最近、日本社会全体でデジタル化を進めようという動きが見られます。その1つが政府によるデジタル庁の創設です。
デジタル庁ってなに?どういう経緯でできたの?と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事ではデジタル庁について、学生向けにわかりやすく解説します。
具体的には
- デジタル庁とは何をするところなのか
- デジタル庁はなぜできたのか
- デジタル庁は学生にどんな影響があるのか
の順番に解説していきます。
デジタル庁や日本のDXについて少しでも興味がある人は読んでみてください。
デジタル庁とは何をするところなのか
デジタル庁とは主に政府や官民のデジタル化を推進する行政機関です。2021年9月の発足を目指しています。ここではデジタル庁の仕事について主に3つ紹介します。
仕事①マイナンバーカードの普及
1つ目はマイナンバーカードの普及です。
マイナンバーカードとは名前・住所・生年月日・性別・マイナンバーという個人番号が記載されているICチップ付きカードのことです。身分証明書として使えたり、健康保険証として利用もできます。将来的には運転免許証と一体化されるため、免許証の住所変更がオンラインで行えたり、移住地以外での免許証の更新ができたりと便利です。
しかしマイナンバーカードを発行していない人も多いのではないでしょうか。現に全国の人口に対するマイナンバーカード交付枚数率は2021年5月時点で3割程度です。マイナンバーカードの普及率を上げることがデジタル庁の仕事の1つです。
【#マイナンバーカード 交付率30%】
— マイナンバー制度 (@MyNumber_PR) May 6, 2021
5月5日時点で、マイナンバーカードの交付済枚数が38,146,771枚となり、交付率30%になりました。
まだお持ちでない方は、QRコード付き交付申請書から申請ができます。
詳しくはこちらhttps://t.co/waoUjQd63l
仕事②国や自治体のITシステムを統一
2つ目は国や自治体のシステムを整備することです。具体的には各省庁や地方自治体などの行政機関の間で紙やはんこといったペーパーの手続きを削減し、オンラインのやりとりを中心にしていくことを目指す動きになります。
またこれまで関係機関それぞれで使っているソフトやシステムはばらばらでした。例えば、オンライン会議をするために、A省は『スカイプ』を使い、B庁は『ウェベックス』を使うなど。ソフトやシステムがばらばらだと、どちらがどちらに合わせるのか、どう互換性をもたせるかなどの障害が生じます。こうしたムダをなくすためにデジタル庁では、行政機関で使うソフトやシステムの統一も図っていきます。
仕事③民間のデジタル化支援
3つ目は企業へのデジタル化支援です。最近の大手企業はDXに力を入れています。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、「データやデジタル技術を駆使してビジネスに変革をもたらす」ことを指します。例えば、映画や新幹線のチケットがネットで購入できるようになったことや、定額で電子書籍が読み放題になるサービスもDXと言えます。
最近ではDXに取り組んでいる企業と取り組んでいない企業の企業間格差が問題となっています。従業員が1000人以上の大企業は8割がDXに取り組んでいるのに対し、300人以下の中小企業は3〜4割に留まっています。DXに力を入れたいけれど、阻害要因があって取り組めていない中小企業のDXを支援するのがデジタル庁の仕事です。
デジタル庁はなぜできたのか
ではなぜ政府はデジタル化を進めようという動きになったのでしょうか。ここではデジタル庁ができた理由について解説します。
理由①コロナで分かった日本政府のデジタル化の遅れ
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年に全国民一律で給付金が支給されましたが、その際行政手続きの遅れや連携不足が露呈しました。一連の出来事により国・自治体のデジタル化の遅れや不十分なシステム連携、民間や社会におけるデジタル化の遅れという課題が明らかになりました。
UNDESA(国際連合経済社会局)が発表した「世界電子政府ランキング」(国や自治体のデジタル化が進んでいるかを世界の国々でランキング付けしたもの)によると、2014年の調査で日本は6位でしたが、2020年には14位までランクダウンしています。
これに対し、同じアジアの韓国は2010年から現在まで3位以内をキープし続けていたり、最近ではデンマーク・フィンランド・スウェーデンなどの北欧諸国が10位以内にランクインしています。
グローバル的にも日本がデジタル化に遅れを取っている危機感からデジタル庁は発足されました。
理由②世界から見た日本のDXの遅さや課題
デジタル化の遅れは政府だけではありません。企業のデジタル化も世界的に遅れています。
世界デジタル競争力ランキング
順位 | 前年順位 | 国 |
---|---|---|
1 | (1) | 米国 |
2 | (2) | シンガポール |
3 | (4) | デンマーク |
4 | (3) | スウェーデン |
5 | (8) | 香港 |
6 | (5) | スイス |
7 | (6) | オランダ |
8 | (10) | 韓国 |
9 | (9) | ノルウェー |
10 | (7) | フィンランド |
27 | (23) | 日本 |
上の表は、IMD世界競争力センターが発表した「世界デジタル競争力ランキング」です。日本は63ヶ国中27位という結果でした。前年の23位から4位ランクダウンし、アジア地域では14ヶ国中8位でした。日本がこの順位になってしまった原因としてデジタル人材の不足が挙げられます。
デジタル庁は学生にどんな影響があるのか
最後にデジタル庁は学生にどんな影響があるのか、考えられることについて紹介します。
①学生もマイナンバーカードを持つようになる
マイナンバー自体は生まれたばかりの赤ちゃんを含め全国民に付与されているので、学生ももちろんマイナンバーカードを作ることができます。学生がマイナンバーカードを作るメリットは以下の通りです。
- アルバイトや就職の際に職場に提出するマイナンバーと本人確認がマイナンバーカード1枚でできる
- 住民票の写し、印鑑証明書、戸籍証明書をコンビニで取得できる
- 免許証や保険証などと同様に写真付き身分証明として使える
②オンライン教育が進む
デジタル庁は、教育・医療・防災など国民の生活に密接に関連している分野のデジタル化支援にも力を入れていきます。そのため、学生のオンライン教育が今後ますます進んでいくことが期待できます。
デジタル教育の1つとしてデジタル教科書があります。デジタル教科書とは紙の教科書がデジタル端末で読めるだけでなく、タブレットに書き込みができたり、インターネットで情報収集して疑問や思考を深められるものです。デジタル教科書によって生徒の主体的な学習を先生がサポートをするという動きが進んだり、教科書を何冊も持ち運ばなくて済むのでランドセルやバックの中身を減らすこともできます。
参考:AIに負けないためのマストスキル「21世紀型スキル」とは?
まとめ
この記事ではデジタル庁について解説しました。デジタル庁の主な仕事としては、マイナンバーカードの普及、行政機関のシステム統一、民間企業のデジタル化支援があります。デジタル庁の発足により、今よりももっと便利で暮らしやすい世の中になることが期待できるでしょう。