高校1年生の秋頃に迎える文理選択のタイミングで、「どう決めればいいの?」「後悔ない選択をしたい!」と悩む人は多いのではないでしょうか。高校時代の学びを左右するだけでなく、進学先や就職先に大きく影響する文理選択は、適当に決めず十分将来を見据えたうえで決めたいものです。
今回は、文理選択のポイントや文系・理系それぞれのメリット・デメリット、陥りがちな文理選択の落とし穴について解説します。
文理選択とは
文理選択とは、文系・理系どちらの科目を中心に学ぶのか決めることを指します。高校1年生の秋頃に文理選択を迎える学校が多く、2年生以降は選択科目やコースに応じて勉強します。
文系科目:現代文、古文、漢文、日本史、世界史、地理、現代社会、倫理、政治経済
理系科目:数学、物理、化学、生物、地学
英語は文系でも理系でも必修科目として定めている学校がほとんどです。
文系のメリット
まずは、文系を選択するメリットについて紹介します。
大学の選択肢が多い
理系に比べて、文系科目を中心に学ぶ大学や学部は圧倒的に多いです。文系学部がゼロという大学のほうが珍しいため、進路として多様な選択肢をもつことができます。
豊富な就職先が選べる
業種や職種の選択肢が幅広く、専門職や公務員にも広く門戸が開かれています。理系研究職や医師など特殊な専門性が必要なものを除き、「何にでもなれる」のが大きなメリットです。
文系のデメリット
反対に、文系を選択するデメリットについて紹介します。
勉強内容が仕事に直結するとは限らない
一口に「文系」といっても学ぶ内容は幅広く、勉強内容が仕事に直結するとは限りません。例えば、大学で文学を専攻したから出版社や編集者に、経済学を専攻したから銀行や金融系に優先的に就職できるわけではなく、実際には学部や学科の枠は取り払われ、全員同じ土俵で就職活動を行います。
大学院進学率が低い
理学部の41.8%、工学部の36.4%の学生が大学院に進学するのに対し、人文学系から大学院に進学する学生は18.3%となっており、文系の大学院進学率は低い傾向にあります(※)。
この数値は、文系の大学院で専門分野に特化して学ぼうと思っても、「専門にしている教授が少ない」「開講している大学院が遠方や海外にしかない」という可能性を示しています。
参照:中央教育審議会大学分科会「大学院の現状を示す基本的なデータ」
理系のメリット
次に、理系を選択するメリットについて紹介します。
就職に直結しやすい
世の中には研究職・エンジニア・アナリストなど、理系ならではの専門性が求められる職種があります。医学を専攻していたら医療分野、建築を専攻していたら建築分野といった具合に、専攻分野と業界が直結しやすいのが特徴です。
大学院進学する人が多い
理系は文系よりも大学院進学が一般的です。専攻分野でトップを走る教授に師事したり、研究の盛んな大学院に留学したりと、専門性を高める機会が豊富に用意されています。院卒後は、もちろん全ての人が自分の好きな研究を仕事にできるわけではありませんが、研究実績をもとに関連企業や機関への就職も期待できます。
理系のデメリット
反対に、理系を選択するデメリットについて確認します。
実験や実習で忙しい
文系学部より実験や実習が多いため忙しく、寝る間を惜しんでレポートや課題に取り組むときもあります。サークルやバイトも並行して行わなければならない場合は、もちろん学業を優先しつつ、バイトのシフトや、サークルへの出席頻度を計画的に調整していく必要があるでしょう。
学費が高い
最新の実験設備が整っている大学は、その分学費が高くなる傾向にあります。また私大は、人件費にお金をかける傾向にあるため、教授が豪華な大学ほど授業料は比較的高いです。
文系・理系の選び方
文理選択において、どんなポイントを重視すればよいか。ここでは選び方のポイントを解説します。
学びたい科目で選ぶ
まずは自分が学びたい・興味のある科目があれば、その科目を重視して決めましょう。「好きこそ物の上手なれ」と言われるとおり、興味・関心が高い科目であれば、勉強が苦になりにくく、成績も伸びやすくなるでしょう。また将来の夢にもつながるかもしれません。
得意な科目で選ぶ
自分が得意な科目で選ぶ方法もおすすめです。必死にテスト勉強しなくても良い点数を取れてしまう科目や、授業内容や教科書がするすると頭に入ってくるような科目が当てはまります。得意科目は自己平均点を引き上げてくれる武器になり、受験でも自信となりえるので、文理選択のときに安易に切り捨ててしまわないよう気をつけてください。
現代文・古文・漢文・日本史・世界史などが得意であれば文系を、数学・化学・物理・生物などが得意であれば理系を選びます。
将来就きたい職業で選ぶ
将来就きたい職業から選ぶのも一つの手です。例えば「医者になりたい」という夢があれば、大学で医学部に進む必要があるため、自ずと理系を選択することになります。もちろん文系に進んでからも医者を目指すことはできますが、理系から行くよりハードルが高くなりやすいです。
