ニュースや新聞で「世論調査」という単語を見たことがありませんか?「世論調査によると内閣支持率は50%」「今度の選挙は世論調査を見る限り○○党が優勢だ」といったように政治に関する話題でよく目にするはずです。
今回は、世論調査の中身や実施方法、よくある疑問などについて解説します。高校生でも世論調査の対象となる可能性があるので、いざ自分が調査対象になったときに慌てず済むように予習しておきましょう。
世論調査とは
世論調査とは、国民の考えや意識を把握するための統計的な社会調査のことです。
内閣府もしくは新聞社・テレビ局などの報道機関が実施することが多く、民意を調査するための方法として活用されています。
実施のタイミングは、不定期です。新たな話題や関心が引き起こされるであろう時期に実施することが多く、実施決定時には調査機関のWebサイト上に情報がリリースされます。
今実施している世論調査について気になる人は、是非チェックしてみましょう。
世論調査の方法
世論調査はどのように実施されているのでしょうか。ここでは調査の実施方法を解説していきます。
「自分も調査されるかもしれないの?」「自分や家族は回答したことないけれど、本当に実施しているの?」という疑問も解消されるでしょう。
2,000~10,000人程度をランダムに抽出
世論調査の対象者は、2,000~10,000人程度をランダムに抽出して選定されます。
調査内容や時期によって人数は変動しますが、国民“全員”の意見を聞く調査ではありません。日本に住む全ての人・世帯を対象に5年に1度おこなわれる「国勢調査」と混同してしまう人がいますが、世論調査はあくまで一部の国民が対象です。
訪問や郵送による調査の場合、市区町村に登録されている住民基本台帳を参照して対象者を選定します。また、電話やインターネットによる調査の場合、電話番号をランダムで抽出するプログラムを活用して選定します。
そのため、調査対象になるかどうかは基本的に当日まで分かりません。
調査対象者は有権者全体の縮図になるよう調整する
一部の国民が対象になるとはいえ、世論調査の対象者は、有権者全体の縮図になるよう調整します。
対象全員が「20代」「首都圏在住」「会社員」といったように極端な偏りが出ないよう、ランダムでありつつも対象者のステータスは細かくチェックされているのです。
たとえば電話調査では、「同居しているご家族は何人ですか?一人ひとりの性別・年齢を教えていただけますか?」と聞かれることがあります。
固定電話への連絡の場合、在宅率の高い主婦や高齢者ばかりが回答することになりかねないため、家族構成を聞いたうえで特定の人にのみ質問をすることも少なくありません。
不在であっても日付や時間を改めてくれますから、在宅時間を伝えるなどして協力していきましょう。
18歳以上の高校生は世論調査の対象になる
18歳以上であれば、高校生であっても調査対象に選ばれることがあります。
これは世論調査が有権者に対しておこなわれるからであり、2016年の選挙権年齢引き下げ以降、世論調査の対象年齢も同様に引き下げられました。
ある日突然、家族のなかで自分にだけ世論調査の的が当たるかもしれません。あらかじめ調査の意義や方法を押さえておき、慌てずに済むよう対策しておきましょう。
参考:18歳選挙権とは?成立の背景と課題、選挙の仕組みを解説
主な調査方法
世論調査の方法は、実施期間や調査内容によって都度異なります。ここでは、主に採用されている方法を5つ解説します。
①訪問調査・面接調査
調査員が調査対象者の自宅を直接訪問し、対面で聞き取りをおこなう方法です。
また、事前に回答調査書を配布し、調査員が自宅を再度訪れて回収する手法も訪問調査に含まれます。
一対一で直接説明できるため、対象者に関心を持ってもらいやすく、データや資料を提示しながらおこなう詳細な聞き取りにも有効な手法です。
他の調査方法に比べて、調査員を採用・派遣するコストが膨大にかかるため、近年は減少傾向にあります。
②電話調査
固定電話もしくは携帯電話を介した調査方法です。
RDD方式と呼ばれるやり方でランダムかつ、特定の地域や年齢層に偏らない電話番号が抽出されます。
調査費用と時間を節約できるため、ほぼ全ての調査機関で採用されている手法です。
③郵送調査
郵送で回答調査書を発送し、記入後に返送してもらう方法です。
調査対象が全国各地など広い地域に分散している際に活用しやすく、返送先住所や公官庁やマスコミ本部であることからも信頼性を得やすい手法です。
⑤インターネット調査
インターネット上でアンケートに答えてもらう形で調査する方法です。
費用を抑えつつ、短期間で大量の回答を得やすい方法として知られています。
一方で、日常的にインターネットを活用しない層(特に高齢者)が調査対象者から漏れる可能性があることから、一部調査機関のみでの導入に留まっています。
世論調査の結果が使われる場面
次に、世論調査の結果がどんなことに使われているのかを確認していきましょう。
自分や家族の回答がどこでどう活用されているかを理解すれば、協力への姿勢が大きく変わるかもしれません。
政府の審議会や国会審議
まず、政府の審議会や国会審議の場で活用されます。
