高校生に身近な社会問題&解決に向けてできること

Edv Magazine 編集部

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高校生に身近な社会問題&解決に向けてできること

授業でSDGsや社会問題が取り上げられたことはありませんか?

社会問題をテーマにした弁論大会や小論文コンクールがあるように、高校生が社会問題解決に向けて提案や行動することが増えてきています。

なかには全校を挙げて社会問題に取り組む学校もあり、ボランティア団体や企業と提携していることもあるようです。

今回は、高校生にとって身近な社会問題をいくつか紹介します。社会問題解決に向けて動くときに何をすべきかも解説しますので、是非チェックしてみてください。

参考:SDGsで高校生にできる11のこと

身近な社会問題8選

早速、身近な社会問題をみていきましょう。日常的に新聞やニュースで触れる機会も多いため、目を通してみてください。

少子高齢化

日本では、人口に占める高齢者の割合が増える「高齢化」と、生まれる子どもの数が少なくなり若い年代の割合が減る「少子化」が同時進行しています。そのため、さまざまな分野で問題が起きているのです。

たとえば、公的年金制度の財源が少なくなりつつあります。日本の年金制度は、現役世代が支払った保険料を高齢者に給付する「賦課方式」にて運営されています。若い人が支払う保険料が増額したり、高齢者が受け取れる金額が減ることが予想されており、既に年金受給開始年齢の引き上げ(原則65歳から)も始まっているのです。

また、高齢者介護の担い手となる人手も不足しつつあります。介護業界の労働環境向上などで改善しようという働きはありますが、今後少子高齢化が更に進めば根本的な改革が必要です。

地域格差

地域ごとに生活レベルのギャップが生じる「地域格差」も、日本が抱える大きな問題です。

たとえば過疎化している地域では、病院や医者が少なくなり、一定のレベル以上の医療が受けられない、入院ベッド数に余裕がないなどの問題が起きています。

さらに児童数の低下から小・中学校の統廃合が相次ぎ、近くに通える学校がない家庭も増えています。片道1~2時間かけて通学する子どもたちも珍しくありません。また塾・予備校・習い事の教室も少ない傾向があります

地域の労働人口が少なると、税金が減ります。税金が減ると公共福祉に回す財源も少なくなっていきます。住まいに関わらず基本的な福祉・教育が受けられる施策が地域に求められているのです。

職業格差

一部の職業で、労働環境の悪化給与水準の低下が問題として挙げられます。

たとえば、介護士や保育士の低賃金問題があります。介護福祉士試験や保育士試験などの国家試験を突破して就職しても業界の傾向として賃金が低く、担い手を確保しにくくなっています。

しかし、高齢化に伴って介護を必要とする高齢者が増えたり、共働き家庭が増えて保育を必要とする家族が増えたりしており、慢性的な人手不足が発生しているのです。

また、学校教員の過重労働も話題になっています。通常の科目授業だけでなく、部活動の引率・生活指導・保護者対応・修学旅行・校外学習など業務量が多く、残業代なしで朝から晩まで働く教員も少なくありません。

社会に必須とされている職種の労働環境を根本から見直す必要があります。

ジェンダーギャップ

性別によって進学や就職に差異をつける、ジェンダーギャップ(男女格差)も問題です。

男女格差を測った「ジェンダーギャップ指数2021」では、日本は156か国中120位で、先進国最低レベルを記録しています。

2018年に一部の大学医学部入試で男子と女子で異なる採点方式を採用していることが明らかになりました。本来であれば全員同条件で採点すべきであるにも関わらず、試験の出来不出来に関係ない差別的な待遇がされていたことにショックを受けた受験生は多く、社会問題になりました。

また、都立高校の一般入試では、全国で唯一男女別の定員が設けられています。男子と女子が全く同じ点数を取ったとしても女子のほうが不合格になりやすい傾向にあり、女性差別であるとして指摘を受けています。

ジェンダーの多様化対策

昨今ジェンダーの多様化が話題になるとともに、それに合わせた社会制度ができていないことが問題になっています。

たとえば性的マイノリティであるLGBTQのうち、同性カップルで夫婦同然に過ごしていても戸籍上の「家族」として認められません。「家族」でないと適切な行政サービスを受けられなかったり、会社の看護休暇や家族手当が適応されない、相続に置ける権利関係を主張できないといった不利益があります。

