中学や高校は進路について考えることが多い期間です。どんな学校生活を送りたいか、将来どうなっていたいか悩むこともあるでしょう。
そんな人におすすめの制度が「地域みらい留学」です。中学3年生と高校1年生が対象のこの制度には、今の生活と勉強の環境をガラッと変え、新たな視点をつかむチャンスにあふれています。
今回は、地域みらい留学とは何か、内容や流れ、おすすめの高校を紹介します。似た制度である「地域みらい留学365」の内容も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
地域みらい留学とは?
地域みらい留学の概要と、制度が生まれた背景について解説します。
地域みらい留学の概要
地域みらい留学とは、都市部の高校ではなく、地域の公立高校に入学・留学する制度のことです。地域みらい留学には2種類存在し、それぞれで少し内容が違います。
地域みらい留学 | 地域みらい留学は、高校3年間全ての期間を、留学先の高校で過ごす制度です。親元を離れて3年間過ごすため、中学卒業の1年以上前から複数の高校を見学して、慎重に留学先を選ぶ人もいます。 |
地域みらい留学365 | 地域みらい留学365は、高校2年生の1年間だけを、留学先の高校で過ごす制度です。2020年から募集が始まり、「地域みらい留学」にはない高校も選択肢としてあります。 |
制度が生まれた背景
地域みらい留学が生まれた背景には、予測困難な時代である現代において、自分の意思で行動できる人材が求められていることがあります。
将来に希望を持てない、または自己肯定感が低いと感じる若者の数は、非常に多く存在します。令和元年版子供・若者白書によると、「自分自身に満足している」と感じる若者の割合は、韓国(約36%)やアメリカ(約58%)よりも低く、10%に近い状態です(※)。
将来に希望を持ち、自己肯定感を高めるためには、社会に参加し役に立っていると感じられる機会が必要です。地域みらい留学では、地域のなかで役割をもって行動し、失敗を成長につなげられる機会が多くあります。
地域みらい留学・地域みらい留学365の魅力
地域みらい留学の魅力について解説します。
主体性が育まれる
1つ目の魅力として、主体性が育まれることが挙げられます。
都市部の学校とは違い、地域では少人数教育を実施している学校が多くあります。少人数によって一人ひとりの役割は比較的多くなり、責任感や自主性を持って生活することが自ずと求められます。
また寮やホームステイ先での生活は、地元や実家にはない不便さを感じることもあります。しかしそのぶん、ほかの生徒や地域住民との共同生活に欠かせない、協調性や責任感が培われるのです。
自然・文化
2つ目の魅力として、都市部にはない自然や文化に触れられることが挙げられます。
都市生活において登山やカヌー、ダイビングといったアクティビティは非日常的なものですが、留学先の地域では当たり前のように近くの山や川、海で体験することができます。地の利を活かした部活動に力を入れている学校もあるので、マウンテンスポーツやマリンスポーツに興味のある人はぜひ部活動情報をチェックしてみてください。
また都市では身近に感じることが滅多にない芸能や工芸、祭りといった「その土地に根ざした文化」を体験する機会が地域には豊富にあります。日常的には特産の旬の食べ物も堪能できるかもしれません。都市のテーマパークや商業施設のような華やかさはないかもしれませんが、留学先の友人や地域住民たちとともに一生忘れられない「ここでしかできない体験」を味わえるでしょう。
人々の出会い
3つ目の魅力として、留学先の生徒や先生、地域住民など人々との出会いが挙げられます。
都市部では近所付き合いが薄くなりがちですが、地域ではコミュニティを大切にしている人が多く、生徒と地域住民が顔見知りであることも珍しくありません。世代や経歴の異なる人々との出会いは、今後の人生にきっと大きな影響を与えるでしょう。
地域によっては、留学生の生活や交流をサポートするコーディネーターがいるので、人付き合いに不安な生徒も安心して地域に溶け込めます。
