人は、知っている世界・職業からしか将来を想像できません。世の中には、さまざまなプロの仕事があります。それを知らずに生きてきた多くの大人が、働きながら自身の仕事やキャリアについて悩みます。
今回は、筆者が大人なって知ったプロの仕事を20個紹介します。
仕事そのものや仕事への関わり方について視野を広げ、知らず知らずに見落としている自分の「好き」や「興味」へ気付き、将来に繋げる想像をしてみましょう。
就活ルール廃止で増える「就活迷子」
2021年卒の就活から、経団連が定める就活ルールが撤廃されました。
就活ルールとは、企業の採用活動に関するルールのことです。就活が学生生活や学業の妨げにならないよう、定められた採用活動のスケジュールを守るよう求められていました。
もっと詳しくいうと、大学3年生(卒業年度に入る直前)の3月1日に企業説明会が解禁され、大学4年生(卒業年度)の6月1日以降に選考開始、正式な内定日は10月1日以降と決められていました。
この就活ルール廃止により、企業側は学生への早期接触を狙って採用活動が活発になり、インターン受け入れの枠も広がりつつあります。学生も、大学1年生など早くから企業や社会人と接触することになります。
一見いいことだらけに見えますが、一方で増加しつつあるのが就活迷子です。
企業側がインターンの受け口を広げたことで、インターン選考に落ちたり、優秀な学生に刺激を受けたりしながら、自分のキャリアをしっかりと考え直す機会が少なくなってしまいます。そのため、学生は就活を進めながら「自分は何をやりたいのか」だんだん分からなくなってしまうのです。
新卒の約30%が3年以内に離職
日本では、新規高卒就職者の約4割、新規大卒就職者の約3割が、就職後3年以内に離職するという状況が20年以上続いています。
初職の離職理由についての調査をみると、「仕事が自分に合わなかった」が43.4%で圧倒的に多く、次いで「人間関係がよくなかった」「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかった」が続きます。
これは、学生の頃に自分のキャリアをしっかり見つめ行動する機会が少なかったため、いざ就職したときに「なぜこの仕事をしているのか」「自分は何をやりたいのか」という根本的な悩みに直面することになった現れだといえます。
モラトリアム長期化
モラトリアムとは、身体的には大人であっても、大人としての社会的責任を負うことを猶予されている時期のことです。このモラトリアム期間にさまざまな経験を通じて、「自分は何者なのか」「社会とどう関わっていきたいのか」など模索していきます。
今、将来の選択肢は多様化し、自分の将来を選択することがどんどん難しくなっています。多くの高校生が当たり前に進学するようになり、昔よりもたくさん勉強する高校生が増えてきています。その結果、自分自身やキャリアについて考える時間がなくなり、「モラトリアム」が長期化するようになりました。
現代社会で、自分と他者が幸せに暮らすためにどう生きていきたいかをもっと幼い頃から考える必要があります。
海外や宇宙にかかわる仕事
ここからはみなさんの「仕事観」を広げるために、あまり知られていないプロの仕事を紹介していきます。
まずは海外や宇宙が好きな人向けに、あまり知られていない仕事を3つ紹介します。
グランドハンドリング
グランドハンドリングとは、航空機のパイロットに指示を送り航空機を停止位置まで安全に誘導する仕事です。乗客が乗降するためのボーディングブリッジの装着や、給油作業などに影響を及ぼすため、正確な指示が求められます。
フライトディレクター
フライトディレクターとは、宇宙飛行士や国際宇宙ステーション(ISS)の安全性を確認・指示するチームを統括する仕事です。例えば、「宇宙飛行士が生活する空気流量は足りているか」「ISS内の電力は十分か」などの確認・指示を出しています。
生死に関わる重要な確認・指示をチームで協力しながら、365日・24時間体制で見守る重要な仕事です。
国連職員
国連職員とは、国連あるいは国連機関に所属し、ニューヨークやジュネーヴにある本部のほか、フィールドと呼ばれる世界各地の事務所で勤務する仕事のことです。
紛争・人権・貧困・気候など、さまざまな世界中の問題解決に取り組むのが仕事です。たとえば、子ども兵士の武装解除や人道危機の際の支援調整、その他後方支援の提供などにあたる職員がいます。
ものづくりにかかわる仕事
ものづくりが好きな人向けに、あまり知られていない仕事を3つ紹介します。
CMFデザイナー