こうした問題を受け、東京都渋谷区では「渋谷区パートナーシップ証明書」を発行するようになりました。男女の婚姻関係と変わらない実質的なパートナーであることを証明するためのもので、登録するカップルが年々増えています。渋谷区以外にも現在全国100以上の自治体でパートナーシップ制度を導入しています

ワークライフバランス

2018年6月に成立した働き方改革関連法を皮切りに、労働環境の是正やワークライフバランスへの関心が高まっています。

たとえば、うつ病やメンタルヘルス予防対策に向けて行われている「ストレスチェック」の義務化や、同じ仕事であれば雇用形態に関わらず同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金法」も施行されました。また全従業員が有給休暇を年5日以上取得するように義務づけられました。

テレワーク・時短勤務・フレックス勤務など働き方の幅も広がり、10年後20年後には今までにない仕事環境が生まれているかもしれません。

自殺

日本に住む15~34歳の死因のうち、第1位を占めているのが自殺です。2020年に自殺と断定された小中高校生の数は479人に達し、過去最悪を記録しました。

職場・学校・家庭での問題、金銭や恋愛のトラブル、薬物やアルコールへの依存など自殺に至る理由は人によりさまざまです。しかし、困ったときに適切な医療・福祉・相談先に繋がれるようなネットワークが欠けていることは確かでしょう。

社会で暮らす人たちがどう助け合っていくか、どう気づきどう行動していくかを意識する重要なきっかけになりそうです。

参考:相談先一覧|自殺対策|厚生労働省

世界の社会問題7選

ここからは日本に限らず世界でも起きている社会問題をチェックしていきましょう。一見身近に感じられないテーマもあるかもしれませんが、少し視野を広げるだけでさまざまな問題が見つかります。

貧富の格差

国際NGOオックスファム・インターナショナルによると、ビリオネア、つまり10億ドル(約1,100億円)以上の資産を持つ人は世界で約2,000人いるとされています。

その2,000人の総資産は10兆2000億ドル(約1081兆2300億円)ほどで、これは世界の約6割の資産に該当し、世界の最貧困層46億人の財産を上回っているのです。たった2,000人の資産が230万倍の人以上の資産を独占しています。

このような貧富の格差は年々広がっており、富める人はますます富み、貧しい人はますます貧しくなるという状況が続いているのです。

教育の格差

世界には学校が近くにない、学校に通う時間やお金がないという理由で就学できず、十分な教育が受けられない人々が存在します。たとえ家計を助けるために就業しても単純労働しかできず、ときには足し算引き算や読み書きができないことに目をつけられ、給与明細や書類をごまかされてしまうことも少なくありません。

教育を受けられれば社会で生きていく術を身につけ、手に職をつけて貧困を脱することができます。「教育を受ける意味」を改めて問い直し、制度構築のため何をしていけばいいか考える必要がありそうです。

飢餓

慢性的な貧困、干ばつや洪水などの自然災害、食料自給率低下などが原因となり、今日食べるパンを手に入れるのがやっとという人がこの世界にはたくさんいます

貧富格差や教育格差とも連携する社会問題ではありますが、先進国のフードロスや食べ残し問題を見ていると、無駄の多さに気づくかもしれません。世界全体に十分な食料を行き渡らせるにはどんな方策があるのか、考えてみましょう。

安全な水質

安全な水質を保てない地域では、劣悪な水環境を原因として亡くなる人がいます。

濾過されていない濁った水を飲むしかなく、結果胃腸炎になって脱水症状に陥ったり、下水道が完備されていない地域のトイレを経由して感染症が広まったりしているのです。本来であれば命の源となるはずの水が、人の未来を奪っているのです。

自宅に水道が通っていないために池や川などを何往復もして水を運ぶ子どもたちもおり、劣悪な居住環境も問題視されています。

気候変動

地球温暖化を始めとする気候問題も、日本だけでなく世界で取り組むべき問題です。平均気温の上昇、ハリケーンや大寒波などの異常気象、海氷融解による海面上昇などさまざまな現象が起きています。

