経済学部・経営学部・商学部の違いがわかりますか?
どれも文系学部のなかだと就職に有利そうなイメージがあり、進学先として検討している人も多いのではないでしょうか。今回は、経済学部では何を学ぶのか、経営学部や商学部との違い、学部の選び方、人気の就職先などについて紹介します。
経済学部で学ぶこと
経済学部で学ぶ対象は多岐にわたります。たとえば、国の金融政策や外交問題から、個人の進学・結婚・介護など幅広いことが対象となります。
学問的には、大きく以下の3つに分けられます。
理論経済学(ミクロ経済学・マクロ経済学など)
理論経済学とは、経済活動のモデルを作り数理的に分析していく学問です。
経済理論は、大きく「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」に分けられます。
「ミクロ経済学」とは、個人の消費行動や企業の生産活動などを対象に、経済の仕組みや法則性を分析する学問です。たとえば、モノが売り買いされる価格と量や、需要と供給によって決まる「受給理論」などを学びます。
一方、「マクロ経済学」とは、GDP(国内総生産)や貿易・投資・雇用など国家・地域レベルの経済活動を対象に、インフレやデフレ、財政などの経済の仕組みや法則性を分析する学問です。たとえば、景気変動や政府の対策、国民所得や失業率など大きな経済のメカニズムを考えます。
応用経済学
応用数学とは、理論経済学で学んだ知識を現実の経済に当てはめて考える学問です。
学問的には、労働経済学・公共経済学・国際経済学などがあります。たとえば労働経済学では、非正規雇用をテーマに失業や給与格差の問題について、インフレーション・失業などマクロ経済学の視点から考えることを学びます。
思想と歴史
思想と歴史とは、経済学そのものの歴史を学ぶ学問です。学問的には、経済史・政治経済学・経済思想などがあります。歴史を振り返り、今・これからの時代に必要な経済学の研究を探るのが目的です。
経済学部と経営学部と商学部の違い
経済学部・経営学部・商学部は名称が似ていますが、学ぶ内容は大きく異なります。
経済学とは
経済学とは、「社会全体」における経済活動の仕組みについて経済理論をベースに学ぶ学問です。社会全体を豊かにするためには、ヒト・モノ・金・情報・時間などの資源をどう使えばよいのか考えます。つまり国や地域など、ある程度大きな集団を豊かにするために、税率・金利・国債などの政策をどう打ち出していくかを探求していきます。
経済学部のメリットは、経済全体を体系的に学ぶことに重きが置かれているので、経済の動向や最新情報を理解し考える力を養えることです。個人の努力次第では、GDPや物価などの経済指標や為替相場、株価の動向などを読み解き、世界の経済動向を分析したり、投資活動に役立てたりできるようになるでしょう。
経営学とは
経営学とは、「企業や組織」が存続・成長するための仕組みや戦略を学ぶ学問です。企業や組織が、市場を開拓して成長していくためには、ヒト・モノ・金・情報・時間などの経営資源をどう獲得し、配分していけばよいのか考えます。
経営学部のメリットは、経営管理・労務管理・生産管理など経営に必要な実務的な知識や情報を身に付けられることです。実際の企業活動や市場動向について、事例を分析することで実務的な内容に触れることができます。起業や組織経営に興味のある人におすすめです。
商学とは
商学とは、企業活動の主体である「商取引」について仕組みや戦略を学ぶ学問です。製品やサービスを生み出す活動や流通など、企業と消費者を結ぶビジネスについて研究します。
商学部のメリットは、会計業務・財務戦略・マーケティング・グローバルビジネスなど実践的な知識を身に付けられることです。簿記の資格取得を必須としている大学も多く、経理・財務などビジネス現場で役立つ知識が身に付きます。
そのほか、金融・証券・流通・貿易のほか、市場調査や広告宣伝などのマーケティングについて学ぶことができます。製品やサービスを生み出したり、売ったりすることに興味のある人におすすめです。
対象 | 主な領域 | 重視すること | |
経済学部 | 国・市区町村 | 経済活動 | 理論 |
経営学部 | 企業・組織 | 組織経営 | 実践 |
商学部 | 製品・サービス | 商取引 | 実践 |
経済学部の授業・ゼミの内容
経済学部の授業では、はじめは経済学とは何か=理論経済学を学ぶほか、並行して高校数学も学びます。経済学部の授業では数学が当然のように使用されるため、どの学生でも学習効率を下げないで済むようなカリキュラムが組まれることが一般的です。
入門科目がおわると統計学や応用経済学を学んだのち、個人の興味に応じて専門科目を学んでいきます。
たとえばゼミでは、グループを組んでレジュメを作って発表し、学生同士で質疑応答や議論をしたり、教授に指摘・アドバイスをもらったりしながら理解を深めていきます。