地域みらい留学の対象者・費用・留学先・参加の流れ
地域みらい留学の詳細について解説します。
対象者
地域みらい留学の対象者は、中学3年生です。入学から卒業まで地域の高校で過ごすことになります。
費用
地域みらい留学でかかる費用は学費を除いて、寮費や生活費などです。月々の費用は2万〜6万円程度が相場で、都市部に比べ比較的安く押さえられます。高校によっては、費用の一部を補助してくれるところもあります。
留学先の高校一覧
留学できる高校は、以下の63校です。
- 北海道奥尻高等学校
- 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校
- 北海道礼文高等学校
- 北海道大空高等学校
- 岩手県立葛巻高等学校
- 岩手県立遠野高等学校
- 岩手県立遠野緑峰高等学校
- 岩手県立住田高等学校
- 岩手県立大槌高等学校
- 山形県立遊佐高等学校
- 福島県立川口高等学校
- 福島県立只見高等学校
- 新潟県立阿賀黎明高等学校
- 静岡県立川根高等学校
- 三重県立飯南高等学校
- 三重県立昴学園高等学校
- 滋賀県立信楽高等学校
- 兵庫県立村岡高等学校
- 五條市立奈良県立五條高等学校 賀名生分校
- 和歌山県立串本古座高等学校
- 鳥取県立青谷高等学校
- 鳥取県立倉吉農業高等学校
- 鳥取県立日野高等学校
- 島根県立情報科学高等学校
- 島根県立大東高等学校
- 島根県立横田高等学校
- 島根県立三刀屋高等学校
- 島根県立飯南高等学校
- 島根県立大田高等学校
- 島根県立島根中央高等学校
- 島根県立矢上高等学校
- 島根県立江津高等学校
- 島根県立浜田水産高等学校
- 島根県立吉賀高等学校
- 島根県立津和野高等学校
- 島根県立隠岐高等学校
- 島根県立隠岐島前高等学校
- 島根県立隠岐水産高等学校
- 岡山県立和気閑谷高等学校
- 広島県立加計高等学校
- 広島県立加計高等学校 芸北分校
- 広島県立大崎海星高等学校
- 山口県立周防大島高等学校
- 徳島県立城西高等学校 神山校
- 徳島県立海部高等学校
- 愛媛県立弓削高等学校
- 愛媛県立上浮穴高等学校
- 愛媛県立内子高等学校 小田分校
- 愛媛県立三崎高等学校
- 愛媛県立宇和高等学校 三瓶分校
- 愛媛県立野村高等学校
- 高知県立室戸高等学校
- 高知県立嶺北高等学校
- 高知県立梼原高等学校
- 高知県立四万十高等学校
- 熊本県立矢部高等学校
- 大分県立久住高原農業高等学校
- 宮崎県立飯野高等学校
- 鹿児島県立南大隅高等学校
- 鹿児島県立屋久島高等学校
- 鹿児島県立古仁屋高等学校
- 沖縄県立久米島高等学校
- 沖縄県立辺土名高等学校
参加するまでの流れ
地域みらい留学に参加するまでの流れを以下にまとめました。
事前 | 地域みらい留学フェスタに参加する※2020年はオンライン開催。第1弾は7/25・26日に開催予定 |
7〜8月 | 学校見学に行く |
9〜12月 | 志望校を決める |
1〜3月 | 受験 / 留学先が決まる |
地域みらい留学365の対象者・費用・留学先・参加の流れ
地域みらい留学365(さんろくご)の詳細について解説します。地域みらい留学とは対象者も流れも違うので確認しておきましょう。
対象者
地域みらい留学365の対象者は、高校1年生です。高校2年生の1年間を地域の高校で過ごすことになります。
費用
地域みらい留学365でかかる費用は、地域みらい留学と同様、学費を除いて寮費や生活費などで、月々の費用は2万〜6万円程度です。高校によっては費用の一部を補助してくれるところもあります。
留学先の高校一覧
留学できる高校は、以下の12校です。
- 北海道幌加内高等学校
- 北海道斜里高等学校
- 北海道鵡川高等学校
- 岩手県立葛巻高等学校
- 山形県立小国高等学校
- 石川県立能登高等学校
- 三重県立昴学園高等学校
- 島根県立大東高等学校
- 島根県立三刀屋高等学校
- 島根県立津和野高等学校
- 島根県立隠岐島前高等学校
- 高知県立嶺北高等学校
