「保育士=保育園の先生」というイメージが強いですが、活躍の場はさまざまで、少子化が進むなかでも保育士の需要は衰えることがないといわれています。また高校生の将来の夢ランキングでは、毎年上位にランクインしている職業です。
この記事では保育士になるための進路や資格、そして保育士になったあとの働き方などを紹介します。さらに、保育士になるために高校生のうちからやっておくとよいことにも触れていますので「子どもが好き」「子どもと関わる仕事がしたい」という人はぜひ最後までチェックしてみてください。
保育士とは
保育士とは、保護者の代わりに子どもの世話をする職業です。
保育士はただ「子守り」をするだけでなく、預かった子どもたちが生活習慣や集団生活を身につけるためのサポートもします。また、子どもの発達の度合いに合わせた指導、季節に合った遊びやイベントの企画・実施なども行います。
さらに、子どものお世話だけでなく、保護者の相談に乗ったり子どもの日中の様子を伝えることも保育士の仕事の1つです。
保育士と幼稚園教諭の違い
未就学児が通う施設は大きく「保育園」と「幼稚園」に分かれます。一般的に保育園は「生活」、幼稚園は「教育」の場であると考えられています。そしてそこで働くための資格も、保育士と幼稚園教諭では異なります。
保育士と幼稚園教諭の違いは以下の通りです。
保育士 | 幼稚園教諭 | |
資格 | 保育士資格 | 幼稚園教諭免許 |
所管官庁 | 厚生労働省 | 文部科学省 |
目的 | 保育(基本的な生活習慣を身につける) | 教育(小学校に入るための準備をする) |
勤務先 | 保育園、乳児院などの児童福祉施設 | 幼稚園 |
対象児童 | 0歳~小学校就学前 ※最長6年程度 | 3歳~小学校就学前 ※2〜3年 |
標準預かり時間 | 8時間 | 4時間 |
幼稚園教諭の資格も取得すべき?
保育士、幼稚園教諭はそれぞれ役割などが異なります。後述しますが、もちろん保育士資格のみでもさまざまな活躍の場がありますが、両方を取得すれば就職先の幅が大きく広がります。
幼稚園への勤務、園長などの役職に就ける可能性が広がるだけでなく、近年増加する「認定こども園」(保育園と幼稚園をハイブリッドしたような施設)でも2つの資格を持っていると重宝されるでしょう。
実際、保育士資格のみを保有している人がのちに幼稚園教諭の免許を取得するケースは少なくありません。2つの資格を取得することも視野に入れながら、進学先を検討するのもおすすめです。
保育士の3つの魅力
0歳から6,7歳までと幅広い年齢の子どもの世話をするため、「保育士は大変そう」という印象を持つ人も多くいます。しかし、保育士は職場環境や就職先においてさまざまなメリットがあります。
①子どもの成長を見守ることができる
保育士になる最大の魅力は、子どもの成長を見守ることができる点です。小さな子どもに生活習慣や集団行動を覚えさせるというのは、容易なことではありません。しかし、子どもが生活のなかで見せる小さな成長、運動会やお遊戯会などで感じる大きな成長を、最も近い場所から見守れるのは、保育士の醍醐味ともいえます。
また、日頃から子どもの笑顔や愛らしさにパワーをもらえるのも、保育士の特権といえるでしょう。
②ライフスタイルに合わせた働き方ができる
長年「日本は少子化」といわれていますが、保育業界は常に人手不足が続いています。家庭の事情で長時間働けず正規雇用は難しい場合でも、パートタイムや非常勤で保育の現場に立つことができます。
また、結婚や妊娠・出産でブランクができてしまっても、再就職が比較的楽にでき、子どもが小さいうちはパートタイム、大きくなったらフルタイム、再雇用での早朝保育や夕方保育勤務など、ライフスタイルに合わせた働き方を選択しやすいのも保育士のメリットとして挙げられます。
③保育園以外にも活躍の場がある
「保育士=保育園の先生」というイメージが強いですが、保育士の働き先は前述の通り保育園をはじめとした児童福祉施設です。よって、保育士資格は保育園以外でも活かすことができます。
たとえば家庭を訪問するベビーシッターや自宅で子どもを預かる保育ママ、企業や病院のなかにある保育施設などです。また、学童保育や児童発達支援、放課後等デイサービスなども、保育士資格を持っていると優遇されることが多いです。
保育士になるための進路
小さなころから保育士になるのが夢だったり、進路を考えるようになって保育士を目指したいと思ったり、高校生のうちから「保育」の道を志す人もいます。では、保育士になりたい人はどのような進路を検討するとよいのでしょうか。
専門的な進路先を選ばないとなれない?