新しい政策の立案、過去の施策へのフィードバック、日本の成長戦略考案などさまざまな話し合いで用いられ、政策や施策の基礎資料になっているのです。
一人の意見は小さくとも、少なからず国を動かす力になっています。
マスメディアやウェブメディアの報道
世論調査の結果は、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌などのマスメディア、ニュースサイトなどのウェブメディアの報道でも活用されています。
特に新しい政策が始まったタイミングや選挙のタイミングでは、盛んになる傾向が強いです。
世論調査を見ることで、「なぜ今の内閣は支持率が低いのか」「なぜ○○の政策は失敗したのか」といった論点に気づくことができます。ぜひ世論調査から今話題になっている論点を押さえて自分の意見を考えてみてください。
研究機関の分析・提言
大学・企業・財団・独立行政法人などの各種研究機関でも、世論調査の結果が活用されています。
世論調査をもとに、政府や政策が国民にどう受け入れられているかを分析し、専門的な見地から新たな提言をすることに役立つのです。
特に取材や統計で時代の共通認識を探ろうとする社会学や政治学との相性がよく、政治家とは異なる専門家の目線での意見が生まれることにつながります。
学生の論文・研究
主に社会学分野を学ぶ大学生・大学院生が、課題の論文作成やゼミの研究などに世論調査の結果を活用することがあります。
皆さんも今後、世論調査をはじめとするさまざまなデータを活用して論文を書く機会があるかもしれませんね。
世論調査Q&A
ここからは、世論調査にまつわるQ&Aをピックアップします。
自分が調査対象に選ばれたときのことを想定した疑問も多く取り上げているので、目を通してみてください。
Q1. 本当or詐欺を見抜くにはどうしたらいいの?
調査が本物か詐欺かを見抜くには、調査機関のWebサイトを参照するのが最も有効です。
内閣府をはじめ、テレビ局や新聞社では現在実施中の世論調査テーマが公開されています。「少し調べてから回答したいので、一度電話(や訪問)を中断してもいいですか?」と聞いても、失礼には当たりません。
もし相手が名前や住所を聞き出そうとしたり、お金の振込・還付を提示してくるようなものは、間違いなく詐欺と判断して問題ありません。
なかには行政機関を名乗って個人情報を仕入れようとする「かたり調査」もあるので、不審に思ったときは無理に答えないほうがよいでしょう。
Q2. 世論調査の結果はどこで閲覧できるの?
世論調査の結果は、各調査機関のWebサイトで閲覧可能です。
例えば内閣府では、過去の世論調査の結果を全て開示しています。
政治だけでなく、気候変動・地域社会・薬局の利用・食生活などテーマは多岐に渡っています。
Q3. 協力しなくても問題はない?
世論調査への協力は、義務ではなく任意です。断っても特に罰則はないので、無理に答える必要はありません。
しかし、世論調査は回答内容をもとに民意を推定する社会的統計調査です。調査の精度を上げたり、政府や政治家に民意を伝えるためにも、なるべく協力していきましょう。
Q4. 調査内容に詳しくなく、答えられないときはどうする?
調査内容に詳しくない、質問に対してはっきりとした自分の意見を持っていない、という場合はそのまま正直に伝えて問題ありません。
「賛成か反対か、分からないです」「特に意見はありません」「答えたくないので、この質問は無回答でお願いします」
というのも立派な意見のひとつですから、安心してください。
質問に対する正解・不正解もありません。飾らない率直な意見を伝えていきましょう。
Q5. 携帯電話に調査の連絡がくることはある?
携帯電話に調査の連絡がくることはあります。
電話調査の場合、固定電話と携帯電話の両方を対象としている調査機関が多いのです。
これは携帯電話しか持たない人や、反対に固定電話しか持たない人を全体的に拾い上げるための策であり、調査機関によってはきっちり半々の割合で架電しています。
ある日突然自分のスマートフォンに連絡がくる可能性がありますから、可能性の一つとして知っておきましょう。
Q6. 世論調査に協力したい!何かできることはある?
世論調査の対象に選ばれるために、自分から応募することはできません。
なぜなら、政治や経済への関心度合いを問わず、幅広い人をピックアップできるようにしているからです。
特定の地域・年代・性別・職業に偏らないようランダム抽出であることを重要視しているため、自ら協力を申し出ることはできません。
しかし、世論調査員として訪問や電話をする側に立ったり、調査機関でデータの整理をすることは可能です。
ほとんどの場合採用対象は社会人ですが、将来マスコミや公官庁への就職を希望している人は、調べてみるとよいでしょう。
まとめ
世論調査は、国民の考えや意識を把握するための統計的な社会調査です。調査対象はランダムに選ばれますが、有権者全体の縮図になるよう調整されています。選挙権のある18歳以上であれば高校生でも対象になりますから、自分のもとに協力の依頼がくることもあるかもしれません。
公官庁や政府政府審議会で活用される以外にも、報道・研究機関・大学などでも使用される需要な統計調査ですから、意義を理解してぜひ協力していきましょう。