終わったらすぐにミーティングを終了させることができます。
また、社内はもちろん社外の方ともオンラインツールを利用したミーティングや面接、商談が増加しています。これまでは電車や車で取引先や商談先に足を運ぶのが当然でしたが、オンラインミーティングの普及により、時間や交通費の削減が可能となりました。
さらに、地方企業に勤めながら副業したい人や地方在住のフリーランスは、オンラインミーティングはもちろん「Slack」などのビジネスチャットツールを活用し、都心や地方都市の企業との仕事の幅を広げています。
電子契約書の普及
オンラインを活用した仕事の在り方のなかで、電子契約書も徐々に広まってきています。アメリカを中心に海外では導入事例の多い電子契約書も、「ハンコ文化」の強い日本ではこれまであまり受け入れられていない状況でした。「書面を郵送し、署名・捺印して返送する」「メールで送った契約書を印刷、署名・捺印しPDF化してメールで返送」など、非生産的な事務仕事が膨大にあったのです。
しかし、テレワークやオンライン面接などの増加により、対面機会が大幅に減少。並行して業務効率化やコスト削減を図る動きが見られるようになり、日本でも電子契約書を利用する企業が増加しています。電子契約書は、メールやチャットに届いた電子データの内容を確認し、電子署名・捺印などをオンラインで完結するもの。もちろん契約の効力は書面と同等です。「クラウドサイン」や「DocuSign(ドキュサイン)」など、専用の電子契約書サービスも普及しつつあります。
古くからの慣習が見直されている
長時間の会議、ハンコ文化、残業の常態化や「飲みニケーション」の重視など、古くからの「当たり前」は、Withコロナ、アフターコロナの時代には「古き悪しき慣習」だと認識されつつあります。
働き方だけでなく、生き方そのものが見直されている今こそ、古くからの体制を大きく変え、新たな時代にふさわしい働き方を取り入れるチャンスかもしれません。
高校生も働き方を知る・考えることが大切
この1年で働き方は大きく変わりましたが、高校生は「まだ先のこと」「今から考える必要はない」と思っているかもしれません。
なぜ高校生のうちから働き方を知ること、働き方について考えることが必要なのでしょうか。その意義を説明します。
高校生が働き方を考える意味
高校3年生ならば最短で1年後、高校1年生で大学進学を考えている人でも6年後には社会に出ることになります。社会に出る前にはどういった仕事につきたいかを考え、そのための大学、学科を選択する必要もあるので、早いうちから働き方について考え、知識を得ることが大切です。
つまり、働き方を知る・考えるというのは、自分の人生について考えることに直結しているのです。「なんとなく自分のレベルや得意科目に合った大学に進学して、大学3年生になったからなんとなく就職活動をする」のも悪いことではありませんが、高校生のうちからさまざまな職業や現代の働き方について知っておくことで、自分の進みたい道や自分に合った働き方が見つけやすくなります。
働き方を学ぶ上で本を読む理由は?
では具体的にどう働き方を学べばいいのか、疑問に思う人も多いでしょう。最も有効なのは本を読むことです。
現代はインターネットでも多くの情報を収集できますが、なぜネットでのリサーチよりも本を読むことをおすすめするのか、その理由は3つあります。
広い視野が持てる
進学、就職など今後の進路で迷ったり悩んだりしたとき、働き方に関する本を読むことで広い視野を持つことができます。大人に近づいた高校生といっても、職業や働き方に関しては、自分の家族や知り合いのことしか知らない場合がほとんど。
本を読んで、それまで知らなかった職業や世界に触れることで、「こんな職業もあるんだ」「こういった働き方がしたい」と広い視野を持て、将来に向けた努力や挑戦の仕方も変わってきます。
疑問や悩みを解決できる
本を読むことで、今働き方について抱いている疑問や悩みを解決するヒントを得ることもできます。
もちろんインターネットでもピンポイントで自分の悩みについて答えを知ることができるでしょう。今持っている疑問・悩みをすぐに解決できる点でインターネットは優れていますが、そもそも就業経験がゼロに近い高校生は「どのようなキーワードで検索すればいいのか」「書いてある情報に信憑性があるのか」という判断がつきません。
一方、本はその分野に精通した著者が広く深くテーマを掘り下げるので、自分が知りたいと思っていた以上の情報を収集することができます。興味のない業種や知らなかった職業などにも触れることができ、働くことの視野が広がります。
他者の悩みを知り共感できる
働き方の本には、他者の悩みや苦労についても書かれていることが多いです。自分と同じような悩みを持っている人に共感することで「悩んでいるのは私だけじゃないんだ」と思うことができます。
自分が抱いていない悩みやまだ経験していない苦労を知ることも、他者の気持ちに寄り添えるという点でプラスになります。
思春期真っ只中の高校生は、特に親や先生など、大人に悩みを相談するのが苦手な年頃。進路のことで壁にぶつかっても、1人で抱え込んでしまうことも少なくありません。読書を通して他者の苦労や悩みに共感する、寄り添うことができれば、少なからず心も解放されるでしょう。また、相手の気持ちを想像する力も養うことができ、良い人間関係を築く糧にもなります。
高校生はこれを読もう!働き方に関するおすすめの本8選
