文系の人気学部のひとつ経済学部。しかし「経済学部卒の就職先って何があるんだろう?」「卒業後の進路がイメージできない」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
この記事では、経済学部におすすめの業界や企業、職種を紹介します。また在学中に取得しておくと就職活動にも役立つ資格や検定についても解説します。ぜひ経済学部への進学を候補に入れている人は参考にしてみてください。
経済学部とは
経済学とは、個人の消費行動や企業の生産活動、国・地域レベルの経済活動などを対象に、経済のメカニズムを探求する学問です。経済に関する歴史や思想を学ぶ学科もあります。
経済学部卒に人気の業界
経済学部を卒業した学生が就職する代表的な業界をピックアップして紹介します。
金融
銀行や証券、投資銀行などの金融系はもっとも人気な業界の一つです。ミクロとマクロの両視点でお金の流れを学んでいる経済学部生には相性がいいといえます。
企業例
- メガバンク(例:三井UFJ銀行、三井信託銀行、みずほ銀行)
- 地方銀行(例:横浜銀行、静岡銀行、千葉銀行)
- 証券会社(例:野村証券、SMBC日興証券)
- 政府系金融(例:日本政策金融公庫、商工中金)
- 外資系金融機関(例:ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー)
- ベンチャーキャピタル(例:ジャフコ、グロービス)
商社
商社は、国内外の商品・サービスを取り扱い売買する業態です。三菱商事の「カップラーメンからロケットまで」という有名な言葉の通り、商材は幅広く、素材や原料から製品やサービスまで、商社が扱わないものはないといわれています。貿易や流通に関する知識が求められるため、国や地域の経済活動について学んでいる経済学部生から人気の業界です。
企業例
- 総合商社(例:三菱商事、伊藤忠商事、丸紅、住友商事)
- 専門商社(例:アイリスオーヤマ、三洋貿易、ワールド)
メーカー
自動車・鉄鋼・精密機器・食品・ゲームなど、ものづくりを行うのがメーカーです。自社で商品企画から製造まで一貫して行うメーカーもあれば、特定素材の生産や加工・組み立てに特化するメーカーもあり、ビジネスモデルはさまざまです。
企業例
- 自動車メーカー(例:日産、TOYOTA)
- 食品メーカー(例:サントリー、日清)
- ゲーム会社(例:任天堂、カプコン、バンダイナムコ)
- 精密機器メーカー(例:ダイキン工業、富士フィルム、島津製作所)
- 鉄鋼メーカー(例:日本製鐵、JFEスチール)
IT
主にインターネットやソフトウェア・ハードウェアなどに関連する業界です。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の普及により、今やあらゆる業界がITと関連しており、IT企業の線引きには曖昧なものがあります。
企業例
- 通信(例:NTT東日本、KDDI、ソフトバンク)
- ソフトウェア(例:Microsoft、サイボウズ、トレンドマイクロ)
- 情報処理(例:富士通・トランスコスモス)
- Webサービス(例:Amazon、楽天、DMM)
- SNS(例:Twitter、Facebook)
保険
病気・怪我・事故・天災などによる経済的リスクを緩和する保険商材を扱う業界です。顧客の掛け金を運用する側面から金融業界に含まれることもあります。
企業例
- 生命保険会社(例:明治安田生命、日本生命)
- 損害保険会社(例:東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン)
- ネット保険会社(例:ライフネット生命保険・アフラック生命保険)
デベロッパー
大型のオフィスビルや商業施設の建設、都市計画やリゾート開発など、大規模な不動産開発を主体とした業態です。
企業例
- メーカー系デベロッパー(例:トヨタホーム、旭化成ホームズ)
- 私鉄系デベロッパー(例:東急不動産、京王不動産)
- 独立系デベロッパー(例:森ビル、イオンモール)
- 財閥系デベロッパー(例:住友不動産、三井不動産、安田不動産)
ゼネコン・不動産
ゼネコンは、不動産建設の工事を請け負う業態です。不動産は、個人や企業に住環境やオフィス環境を販売・提供する業態です。
企業例
- ゼネコン(例:竹中工務店、大成建設、奥村組)
- 不動産仲介(例:東急リバブル、センチュリー21、ピタットハウス)
- 不動産管理(例:URコミュニティ、スターツコーポレーション)
会計事務所
会社や個人事業主と顧問契約を締結し、経理・決算・税務手続きなど財務を担う業態です。税理士事務所・司法書士事務所・社会保険労務士事務所・監査法人と連携しながら働くこともあり、行政機関や官庁との関わりも密になります。
企業例
- 会計事務所(例:東京共同会計事務所、青山綜合会計事務所)
- 監査法人(例:あずさ監査法人、監査法人トーマツ)
- 税理士法人(例:デロイトトーマツ税理士法人、KPMG税理士法人)
公務員
国や地方自治体の行政機関に所属し、市民や国民の生活基盤を支える業態です。公務員試験に合格した後、書類審査や面接を経て就職します。
就職先例
- 国家公務員(例:中央官庁、出先機関)
- 地方公務員(例:県庁、市役所)
- その他公務員(例:警察官、消防官、学校教諭)
経済学部卒に人気の職種