参加するまでの流れ
地域みらい留学365に参加するまでの流れを以下にまとめました。
7〜9月 | 地域みらい留学フェスタに参加する※2020年はオンライン開催。第1弾は7/26日に開催予定 |
10〜12月 | 現在在籍している高校に相談し調整をしたうえで、留学先の学校を決める応募書類を提出し、テストや面接を受ける |
2月 | 留学先予定の学校と意思を確認する |
4月 | 留学を始める |
おすすめの学校5選
最後におすすめの学校を5つ紹介します。ここで紹介する学校以外にも魅力あふれる学校はたくさんあります。あくまで選択肢の1つとして参考にしてみてください。
北海道鵡川高等学校
北海道鵡川(むかわ)高校は「地域みらい留学365」の対象です。札幌から車で1時間半ほどのむかわ町にある、全校生徒約140人の高校です。「明るく豊かにたくましく」を校訓としており、主体的な人間の育成に力を注いでいます。
特徴は「むかわ学」と呼ばれる地域学習が用意されていることです。むかわ学では、むかわ町の歴史や、国内最大の恐竜化石である「むかわ竜」などについて学びます。むかわ町全体が「探求の場」となり、地域密着型の学習ができます。
滋賀県立信楽高等学校
滋賀県立信楽(しがらき)高校は「地域みらい留学」の対象です。県南部の甲賀市にある全校生徒約190人の高校です。人間力と教養を兼ね備えた、社会貢献ができる人材育成を教育目標にしています。
特徴は、ものづくりのスペシャリストを育成することです。陶芸やデザイン・美術を学ぶ授業があります。「アート留学」と呼ばれる教育システムを中心として、生徒それぞれの希望に沿った進路が実現可能です。
島根県立情報科学高等学校
島根県立情報科学高校は「地域みらい留学」の対象です。県東端の安来市にある全校生徒約300人の高校です。情報教育の先進校を目指しながらも、社会人としてのマナーや倫理観を育むことも重要にしています。
特徴は「マルチメディア科」があることです。ソフトウェアに関する理解を深め、コンピューターを使いこなすために必要な知識・技能を習得できます。マルチメディア科を用意している公立の学校は、全国でもこの学校だけです。
ただ働くだけのインターンシップではなく、働きながら就業先の課題を探し、解決策を提案して実践するインターンシップもあります。自分で考えて実行する能力が身に付くでしょう。
高知県立嶺北高等学校
高知県立嶺北(れいほく)高校は「地域みらい留学・地域みらい留学365」の対象です。県北部の本山町にある全校生徒約90人の高校です。主体性、地域創造、そして多文化協働の3つの精神を兼ね備えた生徒の育成に尽力しています。
特徴は、生徒自らが他者と関わり、問題解決に取り組む「嶺北探究」を実施していることです。授業だけではなく、寮生活でも主体的な行動が求められるので、自主性が磨かれるでしょう。
高校のすぐそばには日本一の清流といわれる吉野川があり、本山町には「日本で最も美しい村連合」から認定を受けた美しい棚田が点在しています。都会にはない美しく豊かな自然環境のなかで高校生活を送ることができます。
鹿児島県立古仁屋高等学校
鹿児島県立古仁屋(こにや)高校は「地域みらい留学」の対象です。奄美群島の瀬戸内町にある全校生徒約100人の高校です。「自主自立」「勤勉誠実」「明朗端正」「敬愛和協」の4つの教育目標で生徒を育成しています。
特徴は、2年次から生徒それぞれの目標や希望に合わせて専用コースを用意していることです。海水浴ができる場所がたくさんあり、釣りやマリンスポーツも楽しめます。また大島地区以外からの入学生には、「ふるさと留学助成金」として月50,000円の助成があります。
まとめ
今回は、地域みらい留学の概要や魅力、詳細からおすすめの学校までを紹介しました。高校の3年間は、人生の大まかな方針が決まる重要な期間です。この3年間の経験はその後の人生に少なからずつながっていきます。地域みらい留学では、都市部にある高校ではまず味わえない、貴重な経験ができます。気になる人は、まずは地域みらい留学のフェスタや説明会に参加してみてください。