大学の保育科や保育の専門学校に進学しなければ保育士になれないかというと、決してそんなことはありません。保育とは関係ない学部出身でも問題ありませんし、中卒や高卒でも条件をクリアしていれば保育士になることができます。
「保育を専門的に学びたい」という人は保育系の進学先を選ぶとよいですが、迷っているのであれば別の進学先を検討するのもよいでしょう。また、現場での経験を積みながら保育士免許取得を目指す場合には、高校卒業後から保育施設で働くという方法もあります。
年齢・性別を問わず誰でも保育士になれる
保育士は年齢・性別を問わず誰でも資格取得を目指せます。以前は「保母さん」と呼ばれ、主に女性が就いていた保育士ですが、近年は男性の保育士も増加しています。
大学在学中や就職後、結婚後などさまざまなタイミングで「保育士になりたい」と思った場合でも資格取得にチャレンジできる、門戸が広い職業です。
保育士になる方法は大きく2つ
保育士資格がなくても保育施設で働くことはできます。しかし、「保育士資格を取得し、保育士として就職する」ことを最終的なゴールとするならば、そこにたどり着く方法は大きく2つです。
①保育系の学校を卒業する
まずは保育系の学校を卒業するという方法です。高校卒業後、大学や短期大学の保育系学部、保育の専門学校に進学し、2年ないしは4年間保育について学びます。
定められた科目や課程を履修すれば、卒業時に保育士資格を取得できます。保育士と同時に幼稚園教諭の免許も取得したい場合には、両方取得できるカリキュラムのある学校に進学するのが最短ルートでしょう。
②保育士試験を受ける
もう1つは、保育士試験を受けて合格する方法です。こちらは義務教育を修了していればよいので、中卒以上の人であれば誰しも受けられます。ただし、保育士試験を受けるための条件は、学歴により異なります。
- 中卒:児童施設での実務経験が5年以上かつ7200時間以上
- 高卒:児童施設での実務経験が2年以上かつ2800時間以上
- 大学・短大・専門学校卒:実務経験不要(卒業していれば可)
上記の受験資格を満たしていれば、保育士試験を受験でき、合格すれば保育士として就職が可能になります。
受験資格の詳細は全国保育士養成協議会の受験資格のページを確認してください。
資格試験の出題内容や難易度
保育士は国家資格です。試験の合格率は19〜25%です。数ある資格試験のなかでも、難易度は高めの部類に入ります。試験は年に2度、春と秋に実施されます。
試験内容は筆記試験(1次試験)と実技試験(2次試験)に分かれます。筆記試験に合格した人だけが、その後の実技試験に進むことができます。
筆記試験はマークシートによる選択式で、9科目、計160問が出題されます。出題内容は以下の通りです。
科目 | 問題数 |
保育原理 | 20問 |
教育原理 | 10問 |
社会的用語 | 10問 |
子ども家庭福祉 | 20問 |
社会福祉 | 20問 |
保育の心理学 | 20問 |
子どもの保健 | 20問 |
子どもの食と栄養 | 20問 |
保育実習理論 | 20問 |
実技試験では、以下の3つの技術を審査されます。
試験 | 具体的な内容 |
音楽表現に関する技術 | 課題曲2曲を弾きながら歌う。楽器はピアノ・ギター・アコーディオンのいずれかから選択。 |
造形表現に関する技術 | 当日提示される問題文と条件に合った保育場面を色鉛筆で描く。時間は45分間。 |
言語表現に関する技術 | 3歳児クラスを想定し、課題について3分間話す。 |
保育士資格取得後の就職先や仕事内容、気になる給料
保育士資格を取得したら、いよいよ現場で働きます。気になる保育士の就職先や給料、具体的な仕事内容を見ていきましょう。
保育士資格は保育園以外でも活かせる
保育士資格は保育園でのみ活かせるものではありません。以下のような場でも活躍できます。
- ベビーシッター
- 保育ママ(家庭的保育)
- 認定こども園
- 企業内保育施設、病院内保育施設
- 学童保育施設(学童)
- 放課後等デイサービス
- 児童福祉施設(施設保育士)
- 病児保育施設
保育士を目指す人の多くは「保育園で働くこと」を目標としていますが、資格取得を目指してさまざまなことを学ぶなかで、働きたい場所が変わる可能性もあります。