「CMF」とは、モノの表面を構成する3要素「COLOR(色)・MATERIAL(素材)・FINISH(加工方法)」を指しています。つまり、CMFデザイナーとは色・素材・加工方法といったモノの表面をデザインする仕事のことです。
CMFデザイナーは日本では聞き慣れない職種ですが、ヨーロッパでは数十年前からCMFの重要性が認められており、多くのCMFデザイナーが存在します。
たとえば工業製品をつくるとき、日本ではまず形状・機能を含む企画が決まってから、色や素材を考える流れが多いです。CMFデザイナーは、ユーザが一番最初に気にする表面からモノをデザインしていくことを重要視して実践しています。
文化財修復技術者
文化財修復技術者とは、絵画や古文書、建造物などの文化財の傷みを診断し、修復を行う仕事です。文化財は唯一無二のものであるため、修復作業には失敗が許されません。一人前になるまでの長年の実務経験や、繊細で地道な作業を根気強く続けられる努力が求められます。
美術商(ギャラリスト)
美術商(ギャラリスト)とは、画廊やギャラリーなどを経営し、芸術作品を販売する仕事です。無名の芸術家を発掘する芸術的センスや教養、過去作品の再評価などの鑑定力や国内外の美術家とのつながりを作る行動力や情報収集能力、語学力が求められます。
インダストリアルデザイナー
インダストリアルデザイナーとは、自動車・カメラ・事務機器などさまざまな工業製品をデザインする仕事です。衣類と室内家具以外の製品は、ほとんどインダストリアルデザイナーが手掛けます。芸術的なセンスと工学的知識のほか、消費者の好みや社会動向などの情報を収集し判断する理解力が求められます。
医療現場にかかわる仕事
医療に憧れがある人向けに、あまり知られていない仕事を3つ紹介します。
胚培養士
胚培養士(はいばいようし)とは、胚(受精卵)を扱う専門職です。主に不妊治療に携わり、体外受精させて母体に戻すまでの過程において、胚凍結や胚融解、培養などを行うのが主な仕事内容です。産婦人科領域の高度な知識が必要とされています。
監察医
監察医とは、自治体の知事によって任命された行政解剖を行う医者のことです。行政解剖とは、犯罪性のない遺体(自宅での突然死など)の死因を解明するために行う解剖のことです。法医学という高度な知識はもちろん、犯罪の見逃しを防止する観察力、遺族に寄り添える気持ちが求められます。
ウイルス学者
ウイルス学とは、非細胞性生物群(ウイルス、ウイロイドなど)を取り扱う生物学の一つです。ウイルス学者は、ウイルス研究と感染症対策を行う仕事です。人類が感染症を克服するためのワクチン開発はもちろん、ウイルス発生の予測やその防止対策を考えます。
医療や保健衛生の分野、食料生産・環境保全といった問題の解決に貢献することが期待されます。
おしゃれにかかわる仕事
おしゃれが好きな人向けに、あまり知られていない仕事を3つ紹介します。
美容家
美容家とは、美容に関する知識やスキルを活かして美容法やヘアメイクなどを提案する仕事です。たとえば、レッスンを企画・開催したり、雑誌やネットで美容に関する記事を書いたりオリジナル商品を販売したりするなど、さまざまな活動をしています。最新トレンドを追い磨き上げるセンスはもちろん、自分の強みをアピールするPR力が必要です。
ディスプレイデザイナー
ディスプレイデザイナーとは、店舗・テーマパーク・イベント会場などの展示空間を演出する仕事です。限られたスペースの中で、いかに商品を魅力的に魅せ、伝えたい世界観を作ることができるか期待されます。デザイン力はもちろん、イメージ図を描き起こす画力や知識が必要です。
テキスタイルデザイナー
テキスタイルデザイナーとは、アイテムの素材を選び、生地の色や図柄をデザインする仕事です。アイテムの用途やデザイン、機能性などを踏まえ、素材となる糸や生地の染め方、織り方、加工方法などを決めて生地を完成させていきます。豊かな色彩感覚や、流行や新情報をキャッチアップし取り入れていく力が求められます。
本や雑誌にかかわる仕事
本や雑誌が好きな人向けに、あまり知られていない仕事を3つ紹介します。
ブックデザイナー(装丁家)
ブックデザイナーとは、ブックカバーや表紙、扉、帯など本の外観をデザインする仕事です。作家や編集者とは別の視点から、本の魅力をデザインするクリエイティブディレクター的な役割を果たします。作品から感じる魅力をデザインに反映する読解力や、印刷や製本に対する知識が求められます。
校正・校閲者