将来やりたい仕事がある人は、その仕事をするにはどんな資格や専門性が必要か、そしてそれらを身につけるためにはどこで何を学ぶ必要があるか……と目標から文系理系どちらに進むほうがよいか考えてみてください。
参考までに文系理系それぞれに人気の業界をあげておきます。
文系に人気の業界:サービス・インフラ、メーカー、金融、ソフトウェア・通信、小売
理系に人気の業界:IT、自動車、工作機器、電子部品・半導体、化学、製薬、化粧品、食品、土木・建築
志望大学で選ぶ
志望大学が決まっている場合は、学部や学科の受験内容・募集要項に合わせて文理選択していきましょう。
例えば早稲田大学文学部を志望する場合、外国語(英語・ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語から1科目)、国語(国語総合・現代文B・古典B)は最低限履修しておく必要があります。それに加え、地理歴史(世界史B・日本史Bから1科目)、数学(数学ⅠA・数学ⅡBから1科目)、理科(物理・化学・生物・地学から1科目)のうちどれか1つを選択して受験する必要があるため、文系を選択するケースが一般的です。
一方で、東京理科大学の工学部を受験する場合、数学ⅢCが必須です。多くの高校では数ⅢCを履修するためには理系コースを選択する必要があるため、自ずと理系を選択することになります。
【NG例】文理選択の落とし穴
ついやってしまって失敗する文理選択の落とし穴が存在します。安易に決めて後悔することのないよう注意しておきましょう。
親や友達の言う通りにしてしまう
親や友達からのアドバイスを参考にするのは有意義ですが、言われた通りに文理選択してしまうのはNGです。仲のいい友達が文系を選ぶから自分も文系、と流されて決めてしまうのも避けましょう。もし誰かに言われて文理選択して、肌に合わなかった場合、その人のせいにしてしまいかねません。
「なぜ自分が文系(理系)を選びたいか」「アドバイスされた内容のうち、納得できる点・できない点はどこか」をしっかり見極め、必ず自分の意志で決めましょう。
文転・理転を前提にしてしまう
理系の人が文系に変わることを「文転」、その逆を「理転」といいます。「あとで文転・理転すればいいから今は適当に決めておこう」と思っても、いざ文転・理転を考えるときに上手くいかないケースがほとんどです。
例えば理転をする際、もともと理系を選択していた人たちとのギャップを埋めるために、日頃の勉学に加えて、さらに努力を重ねなければなりません。生半可な決意では挫けてしまうでしょう。
もちろん、ちゃんと検討したうえで文系・理系に進むことを決めて、後々やはりどうしても文転・理転したいというケースはあります。文転・理転を前提とした選択だけはしないように気をつけてください。
文理選択に悩むときはどうする?
文系理系のメリットを比較したり、学びたい科目から検討したりしても、どうしても迷ってしまうこともあるでしょう。ここでは、文理選択に悩むときにおすすめの行動を紹介します。
オープンキャンパスに参加してみる
悩んでいるときは視野が狭くなりがちです。そんなときは大学のオープンキャンパスに参加してみましょう。「自分の偏差値だと難しそう」「縁がなさそう」といった先入観を取っ払い、気になる大学は片っ端から足を運んでみてください。
先輩の話を聞いたり模擬授業を受けたりしているうちに、自分が興味を持てる大学や学部が見つかるかもしれません。
仕事図鑑を眺めてみる
世の中にはどんな仕事があるのか調べるために、仕事図鑑を眺めてみるのもよいでしょう。仕事図鑑の例として、村上龍『新13歳のハローワーク』、職業なるにはナビが挙げられます。片っ端から目を通してもよいですし、趣味や好きなこと別に索引を引いてみてもよいです。少しでも興味を持てた仕事のページに付箋を貼り、必要な資格や勉強について調べているうちに、自分がチャレンジしたい分野が明らかになるでしょう。
適職診断を受けてみる
適職診断や適性診断を受けて、自分の性格や向き・不向きを判断してみるのもおすすめです。自分では気づいていなかった得意分野に気づかせてくれるだけでなく、考えてもみなかった職業や学部・学科について勧めてくれるかもしれません。新たな可能性を探る一つのきっかけとして有効です。
先生や先輩に相談してみる
先生や先輩が文理選択を決めたポイント何だったのか、後悔したことや失敗したことはないかなど、話を聞いてみるのも効果的です。
文理選択の基準は人それぞれなので、様々な考えに触れ、自分に当てはめて考えているうちに、「これは当てはまるな」「これは真逆の考え方だな」と方向性が見えてくるでしょう。
まとめ
文理選択は、将来を左右する大事なターニングポイントです。今の勉強内容や受験科目のことはもちろん、進学先や就職のことまで考え、自分が楽しく勉強できそうな道を選びましょう。「この科目を勉強してきてよかった!」と思えるよう、予習・復習を欠かさず行い、少しずつ成功体験を詰んでいくことも大切です。