内容は、所属ゼミの教授の専門分野にもよりますが、オリンピックの経済効果や観光施設の持続可能性、日本と世界のコロナ対策の比較分析など幅広い題材が考えられます。
経済学部に向いている人
経済学部に向いていると考えられる人の特徴を3つ挙げます。
人々の行動や心理に関心がある
人は、お金と引き換えにさまざまなものを手に入れようとします。食事や睡眠などの欲求から、安心したい・認められたい・自分らしく生きたいといった欲求を満たすためにお金を使っているのです。
そういった一人ひとりの細かな行動や心理に関心を寄せ、どのような人にどの分野でどういう政策・制度が必要であるかを考ることが楽しい人は経済学部に向いているでしょう。
経営や起業に興味がある
企業経営や起業にあたって、経済の仕組みや市場動向を読み解く力は欠かせません。世の中の経済動向を把握し、自分の考えや実現したいことを見つけ自らの手で成し遂げたいと思う人にとって、経済学部での勉強は役立つでしょう。
数学的な思考や数式に苦手意識がない
経済学部は文系学部ですが、分析には数式やグラフを使用します。微積分や線形代数なども用いるので、数学に苦手意識のない人の方が経済学部に向いているでしょう。
ただし、数学に自信がなくても、経済関連の事象を数式やグラフを用いて考えることが面白いと実感する人もいます。一度、数学を用いた経済学の本や動画を観てみるといいかもしれません。
専門的に学ぶ選択肢を幅広くしておきたい
経済学部では幅広い分野を学ぶので、卒業後の進路をまだ想像できない人にもおすすめです。実際、経済学部卒の人は幅広い業界・業種へ就職しています。
最低限、自分が少しでも興味のある講義があるか、取り組んでみたい研究ができそうなゼミがあるかどうかは調べておきましょう。
経済学部の学生に人気の資格
経済学部の学生は、在学中に資格取得を目指す人が多いです。特に以下3つの資格が人気です。
日商簿記検定
日商簿記(簿記)は、企業や商店の帳簿を記録・管理し、経営の実績や財政を把握する技能です。簿記の知識はビジネス全般で役立つほか、就職活動の際に2級以上あると評価されやすいので人気があります。年3回受験の機会があります。
ファイナンシャルプランナー(FP)検定
ファイナンシャルプランナー(FP)は、個人や企業の資金についてサポートする仕事です。たとえば、年金や相続、資産運用などお金について幅広い知識が必要です。検定は1〜3級まであり、合格した級の「FP技能士」を名乗って仕事ができます。実績を積めば独立できるので、人気があります。
銀行業務検定
銀行業務検定とは、銀行・保険・証券等金融機関などで働くにあたり、業務の遂行に必要な実務知識や応用力が問われる試験です。金融機関への就職を目指したり、内定が決まった学生が受験します。
経済学部卒に人気の仕事
経済学部卒の就職先や進路は多岐にわたります。ここでは、特に人気の仕事5つを紹介します。
一般企業(金融業界・商社・メーカーなど)
経済学部卒の進路で最も多いのが、一般企業への就職です。とくに、銀行や保険会社、証券会社などの金融業界が人気です。経済学部では、お金の動きはもちろん為替や株などの金融商品の知識について学ぶので就職先として多くなっていると考えられます。
公務員
地方公務員や国家公務員を志す人が多いのも経済学部の特徴です。大学で学ぶことと、公務員試験の内容で重なる部分が多いためだと考えられます。特に、地方公務員は数学や経済分野の問題が多く出題される傾向にあります。
公認会計士
公認会計士は、企業や団体の監査や会計を行う仕事で、弁護士・医師と並ぶ最難関の国家資格です。資格取得後は、実務経験・補修などがあり公認会計士になるまで時間がかかりますが専門性・収入の高さ、独立可能といった特徴から人気の職業となっています。
税理士
税理士は、企業や個人に対して税金に関するアドバイスや税務処理のサポート・代行をする仕事です。公認会計士と同様、試験合格後に実務経験があり税理士になるまで時間がかかりますが、専門性・収入の高さ、独立可能といった特徴から人気の職業となっています。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営状況から課題点を分析し解決のサポートをする仕事です。いわゆる経営コンサルタントと同等の仕事ですが、中小企業診断士は国家資格であることが特徴です。
景気や労働人口などの経済状況を読み解く必要があるため、経済学部の学生に関心のある仕事となっています。国内企業の99%以上が中小企業であること、コロナ禍による企業の業績悪化傾向から考えても、今後も人気が続きそうです。
まとめ
国や市区町村など、大きな集団の豊さを底上げする方法を理論的に考えられるようになるのは、経済学部の大きな魅力の一つです。日々変わりゆくこの社会で、今誰にどのような政策・制度があるべきかを考えていきたい人は、ぜひ経済学部への進学を検討してみてください。