校正・校閲者とは、書籍や雑誌、広告などの原稿と校正刷り(ゲラ)を照らし合わせて、間違いがないかをチェックをする仕事です。最近では、文中に記載される事実確認や、内容の整合性を確認する校閲の需要が高くなっています。地味な作業を淡々とこなすこと集中力や根気、どのような文章でも興味をもつことができる好奇心旺盛な姿勢が期待されます。
シナリオライター
シナリオライターとは、映画やドラマ、舞台、ゲームなどを作るのに必要なシナリオを執筆する仕事です。小説家が物語を文章表現で描くのに対して、シナリオライターは映像描写で物語を描きます。長時間の執筆作業ができる根気や、多趣味でさまざまなジャンルに挑戦すること抵抗のない人におすすめです。
自然にかかわる仕事
自然が好きな人向けに、あまり知られていない仕事を3つ紹介します。
自然保護官
自然保護官とは、環境省の職員として自然保護全般に関する業務を行う仕事です。たとえば、国立公園の管理や野生鳥獣の保護、外来種対策、エコツーリズムなどの自然とのふれあいを推進するなどのさまざまな仕事があります。
フローリスト
フローリストとは、花で作品を作る仕事です。たとえば、冠婚葬祭やショーウィンドウの飾り付け、個人へのブーケ作成をデザインして生けています。花や人を喜ばせることが好きなのはもちろん、相手の気持ちを汲み取ることができる人、特別な瞬間を花で演出する創造力が求められます。
スポーツにかかわる仕事
スポーツが好きな人向けに、あまり知られていない仕事を3つ紹介します。
スポーツトレーナー
スポーツトレーナーとは、スポーツをする人への技術指導や健康管理、ケガの予防やリハビリなど行う仕事です。指導対象は、プロアスリートや実業団のほか、フィットネスジムや地域のスポーツチーム、部活動など一般人などさまざまです。人体の構造や栄養学、運動生理学などの専門知識を常にアップデートしていくことや、高いコーチング能力が求められます。
スポーツ関係の営業職
スポーツ関係の営業職は、自社スポーツ製品を売ったり、スポーツクラブの場合は、スポンサーシップやチケットを作成・販売したり、スポンサー商品や提案書の作成、イベント企画をしたりします。関わるスポーツや商品、所属チームが好きなことはもちろん、それを成長させたいと思う気持ちが大切です。
好きなことがない人がやるべきこと
就職のことを考えても、好きなことがなくて悩む……という人は、まずは自分の興味・関心を掘り下げてみるのがいいでしょう。まずは以下の4つの方法を試してみてください。
少しでも興味のあることはとにかくやってみよう
好きなものを聞かれたときに思い浮かばない人も多いでしょう。そんな方は、少しでも興味のあることは一度やってみることをおすすめします。
このとき大事なのは、そのことについてネットで調べ過ぎたり、損得を考えたりしないことです。先入観が大きくなると、やらない言い訳づくりにつながってしまいます。
まずは、友達の趣味を見に行って教えてもらったり、家族旅行でアクテビティをやってみたりするなど身近なところから挑戦してみてもいいかもしれません。
いろんな大人に会えるアルバイトをやってみよう
学校で禁止されていなければ、アルバイトをやってみるのもおすすめです。アルバイト先は、大学生や正社員・パートとして働く人などさまざまな人がいるところがいいでしょう。
自分のコミュニティ外の人たちが、学校で何を学んでいる・学んできたのか、普段どんなことをしているのか、これまでどんなことがあったのかなど知ることはあなたの視野を広げてくれるでしょう。
興味のある分野で、いいなと思う人のSNSをフォローしよう
エンタメ・ゲーム・ファッションなど自分の好きな分野でSNSを検索したり、たまたまテレビや雑誌などで見たりして、いいなと思った人のSNSをフォローしてみるのがおすすめです。
その人の仕事やプライベート、価値観や世界観などさまざまなことに触れられるはずです。いいなと思った人をどんどんフォローして共通項を見つけ、自分が将来ありたい姿を想像してましょう。
本や漫画・映画にたくさん触れて、興味のあることを見つけてみよう
気になる本や小説、映画をたくさん見ることは、新しい世界を知るのに手っ取り早い方法です。面白そうだと思うものはもちろん、料理・仕事・芸術など普段は触れることのない舞台を選ぶと世界が広がるかと思います。
ここでは紹介しませんでしたが、自己分析や将来の夢を診断できる無料サービスを使ってみるのもおすすめです。
まとめ
今回紹介した仕事は、世の中のほんの一部で世界にはまだまだ多くプロの仕事があります。これをきっかけに、自分の興味・関心を広げたり、他の仕事を調べたりして将来に役立ててみてください。