ここまで経済学部と相性のいい業界について紹介してきましたが、ここからは業界問わずどんな仕事が人気なのか、「職種」について紹介します。
営業
商談を通して新規顧客を獲得したり、取引先に自社商品・サービスを売り込んだりする仕事です。特定の学部が有利ということはなく、コミュニケーション能力をはじめ人間力が求められます。営業職はどの業界にもあり、まずは業界業態について幅広く知識を身に付けたり、人脈をつくりたい人におすすめの職種です。
会計・経理
お金の計算や帳簿付け、税務申告など財務に関する仕事です。会計事務所など財務に特化した業界であれば、さまざまな業種のクライアントと仕事をすることになります。数字に強いことはもちろん、正確性とスピードを求められます。営業職同様にあらゆる業界に会計・経理のポジションはありますが、営業職とは異なり外部の人と接する機会は比較的少ないです(財務コンサルなどは別)。
マーケティング
市場や消費者の行動分析、ターゲットへの広告宣伝など、商品・サービスへの集客や販路拡大を狙う仕事です。近年はインターネットの普及により、デジタルマーケティングが主流となっています。数字を扱う印象が強いですが、昨今はAIやツールの発達により細かな計算などを人手で行うことは少なく、それよりも分析結果やデータから新たな施策やアイデアを生み出すことが求められています。
商品企画
売上向上や販路拡大のために、既存商品のバージョンアップや、新たな商品・サービスを企画する仕事です。発想力はもちろん、アイデアを言語化・視覚化する力やプレゼンする力も求められます。また一発で良い企画が生まれるということは少なく、何度もトライ・アンド・エラーを重ねてアイデアを磨いていくため、実行力や忍耐も必要でしょう。
コンサルタント
顧客の悩みや課題を洗い出し、解決や改善に向けてアドバイスしたり伴走サポートしたりする仕事です。営業戦略やIT戦略を担うコンサルタントもいれば、会計・財務・人事・総務などバックオフィス業務に特化してサポートするコンサルタントもいます。自らの専門性を、その専門性が不足している企業に提供する仕事なので、特定の分野に特化して専門性を磨く必要があり、またクライアントの成功にコミットする力が求められます。
おすすめの資格・検定
在学中に取得を目指せるおすすめの資格を紹介します。経済学部と相性がよく、就職に有利なものを中心にピックアップしているので、ぜひ参考にしてみてください。
公認会計士
公認会計士は、企業会計や監査をおこなうための資格です。合格率10%程度の難関な国家試験を通過する必要があり、大学内の受験団体や専門ゼミ、専門スクールで勉強・対策して合格を目指すのが一般的です。監査法人や会計事務所、税理士事務所などへの就職を考えている学生は取得しておきましょう。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(FP)は、家計に関するアドバイスを行う専門職です。食費や通信費といった生活費の見直し、子どもの教育費のやりくり、老後を見越した資産運用など、お金周りの課題解決をサポートします。
資格には、国家検定の「FP技能士」(1~3級)、日本FP協会が認定する「AFP資格」と「CFP資格」(上級資格)があります。個人をターゲットにした生命保険会社や損害保険会社への就職に役立ちます。
簿記
簿記(日商簿記検定)は、経理・財務の仕事に役立つ資格です。企業取引や経営活動の記録を正しく帳簿に記録し、財務状況をクリアにすることで会社の成長に貢献します。公認会計士同様、専門スクールや通信教育などで勉強・対策して合格を目指すのが一般的です。企業の経理部・財務部への就職に役立ちます。
TOEIC
TOEICは、英語コミュニケーション能力の指標となる検定です。合格・不合格ではなく受験者全員に点数が与えられ、その点数で英語力の高さを判断します。海外と取引の多い企業では英語力を評価されることも多いので、海外取引の多い貿易・メーカー・商社、外資系企業への就職に役立ちます。
宅建士
宅建士(宅地建物取引士)は、不動産の重要事項説明書の交付や説明をするための資格です。不動産会社には一定の宅建士の配置が義務づけられ、資格を持っていないと扱えない書類も多いため、不動産業界への就職に役立ちます。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題解決に特化した資格です。企業の成長戦略や事業のアドバイスを行い、適用できる補助金や助成金の案内・行政機関とのパイプ役も担います。コンサル企業への就職に役立ちます。
まとめ
今回は、経済学部卒の学生におすすめの業界や職種、資格について解説しました。
要点は以下の通りです。
- 業界:金融、商社、メーカー、IT、保険、デベロッパー、ゼネコン・不動産、会計関係、公務員
- 職種:営業、会計・経理、マーケティング、商品企画、コンサルタント
- 資格・検定:公認会計士、ファイナンシャルプランナー、簿記、TOEIC、宅建士、中小企業診断士
ご覧のとおり経済学部は幅広い業界・職種を目指せる学部です。将来の方向性がまだ定まっていない人はまずは経済学部に進んで、自分の興味ある領域を見つけてみるというのもありかもしれません。
経済学部について詳しく解説した記事や、進路決めに役立つ自己分析のやり方を紹介した記事もぜひ参考にしてみてください。