地球温暖化が深刻化すると共に、「脱炭素社会」の必要性に注目が集まっています。
環境問題はもはや私たちと切っても切れない問題であり、個人単位でも意識していく必要があるでしょう。
今回は、脱炭素社会とは何か、注目されるようになった背景も含めて解説します。
政府や企業の取り組みにも触れますので、未来について少し思いを巡らせてみましょう。
脱炭素社会とは
脱炭素社会とは、「カーボンニュートラル」とも呼ばれる取り組みです。
地球温暖化の原因である温室効果ガスの削減が目的であり、温室効果ガスを生む石炭・石油・天然ガスなどの炭素エネルギー利用を減らします。
政府は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて」と題し、新たな年組を表明しました。
2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指す取り組みであり、日本国内からだけでなく、海外からの注目も高まっています。
脱炭素社会により解決できること
ここでは、脱炭素社会により解決できることを紹介します。
温室効果ガスを削減することでどんなリスクを下げられるのか、探っていきましょう。
豪雨・台風・猛暑・極寒などの異常気象
脱炭素社会を実現することで、豪雨・台風・猛暑・極寒などの異常気象を避けられます。
近年、日本における夏の最高気温が更新され続け、異常気象を実感している人も多いのではないでしょうか。
一方で、寒冷地の冬はより寒くなり、最低気温や積雪量を更新している様子も見られます。
沖縄や九州に台風が上陸する回数が上がり、洪水などの水害や土砂崩れの被害も深刻化しています。
また、アメリカにおけるハリケーンなど、世界での異常気象も度々観測されるようになりました。
こうした現象には、地球気候の変動が影響しています。
温室効果ガスを削減して気候を安定させることが、必須の対策だと言えるでしょう。
伝染病蔓延
気候・気温は、伝染病蔓延にも大きく影響します。
真夏日が長くなり、これまで春であった5~7月まで暑くなることで、暑い地域でしか活動できない蚊やネズミなどが繁殖しやすくなります。
これらの生き物を媒体として病原体が運ばれ、デング熱やマラリアなどの被害が拡大する恐れがあるでしょう。
また、豪雨や台風が度々起きてダムなどの水資源が破壊されたり、真夏日が続いて乾燥による水不足が起きたりすると、衛生環境も損なわれます。
自由に水が使えなくなり、手洗い・うがい・入浴などが十分にできず、伝染病蔓延に拍車をかけることもあるのです。
多くの人が健康でい続けるためにも、脱炭素社会の実現が欠かせません。
食料不足
気候・気温が変わることで、農業や水産業にもダメージが出てきます。
涼しいところでしか採取できない野菜・穀物が育たなくなったり、米やじゃがいもなど日持ちしゃすい食料が不足したりすることが考えられます。
また、水温が上がって魚の生息地が変わり、水産物も確保しづらくなるでしょう。
日本の食料自給率が大きく下がり、食べ物のの多くを海外に依存しなければいけなくなる可能性もあります。
問題なく輸入できていれば問題ありませんが、更なる温暖化・外交上のトラブル・世界情勢の変化などに伴い、輸入が安定しなくなると途端に食べるものがなくなってしまうのです。
当然、日本だけでなく海外諸国も深刻な温暖化に悩んでいます。
食料不足をどう考えるか、脱炭素社会の視点から読み解く必要がありそうですね。
エネルギー不足
石炭・石油・天然ガスなどの炭素エネルギーは、いつまでも安定して生み出されるとは限りません。
資源が枯渇し、使える分の炭素エネルギーを全て使い果たしてしまった場合、エネルギー不足に悩まされます。
もはや生活の多くを電気に頼っている現代人は、大きな不便さを味わうことになるでしょう。
ガソリンなども不足するため、物流・工場・農業にも影響が出ます。
太陽光発電・水力発電・水素発電など、現在はさまざまなエネルギー供給方法が開発されつつあります。
今後どう活用の幅を広げていくかがテーマとなっているため、脱炭素社会を意識すると共に、視野に入れておきましょう。
生態バランス
気温が変わるということは、そこで暮らす生物にも大きな影響を与えます。
前述の通り、蚊やネズミの生息地が変わり、伝染病を蔓延させることもあるでしょう。
季節に合わせて住処を変えていた渡り鳥の居場所がなくなって絶滅したり、生態バランスが崩れて特定の動物だけ異常繁殖したりする未来も考えられます。
毒を持つヘビが市街地にあふれたり、食べ物に困ったクマが人里を訪れたりする可能性もゼロではないのです。
生態バランスを保つということは、動植物のためになることはもちろん、人のためにもなります。
温室効果ガスによる気候変動が与える影響をイメージしてみると、これまで見えてこなかった未来が見えるかもしれません。
脱炭素社会に向けた政府の取り組み
ここからは、脱炭素社会に向けた政府の取り組みを紹介します。
国が主導している取り組みを知り、実生活に落とし込んでイメージしてみましょう。
排出量取引制度導入