働き方に関する素晴らしい書籍は多くありますが、そのなかでも特に高校生の皆さんに読んで欲しい、おすすめの8冊をご紹介します。
1. 働く理由 99の名言に学ぶシゴト論(戸田智弘)
黒澤明監督や松坂大輔、ヘレンケラーや織田信長まで、古今東西の多くの著名人の「働くことにまつわる名言」を紹介する戸田智弘さんの『働く理由 99の名言に学ぶシゴト論』。
99個の名言とともに、仕事、働くことに対する悩みを解決するヒントが隠されている、15万部突破のベストセラー本です。続編や「学び続ける理由99」など、「働く理由シリーズ」はどれも高い人気を誇り、「読むと勇気がもらえる」「名言と共に働くことへの考え方が学べてわかりやすく、面白い」と年代を問わず親しまれています。
2. 夢をかなえるゾウ(水野敬也)
ベストセラー作家、水野敬也さん著の『夢をかなえるゾウ』。
174万部を売り上げ、2008年にはテレビドラマ化されました。この本は、関西弁を喋る神様・ガネーシャが、ダメサラリーマンを成功に導くエンターテイメント小説です。
読み物として楽しみながら、成功法や人生について学ぶことができるので、高校生の皆さんも勉強の合間や通学時間に手軽に読むことができます。2020年には生き方や仕事、お金について書かれた続編3冊も出版されています。
3. 革命のファンファーレ(西野亮廣)
お笑い芸人として活躍し、昨今は絵本作家としても名を馳せている西野亮廣さんによる『革命のファンファーレ』。
働き方に対する考え方だけでなく、時代の流れやお金の動き、ネット社会の今とこれからなどが書かれています。
ネットビジネスや副業を検討している人に特に勧められている本ですが、内容がスッキリとまとめられていて若い世代でも読みやすいこと、著者が現代的な働き方や戦略で成功していることから、ぜひ高校生の皆さんにも読んでほしい1冊です。
4. 働き方ー「なぜ働くのか」「いかに働くのか」(稲盛和夫)
京セラを設立した稲盛和夫さんが2009年に書いた『働き方―「なぜ働くのか」「いかに働くのか」』。
「1人でも多くの方々が『働く』ことの意義を深め、幸福で素晴らしい人生を送ってほしい」という著者の願いが込められた1冊で、幅広い世代、立場の方に長年支持されています。
働くうえで必要な考え方、仕事が好きになる考え方など、稲盛さんの思いが多く詰め込まれています。少し古い考え方も記されていますが、時代が変わっても就活や転職、昇進時など、多くの人がさまざまなタイミングで読み、パワーをもらえる本です。
5. ビジュアル 働き方改革(岡崎淳一)
2019年に出版された『ビジュアル 働き方改革』では、当時安倍晋三首相が掲げた「働き方改革」の概要を、実際に働き方改革に携わった著者が図解とともにわかりやすく解説しています。
労働時間や賃金などの新制度はもちろん、新たな働き方実現のために必要なのは何かということも記されており、働き方改革について知ることができると同時に、新制度を導入している企業を見極める力も身に付けることができます。
6. 大人になったらしたい仕事 「好き」を仕事にした35人の先輩たち(朝日学生新聞社)
『大人になったらしたい仕事 「好き」を仕事にした35人の先輩たち』は、朝日中高生新聞にて連載されていた「夢ナビ!お仕事リポート」の抜粋本です。
この連載では働く大人に、なぜその仕事に就こうと思ったのか、どうやって就いたのか、仕事の内容や楽しさ、苦労などをインタビュー。
そのなかから「好き」を生かして仕事に就いた35名のお話を掲載しています。高校生の皆さんがこの先どんな仕事に就くのか……。多くの人生の先輩のエピソードが、進路を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
7. 大学選びのための職業・進路案内 夢が見つかる533職業(東進ブックス)
東進ブックスより刊行された『大学選びのための職業・進路案内 夢が見つかる533職業』では、その名の通り553種類の職業を紹介。志望校を職業から選ぶという、新たな進路決定スタイルを提案しています。
誰もが知っているようなメジャーな職業から「こんな仕事もあるの?」というような職業まで、さまざまな業種や働き方が載っており、職業や志望校の幅が広がる1冊です。
8. LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略(リンダ・グラットン)
2016年の刊行以来売れ続け、35万部を突破しているリンダ・グラットンの『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』。
平均寿命も年々上がり「人生100年時代」といわれるなか、長寿社会をどう楽しむかが記された1冊です。
この本では働き方はもちろん、学ぶこと、結婚や子育てのことなど、人生におけるさまざまなビジョンが描かれており、高校生が今知り、実践するとよい内容もたっぷり含まれています。進学や就職といった進路はもちろんですが、その先の長い人生をいかによく生き抜くかのヒントを、ここから得てみてはどうでしょうか。
まとめ
働き方には変わらないものや時代と共に変化を遂げるもの、新たに生まれるものも存在します。働き方や生き方に関する本を読むことは、進路やその先の将来を考えるきっかけとなり、先人たちの思いは、迷ったときに道を示してくれたり、背中を押したりしてくれます。ぜひたくさんの本を読んで、よりよい未来へ進んでいきましょう。