ぜひ、自分の働き方や性格に合った就職先を見つけてみてください。
保育士の平均年収
厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査によると、2019年度の保育士の平均年収は約363万円、月収は約24万円。2017年度の平均年収は約342万円だったので、2年間でおよそ21万円も増加しています。
給料は公立や私立、認可施設かそうでないかによっても異なりますが、保育士の給料が安いことが度々メディアなどで取り上げられたこともあり、少しずつ見直されているようです。
ちなみに、幼稚園教諭のほうが給料が高いイメージもありますが、平均年収はどちらも同じくらいです。
保育園の1日の流れ
保育園に就職した場合、1日のスケジュールはどのようになるのでしょうか。ある保育士の1日の流れを例として紹介します。
時間 | 内容 |
7:00 | 出勤(※早番の場合。遅番は9時出勤) |
7:30 | 園児の受入開始 |
9:00 | 登園完了・クラス活動開始 |
11:00 | 昼食配膳・食事 |
12:00 | 昼寝の準備 |
12:30 | 午睡 |
14:30 | 起床・おやつの準備 |
15:00 | おやつ・帰りの会 |
16:00 | 降園開始 |
18:30 | 降園完了 |
19:00 | 退勤(※遅番の場合。早番は16時退勤) |
子どもの世話だけじゃない!保育士の仕事
保育士の仕事のメインは子どものお世話をすることですが、当然それ以外の事務仕事などもあります。朝は部屋の掃除や1日のスケジュール確認から始まり、お昼寝中は連絡帳を書くなどの事務作業、子どもが降園したあとも掃除や片付け、行事の準備、会議などやることは多いです。
決して楽な仕事ではありませんが、シフトや休みの管理が徹底されている、子育て中の保育士はわが子のイベント時に休みがとりやすいなどのメリットもあります。
高校生が保育士を目指してやっておくとよいこと
高校生が保育士を目指す場合、最も大切なのは志望校への進学に向けて勉強したり、卒業後に働ける保育施設を探したりすることです。進学・就職に向けた努力以外にも、高校生のあいだにやっておくとよいことをいくつか紹介します。
子どもと関わる機会をもつ
子どもと関わるボランティア団体に加入したり、休日や空いている時間に保育関連の施設でのイベントに積極的に参加したりして、子どもたちと関わる機会を持ちましょう。
子どもから学ぶことも多いですし、推薦で進学する際や就職活動の際には、この経験をアピールすることができます。
蒲田保育専門学校のオープンキャンパスでは、先輩保育士から話を聞いたり、実際に1・2歳園児と触れ合う体験ができます。興味のある人はぜひ参加してみてください。
現場で生きる知識・技術を習得する
空いている時間には、現場で活かせる知識や技術を習得しましょう。手遊びや歌を覚えたり、工作や絵の練習することは、実技試験や現場で役立ちます。
子どもが喜ぶ手遊びなどの知識は、インターネットからも得られますし、市立図書館などにいくと参考書籍も見つかるでしょう。
「月に1個作品を作る」「週に1個手遊びを覚える」など、目標を設定すると取り組みやすいです。
可能ならピアノも練習
保育園では歌を歌う際などに保育士がピアノを弾きます。ピアノが弾けない先生はCDなどを使いますが、弾けないより少しでも弾けた方がよいので、できるならばピアノの練習もしておくことをおすすめします。ピアノが弾ければ保育士資格取得時の実技試験でも活かすことができます。
簡単な曲を弾きながら歌えるレベルを目指して、ぜひコツコツと練習してみてください。
まとめ
今回は、保育士になるための方法や、保育士の仕事内容について解説しました。保育士は子どもの成長を見守りながら、集団生活や生活習慣を教える大切な仕事です。近年は保育士の低所得が注目され、平均年収もアップしていますし、慢性的な保育士不足もあってライフスタイルに合わせた働き方が比較的しやすい職業となっています。
保育士を目指す人はぜひ今からできる努力をしながら、資格取得に向けた進路を考えていきましょう。