排出量取引制度導入とは、温室効果ガスの排出量を市区町村や企業間で取引できる制度です。
まず、人口・面積などの市区町村規模や企業の経済活動規模に合わせ、それぞれが排出していい温室効果ガス量が定められます。
基準を下回っている市区町村・企業は、温室効果ガスの排出権を他に売り、反対に基準を上回ってしまった市区町村・企業は排出権を他から買うことができます。
排出権を減らす取り組みを促進する他、実際に減らせた市区町村・企業にメリットを設けるような制度であることが分かります。
ゼロカーボンシティ促進
ゼロカーボンシティとは、「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを表明した地方公共団体」のことを指します。
当初は東京都・山梨県・京都市・横浜市だけが表明していましたが、2021年には全国275の地方公共団体がゼロカーボンシティ宣言をしています。
温室効果ガスを排出したとしても、森林・公園資源が多く、循環ができていれば排出量の実質ゼロ化は可能です。
ゼロカーボンシティを宣言した地方公共団体には、再生エネルギーに特化した電力会社設立の費用が国から補助されるなど、メリットも受けられます。
炭素税導入の検討
環境税の一種として「炭素税」を設け、炭素の含有量に応じて課税することが検討されています。
2021年段階でまだ本格的な決定はされていませんが、現在炭素エネルギーに大きく依存している企業があれば、大きな痛手となるでしょう。
そのため、順次再生可能エネルギーへの切り替えがおこなわれることが期待でき、脱炭素社会に貢献するのではないかと言われています。
経済活動を阻害しない範囲でどう施行するかが重視され、現在も議論が続けられています。
炭素国境調整措置の検討
炭素国境調整措置は、排出量取引制度の国単位バージョンのようなものをイメージすると分かりやすいでしょう。
脱炭素社会の実現に向けて精力的に努力している国と、そうではない国とを分け、地球環境への貢献度合いをひとつの軸として炭素課金をする措置です。
つまり、脱炭素社会に向けた取り組みが足りている国は、輸出入を含む経済活動がやりやすくなるのです。
脱炭素社会が世界的にも注目のテーマであると分かります。
脱炭素社会に取り組む企業の例
最後に、脱炭素社会に取り組む企業の例を紹介します。
身近な商品を生み出す企業や、CMでよく見る企業の例を知ることで、生活との接点を探っていきましょう。
Apple
Apple社は、2050年から20年前倒しした2030年までに、カーボンニュートラルの達成を目標として掲げています。
現在Appleが排出している温室効果ガスを75%削減すると共に、温室効果ガス除去のための開発・研究への投資を25%増加させるとして注目を浴びました。
実際に2019年には年間77万9,000メートルトン以上の温室効果ガスを削減し、省エネルギープロジェクトを継続しています。
UNIQLO
ファストファッションブランドであるUNIQLOも、脱炭素社会実現に向けた取り組みをしています。
大量生産・大量消費が常であったアパレル業界に警鐘を鳴らし、全商品をリサイクル・リユースする方向性を定めました。
また、回収したペットボトルをポロシャツやダウンにリサイクルしたり、コンビニでの商品受け取りを可能としたことで配送にかかるエネルギーを削減したりしています。
積水ハウス
積水ハウスは、新築戸建て住宅における「グリーンファースト」に早くから取り組み、家庭単位での緑化事業に貢献しています。
また、太陽光パネルの設置工事を積極的におこない、炭素エネルギーに代わる電力供給方法を生み出してきました。
余剰電力を売買できる「積水ハウスオーナーでんき」などの新プランも手掛け、脱炭素に向けた取り組みを具体化しています。
富士通
富士通では、温室効果ガスの排出量や消費電力量を可視化できるシステムの開発に着手しています。
エネルギー効率に優れたデータセンターを持つことで、政府・大学・企業など各種団体に情報提供をおこない、脱炭素への意識改革に取り組んでいるのです。
目には見えない温室効果ガスをどう測定するか、どうすればより温室効果ガスを減らせるかなど、研究分野から貢献している企業だと言えるでしょう。
楽天
楽天グループは、2025年までにグループ会社が使用している電力を100%再生可能エネルギーに変更する目標を掲げています。
「エネルギーと環境におけるリーダーシッププログラム」に参道しており、自社ビルを環境性能のよいビルにしたり、ゴールド認証を取得しているビルにのみテナントを入れたりしていることも特徴です。
世界的に有名な企業が脱炭素社会に向けたリーディングカンパニーとして活動することで、より生活レベルでの意識づけが可能になっています。
まとめ
脱炭素社会は、私たちの暮らしや地球環境を守るために、もはや必須の取り組みになりつつあります。政府や企業の働きに目を向けながら、自分たちの生活にどう影響してくるか、イメージ市ながら読み解くのがよいでしょう。リサイクルなど、できる範囲でコツコツ行動していくことも重要です。今の自分に何ができるか、少し目を向けてみてはいかがでしょうか。