今後、海洋生態系が崩れることで魚が捕れなくなったり、気温が変わったことで野菜や果物が育たなくなることもあるでしょう。また、感染症を媒介する蚊やネズミなどの生息域が変化することで、直接的に人の健康を脅かす可能性も出ています。

エネルギー枯渇問題

化石燃料への依存が世界的に高まっていることを受け、近い将来エネルギーが枯渇し、経済活動や生活が維持できなくなることが危惧されています

火力発電・水力発電・原子力発電のほか、再生可能エネルギーとして風力発電や太陽光発電も話題になっていますが、エネルギー枯渇問題を根本から解決するレベルには至っていません。持続可能なエネルギー社会を構築するために何ができるのか考えていく必要があります。

社会問題の解決に向けてできることとは?

では、社会問題の解決に向けて私たちができることは何でしょうか。研究者や政治家でないと貢献できないと考えるかもしれませんが、高校生でもできることはたくさんあります。

①身の回りから始める

まずは、自分の身の回りでできることから始めましょう。無駄な買い物をしない、レジ袋や過剰な包装を断る、食べ残しをしない、使わない電気はこまめに消す、冷暖房の温度設定を見直すなど、手軽にできることはたくさんあります。

どんなに世界的な発明ができたとしても、世界で暮らすひとりひとりの意識が変わらないことには、大きな変化は期待できません。身近でできることから始めていきましょう。

②日常的にニュースをチェックする

日常的に社会問題に関するニュースをチェックするのも大切です。日本や世界でどんなことが問題として取り上げられているのか、同世代の若者たちがどんな社会的なアクションを起こしているのか、社会問題の根本にはなにがあるのか、などアンテナを張って情報収集や思考を続けましょう

③ボランティアに参加する

ボランティアに参加し、実際に手足を動かして社会貢献するのもおすすめです。高齢者や障がい者福祉施設での活動、子どもの教育環境を守るための募金活動、自然環境を見直すための広報活動、国際交流イベントの運営スタッフなど、ボランティアの種類はさまざまです。

本やネットでは得られない生の体験をすることで、これまで見えてこなかった世界が見えてきます

④弁論大会や小論文コンクールに参加する

社会問題をテーマにした弁論大会やコンクールに参加するのも1つの手です。同じ高校生が社会問題をどう捉えているのか知れるほか、社会問題に対する自分の意見を掘り下げて考えるきっかけにもなります

⑤投票に行く

選挙権が18歳に引き下げられたことで、高校生も投票に加われるようになりました。「この人なら社会を変えてくれそう!」「気になる党があるから、応援してみよう!」と考えたり、きちんと投票に行くことが社会に関わる第一歩です。

⑥世界の事例を調べる

世界の事例を調べ、日本と比較してみるのもよいでしょう。「日本の自殺率が高いというけど、世界の平均はどれくらいなの?」「介護や保育の人手が足りている国は、どんな方策を取っているの?」など、自分の興味・関心に合わせて調査を進めます。

成功事例から打開策を読み取ることは、テキストや参考書だけではできない学習です。ネット・図書館・公官庁の情報を参考に、まずは情報収集してみましょう。

⑦大学に進学して学びを深める

大学に進学して、学びを深めるのもよいでしょう。大学には専門分野に秀でた教授陣がおり、学びを支える環境や人的ネットワークも充実しています。

社会問題をイメージすると社会学や社会科学系の学問をイメージしますが、解決の糸口はそれだけとは限りません。

文学部で文化・背景・歴史を読み解きながら社会問題を調べてもよいでしょうし、理工学部で再生可能エネルギーの開発や機動力のある救急車両を考案することもできます。また、心理学部でメンタルヘルスや自殺問題を研究したり、国際学部で貧困地域の都市開発や教育格差改善に取り組むのもよいでしょう。

大学には、無限ともいえる学びの場が用意されています。興味を絶やすことなく飛び込めば、新しい世界が開けるかもしれません

まとめ

社会問題は、特定の国や年代だけが改善に向けて取り組むものではありません。老若男女問わず誰しもできる範囲で始められるものであり、高校生も例外ではないのです。まずは身近な社会問題について調べ、どんな解決策がありそうか考えていきましょう。興味があればボランティアや弁論大会に参加したり、より深く学べそうな大学をリストアップしたりすることで、解決への糸口が掴めるかもしれません。

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